33年net諸兄姉どの
2022.03.10「ウクライナに関して」、2022.03.23「再びホロモドール(Holodomor Ukraine genocide)をレポートさせて頂きましたが、やっと2時間の「赤い闇ースターリンの冷たい大地で」(原題はMr.Jones、監督アグニェシュカ・ホランド(ポーランド)主演ジェームズ・ノートン」)を見終わりました。以下要旨です。
★イギリス人ジャーナリストのガレス・ジョーンズ(13 August 1905 – 12 August 1935)は、ストラスブール大学やケンブリッジ大学のトリニティ・カレッジでも学業に励み、フランス語だけではなくドイツ語やロシア語でも優れた成績を残した。大学卒業後、ケンブリッジ大学で短期間教壇に立った後、イギリスの首相デビッド・ロイド・ジョージの外交顧問の地位を得て、政治の世界とのつながりを持った。ウエスタンメールの記者となったガレスは1933年2月(28歳)、アドルフ・ヒトラーへの取材記事を書いた初めての外国人記者として一躍その名を知られることになった。しかし、世界恐慌の中でソビエト連邦だけが繁栄していることに疑問を持ち、スターリンに単独面会を求めて、モスクワにニューヨーク・タイムズのモスクワ支局長、1932年、ソビエト連邦に関する一連の報告でピューリッツァー賞を受賞しデュランティを訪ねる。しかし面会は無理とことわられ、当局の監視付きで東部に旅に出て、監視人の眼をかいくぐって、ウクライナに潜入、ウクライナで想像を絶する光景を目の当たりにする。
★ロイド・ジョージは、ヒトラーの侵攻を目の前に、英国の経済は最悪の状態にあり、スターリンを味方に巻き込まなければ勝ち目はない。スターリンの闇を暴いてどうするのだと反対している。
★ウクライナでは、小麦はみなモスクワに送られる。道路に餓死者が転がり、ある一軒の家で、肉をごちそうになったが、これは何の肉だと問うと「兄さん」との返事、死体からの肉、人肉であった。家を出、兄の死体を見たガレスは謳吐を繰り返した。(websiteの映像を添付しておきます)
★結局、彼は逮捕された。ロイド・ジョージの外交顧問と云うこと釈放されたが、同時に英国から出向していたメトロ・ヴィッカース社の社員6人が逮捕され、ガレスが何も見なかったと証言すれば、釈放する。喋れば6人の命はないと選択を迫られる。(KGBの汚いやり方ですね)
★同年3月29日ベルリンへと戻ったガレスは、プレスリリースを行い、ウクライナで目にした惨状がニューヨーク・ポストやマンチェスター・ガーディアンなど多くの新聞に掲載された。彼は云う、6人の命と、数百万の命とどちらが大切なのか?
結局、6人は釈放される。
★しかし、ニューヨークタイムズのモスクワ支局長を務め、1932年、ソビエト連邦に関する一連の報告でピューリッツァー賞を受賞しデュランティはソ連の広範囲にわたる飢餓を、特にウクライナの餓死(Holodomor)を否定した。
★ガレス・ジョーンズは、嘘つきだといわれ、失意のうちに生家ウエルズに帰った。たま、たまウエスタンメールのオーナーであった新聞王ライン・ハーストがウエルズのセント・ドーナッツ城を購入、夏季を過ごすと聞いて裏口から忍び込み、ラインハーストに直訴する。ライン・ハーストはピューリッツァー受賞者、デュランティに勝てるかねと云った。無論勝てるとうなずいた。ライン・ハースト系の新聞にガレスの記事を載せた。(しかし、ソ連国内ではゴルバチョフのペレストロイカまで隠蔽された。)
★その後、ガレス・ジョーンズは1935年、満州国を取材中、盗賊に誘拐される。彼のガイドがソ連の秘密警察と通じており、30歳を迎える前日に射殺されてしまうで終わる。
★一方、1932年11月フランクリン・D・ルーズベルトは大統領選挙戦に勝利すると、大統領に就任する以前に早くもソ連リトビノフ外務人民委員(外相)を招き、関係打開の交渉を開始した。こうして1933年11月、ルーズベルト政権は、(1)アメリカ国内でコミンテルン活動を行わないこと、(2)旧債務を履行すること、などをソ連側に承認させたうえで国交関係樹立に踏み切った。これはデュランティがルーズベルトを口説いたからと云われる。この結果、武器貸与法(レンドリース法)が1939年9月の第二次世界大戦勃発から18ヵ月経過した1941年3月から開始された。当時のソ連へ貸与された兵器の一覧表を添付しておきます。(この法律はバイデンにより再生され、運用開始中である。)
★なお、批判的思考の再生を求めてー日仏左翼知識人のの30年岩波「世界」1999.2号、スターリン主義の批判者佐々木力(東大名誉教授、故人。女優萬田久子の夫)によれば「日本ほど戦前、戦後を通じて、スターリン主義的政治的イデオロギーが根を下ろした国はソ連邦を除いてない」(p211)と書いている。
左翼陣営の衰退は当然なのだろうか。
イチハタ