Q森正之:子どもの読書週間2024.4.21  Home

AI時代こそ“読む力”高めよう[対談]

23日から「子どもの読書週間」

国立情報学研究所社会共有知研究センター長新井紀子教授

公明党教育改革推進本部長浮島智子衆院議員

公明新聞 日曜版 2024.4.21(日)

 

あさって23日は「子供読書の日」。公明党の推進で2001年に制定された「子どもの読書活動推進法」がその淵源です。同日から5月12日までは「子どもの読書週間」です。そこで本好きで知られる新井紀子・国立情報学研究所教授(社会共有知研究センター長)と公明党の浮島智子衆院議員(教育改革推進本部長)に本の思い出やAI(人工知能)時代の教育論について語り合ってもらいました。

浮島 新井さんが子供の時の思い出に残っている本は何ですか?

新井 『しんせつなともだち』という絵本です。とても雪深い日、うさぎがカブを見つけて、ろばも食べ物がなくて困っているだろうと持って行く。するとろばも他の困っていそうな動物のところに持って行き、その動物も他の動物のところへ……最後はうさぎのところにカブが戻ってくるというお話です。

浮島 優しさがリレーのようにつながって、すてきですね。わたくしは『ちいさいおうち』という絵本です。母が寝る前によく読んでくれました。

新井 私も知っています。最初は丘の上にあったお家の周りに、どんどんビルが建って道路が通って、廃棄ガスまみれになっていくお話。

浮島 お家がとっても、かわいそうな状況になるんですが、最後は自然豊かな土地に引っ越して、「ああ、良かった」と安心して寝る(笑)。絵本の読み聞かせを通して、豊かな心を育んでもらったんだなと思います。

新井 愛着のある人から読んでもらった内容は残りますね。私も読み聞かせがないと寝られない子だったのですが、おかげで本が大好きになって小学校の図書館にあった本を全部読みました。

浮島 全部とは、すごい

新井 大人になった今では、混沌としていたものが氷解するような明晰な文章との出会いが読書の醍醐味です。「まだまだ世界は面白い、読み解いていきたい」と感じる瞬間が一番楽しいんです。

浮島 そうした読書の魅力を子どもたちにも伝えていきたいですね。 ところで昨今チャットGPTなどの生成AIが話題になっています。

新井 チャットGPTはもっともらしい違和感のない文章を書きますが、間違っていることも平気で書くので注意が必要です。専門性のある人が効率を上げるために使うことは良くても、間違いを見抜けない人が無自覚に使うと社会が混乱すると思います。

浮島 学校では、将来はAIで仕事がなくなると教える先生もいるそうですが。

新井 確かに資料を箱から探してきたり、ファイルに閉じたりして居た作業の必要がなくなり、5人がかりでやっていた仕事が1人で済むようになる可能性はあります。そのとき残りの4人が情報を生産する側に回れたらいいのですが、そのためには情報を正しく読んで書く力が必要です。わたくしは「読解力」こそが、新しい社会に参画して行く労働者にとって必須の能力になっていくと思います。

浮島 私はAI時代を生きる、これからの子どもたちこそ、リアルな体験学習の重要性が増すと考えています。今公明党が小中学校の公教育で実現を目指しているのが、例えば「半日学校制度」のようなものです。午前はびっしり基礎を学ぶ。だけど午後は、その子の関心のある分野で探究的な学びをする。読書が好きな子は読書をすればいい。科学や芸術、スポーツでもいい。一人一人の可能性を開く教育をしたいんです。

新井 そうした自律的学習の基礎になるのが読解力です。しかし、私が読解力を測定するために開発した「リーディングスキルテスト」では、子供たちの多くが教科書を正しく読めていないことが分かっています。

浮島 読解力を高める方法はあるのでしょうか?

新井 実は誰もが持っている学校の教科書が最高のテキストなんです。

 福島県相馬市では21年度から全小中学校で読解力向上に向けた取り組みを進めています。例えば、教科書を毎日1分間、視写する。国語だけでなく、算数や理科、社会など全科目の教科書です。その結果小学校では、たった3年間で全国学力テストの成績が上がったんです。

 算数の問題も、分からないと言っていたこの半数は、みんなで問題文を音読するだけで解けるようになるんです。

浮島 それはすごい。

新井 ところが今、1人1台のタブレット端末が配布されて、先生たちは授業で教科書を開かなくなってきています。板書もしない。子どもたちはノートを取らず、プリントの穴埋めで済ませています。目先の、そして見かけの効率ばかりを優先し、かえってAIに代替されるような能力ばかりを伸ばしているように見えます。

浮島 最近の若い人はタイパ(タイムパフォーマンス)を重視して、映画やドラマを早送りしながら観るそうですが、実際に手を動かして書いたり、声に出して読むという身体性も重要ですね。

新井 サラサラ読むような読書を重ねても身になりません。“量”ではなく“深さ”です。子どもたちには、頭に汗をかくような読書で読解力を身につけてもらいたい。ぜひ公明党にはそうした本質的な教育政策を進めて欲しいと期待しています。

浮島 まさに人間形成の教育の実現こそ、公明党にとって一丁目一番地のテーマです。子供たちの未来のために、しっかり汗をかいて働いてまいります。

 

あらいのりこ 一般社団法人「教育のための科学研究所」代表理事・所長 一橋大学法学部及び米イリノイ大学数学科卒。東京工業大学より博士(理学)取得。専門は数理論理学。2011年よりAIプロジェクト「ロボットは東大に入れるか」を主導。「AIに負けない子供を育てる」(東洋経済新報社)など著書多数。


 

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読む“量”ではなく“深さ” 新井

人間形成の教育 進めたい 浮島


新井紀子

1994年一橋大学法学部卒業