Q森正之:絵巻万葉ものがたり 阿見みどり2024.1.7 Home
00025(2024.2.2 08:57)
〈著者に聞く〉画家・阿見みどりさん 2023年3月29日
バイリンガル絵本「絵巻 万葉ものがたり」が好評
上品な装丁で、製本も堅固な美しい絵本。どこからどう読んでもいい。飽かず眺めていられる。
そこに広がるのは、優美な水彩画と書が織りなす、万葉集の秀歌と情景の世界――「本というよりトランプみたいに〈あそぶ〉ものとして手に取っていただければ。つらつらとめくっていれば、自分の心の万華鏡みたいに思えてくるかもしれません」
◆人類の宝の秀歌と情景に〈あそぶ〉
鎌倉市在住の画家で編集者、出版社「銀の鈴社」創業者の阿見みどりさんが昨秋、同社から発刊したバイリンガル絵本『絵巻 万葉ものがたり』が好評だ。
これは、四つの主題に沿って万葉集4516首から100首を選歌し、阿見さんが10年がかりで描き上げた計8軸の絵巻物4巻を一冊の絵本にしたもの。画家ならではの視点と構成力が光る〈英訳付き万葉アンソロジー〉だ。
画、文、書、意訳と、全て阿見さんの手になる。
「85歳の私にとっては人生の集大成。自分なんかがと畏れ多い気持ちも抱きつつ、出版文化が豊かになるきっかけにもなればと思って上梓しました」
◆描写に注力した個性的な英訳
万葉集は、日本の宝のみならず人類の宝だという考えから、世界中の人に触れてほしいと、本書の英訳を米国在住のラトリッジ夫妻(ブルース氏と夕子氏)に依頼。
万葉仮名の原文や訓み下し文と一緒に掲載しているラトリッジ訳の万葉歌は、他の英訳と比べて個性的で、特に情景描写に注力している印象が強い。
「それは私の責任でしょう。英訳は私の意訳、つまり訓み下し文の現代語訳が基です。これはどれが主語かと質問されても、“主語は限定したくない、場面は場面としてあるのだから”と答えていました。英語は当然、主語と述語が重要なのに。ラトリッジご夫婦には本当にご苦労をおかけしました」
◆画家の眼の鋭さとみずみずしさ
銀の鈴社・3080円
こうした阿見さんの万葉集解釈、一首が描き出すものを一人称による認識世界ではなく環境や事物も含めた一情景として見るのは、透徹した観察眼の画家らしい掌握だろう。その独自の〈読み方〉は、時にアカデミズムの通説とは異なる。
だが、監修を務めた万葉学者・村瀬憲夫氏(近畿大学名誉教授)は、そのみずみずしい感性を損なわないよう努めた。
「村瀬先生、事細かく見てくださったけれど、ダメ出しはなかったの。面白いから、こんな見方もあるんだって世に問うてみましょう、と。うれしかった」
◆万葉集の裾野の広さに触れる
例えば、村瀬氏が「監修のことば」で挙げているのは、持統天皇の「春過ぎて夏来るらし白栲の衣乾したり天の香具山」の一首。阿見さんは「白栲の衣」を香具山にかかる霞と捉え、本書の絵で表現。
また、大伴家持の「物部の八十少女らが汲みまがふ寺井の上の堅香子の花」の一首は、一帯に咲くカタクリの花の姿と入り乱れて水を汲む少女たちを家持が同一視していると阿見さんは見る。
「学識者の本ではありませんから、どうぞ、遊び心を楽しんでください。絵を見るだけ、英語の勉強だけでもいいのです。歴史の好きな方、文学好きの方、草花が好きな方にも喜んでいただけると思います。万葉集は、庶民の生活感が詰まっていて、誰にでも寄り添ってくれる歌集です。裾野の広い、大きな存在。種田山頭火が詠んだ『分け入つても分け入つても青い山』みたいですよね」
***森メモ********************************************
https://www.ginsuzu.com/company/
㈱銀の鈴社 神奈川県鎌倉市佐助1-18-21 万葉野の花庵
0467-61-1930 休日 水 土 日
聖教新聞デジタル 2023.3.29水
本インタビューは2023.3.29付 聖教新聞に掲載されました。
阿見みどりさん(本名:柴崎俊子さん)は一橋33Q[故]山口正之君の実妹です。
山口君は、2017年9月24日 夜10時33分に逝去されました。謹んで哀悼の祈りを捧げます。
https://www.ginsuzu.com/amimidori/
Emaki Manyo Monogatari with English translations (バイリンガル絵本[すずのねえほん]) ハードカバー
㈱銀の鈴社より2024年賀状を頂きました。森