33年ネット諸兄姉どの(2025.03.12)
2025.3.7のTBS報道1930「敗北するアメリカ(3っの要素)」(復元力はあるのか?)(キャスター編集長松原耕二、サブキャスター出水麻衣)の要旨である。33万回も視聴されている。
★すでに2025.03.02、エマニュエル・ドットの著書「西洋の敗北」としてレポートしてある。
三つの要素
①生産力:兵器が作れない…アメリカ武器産業の盲点
②社会の安全:アメリカの乳幼児死亡率はロシアより高いのはなぜ
③宗教:隣人愛はどこへ?変質する米国の“キリスト教”
これに加え復元力があるのかという問いに議論している。
なお、触れなかったが、まだ英訳されていないようだ。
★生産力に関する討論
イエール大学講師マイケル・ブレナンという軍事の専門家にかたらせる;冷戦終結後、米国の主要兵器産業は、F35戦闘機など高額な兵器(およそ1億5000万ドル)に集中し、弾丸製造は削減、ウクライナ戦争開始時にはペンシルベニア州の一社しか製造していなかった。1950年代、軍需産業の従事者は約350万人、現在は約110万人(三分の一)になって、ジャベリン(FGM-148 Javelin 対戦車ミサイル)などは、少なくとも準学士号(2年制の大学)の教育が必要である。社会全体の非製造業への流出が続いている。
(しかし、1986年(昭和61年)のアメリカ映画トム・クルーズ主演「トップ・ガン」、F14の時代で戦闘機乗りは憧れの的だった。エマニュエル・トッドによれば、(かって戦艦もそうであったように)航空母艦も高速ミサイルの発展で無力化しつつあるという。戦いは高速ミサイルやドローンの時代に変わりつつあるようだ)
ゲスト、杉山晋輔(1953年生、早稲田大卒、外務次官、元駐米特命全権大使);ある意味で当たっている。トランプは製造業をまもれと言っている。正しいのではないか。ヨーロッパ・日本でも
ゲスト、森本あんり(1956年生、国際キリスト教大学人文科学科卒、1991年アメリカ合衆国プリンストン神学大学院博士課程修了(組織神学)、国際キリスト教大学教授、東京女子大学学長、)
アメリカに限らず、両者、賃金の高い方に移動すると同意見
ゲスト、パトリック・ハーラン (米コロラド州出身、ハーバード大比較宗教学部卒、東京科学大非常勤講師); 平和になれば軍需産業が衰退するのは当たり前だ 平和の分け前(peace evidence)である。アメリカに不足しているのは統率力、強いリーダーだ、トッドはこれを指摘していない。トランプは分断のリーダーだ。トランプは国内産業の再建をいうが、エンジニアリングの数を増やそうとしているかとは見ない。むしろチップ法の廃止ないっている。「チップ法;米国における半導体の国内生産を支援する「the CHIPS and Science Act」(通称・CHIPS法)を、米連邦議会が2022年7月28日(米国時間)に可決した。この法に基づく予算は合計2,800億ドル(約37兆1,100億円)で、そのうち520億ドル(約6兆9,000億円)が米国内で半導体を生産する企業への財政支援に用いられる。米国の経済と戦略的目標にとってますます重要になってきた半導体分野において米国が再びトップの座を得るために、民主党と共和党の双方の議員たちが同法を支持したかたちだ」(ついでに補足すると現在のアメリカの半導体シェアは10%である)。西側各国の経済力はロシアの30倍、これを合わせればロシアを圧倒できる。
しかし、生産力に関して、トッドがいう「この現象の根源について「アメリカは世界の通貨としてのドルを生み出している、無から金銭的富をドルの能力こそがアメリカを麻痺させている」「ドルと云う不治の病に」罹っているという(p304)」という、ことに関してふれていない。さらに、日本もその病にかかりつつあることにも言及していない-むしろこの病にかかっていないロシアの方が経済社会としては健全なのかもしれない。
★社会の安全に関する討論
乳幼児死亡率(1000人当たり)は、1960年アメリカ26.4人→2023年5.3人、1960年ロシア36.4人→2023年3.5人、2023年日本1.5人
森本あんり;トッドはロシアはプーチン政権下で平均寿命が6年延びたと云っている。しかし、社会は犯罪率、肥満率、麻薬使用率なども見なければならない。アメリカが
金儲けに専心しているのは事実だろうが。
パトリック・ハーランは、この二つ数字だけで、アメリカの敗北とみるわけにはいかない。人口は増えている、もちろん移民であるけれどと反対する。
★変質する米国の“キリスト教”に関しは
オクラホマ大学院社会学 サミュエル・ペリー教授(保守キリスト教とアメリかの政治を研究する第一人者という)
の意見を引き合いにだす。
〖多くのリベラルなアメリカ人は、もしキリスト教徒であることが保守主義や共和党支持と同義なのであれば私はキリスト教とは、関わりたくない」と考え、宗教を離れています。レーガン以降保守的なプロテステスタントが抬頭したことによりキリスト教=共和党十みなされ、宗教を離れる人がふえた。これは、非常に興味深い現象です。
民族的なキリスト教「真のアメリカ人は白人であり、この国は白人によって築かれたものだ。」それ以外の人は、ただ、運が良くてここにいるだけである。許可なければ存在できないのだという意識があるのです。彼らは、自分たちが数の上で少数派になりつつあることを意識しており、「我々の側に立ち敵と妥協しない強いリーダーがひつようだ」と考えており、そして現時点ではドナルド・トランプです。
(解説挿入;民主党は、これに反発して多様性、公平性(平等性)、包括性(diversity, equity, and inclusion、略してDEIという)を進めたが、それが宗教の空洞化をもたらした)
白人のキリスト教徒は、ますます共和党に同調し「自分たちの居場所はここにしかない」、つまり”神学的に保守的なクリスチャン、すなわち、イエスを信じ、聖書を読む人々に、もはや、民主党に
自分の居場所に見いだせなくなり、共和党の一員としてアイデンティティを確立する傾向が強まっているでしょう。
そのようなクリスチャンは自らの価値観を大きく変えなければならなくなるのです。
「例えば、イエスの教えでは「隣人を愛すること」「異なる民族の人々に助けること”が重要とされています。
善きサマリア人は助けを求めている人に寛容であり、見返りを求めずに援助をしました。彼は助けた相手に「彼に返済すること約束しろ」と云わなかったのです。
社会学者として私は興味深いとと思うのは、人々が「自分の経済的利益を犠牲にしても、敵対する人々に攻撃することを優先するという現象」です。
例えば、保守派の人々に「関税政策は、あなたの経済に悪い影響を与える」
「多くの連邦政府職員が解雇されるか知れない」
実際にトランプを支持した人々の中に影響を受ける人々は少なくありません。それでも彼等は「トランプは我々の為に戦ってくれている」と、こう答える。
「彼は、謝罪しない、彼は強いリーダーだ」
つまり、彼等にとって重要なのは「トランプが敵を攻撃すること」なのです。〗
森本あんりは、伝統的なプロテスタントの生き方は「まじめに働き、稼いだ金は遊びに使わず貯蓄というもの「できるだけ稼ぎ、出来るだけ貯め、出来るだけ与える」という労働倫理が崩れてきている。
資本の蓄積がなくなって来ている。トッドは、文化的なキリスト教信仰というものが、属性的としての性格に変わってきた。かってアイルランドでは、政治闘争が激しかったころ、検問所で
カトリックかプロテスタントと問われると、無神論だと返事をすると、カトリックの無神論者かプロテスタントの無神論者かと問われたたという。
政治的にキリスト教ナショナリズム化している。キリスト教福音派は全人口の23% その六割から七割がナショナリズム化している。
〖ペリー教授は、本来宗教は人々の政治観に影響を与えるものだが今は逆に政治的立場が宗教観を決定している
福音派だけでなく
他のキリスト教徒も価値観を大きく変え自らを守るものこそ正しいとなっている
自分の経済的利益を犠牲にしてでも敵対するものを攻擊することを優先し
重要なのは、トランプは敵を攻撃してくれる強いリーダーであること〗
森本あんり;ペリーの言葉は、メソジストの創始者ジョン・ウエスレーの(18世紀、キリスト教の宗教的覚醒運動の中核をなす)言葉である。
アングロサクソンのプロテスタントは過激になりやすい、それは神と直接つながっているからだ。カソリックではありえない。それはおかしいと天主を頂点としたローマ教会のチェックが入るからだ。
杉山;トランプの議会演説を七割位の人が良かったと云っている。あれほど議会が割れているのに。
ある人が、ヴァンス副大統領をattack dogと云っている。トランプ大統領のために敵をやっつける。トランプ本人もそうなのかもしれない。
中間選挙をこえ、次の大統領選挙を超えても強いかもしれない。
杉山;トランプ大統領の就任式で、閣僚の前にお金持ちがずらっと並んでいた。今までになかったこと。共和党のリーダー達に聞くと、あれは非常に居心地が悪いと云っていた。
だけど支持されていることは現実だ。
ハーラン;お金持ちになるのも神様の思し召し、選ばれた人がなるのは当たり前、ならなければ本人の努力が足りないのか、神様に選ばれていないのだ。弱者を救済しなければならない
本来の目的から乖離している。
森本あんり;それは神学的批判が必要である。歴史をアメリカだけを見るのでなく、ヨーロッパ、アジアから見て批判する力がなければ解けない。
★アメリカに復元力はあるのか?
森本あんりは「民主主義を担うのは市民ボリュームゾーンのところに常識が通じる中間層がいないと民主主議は機能しない」
アメリカの中間層の推移をpdf2で添付する。
森本あんりは;復元力についてwhetherとclimateの違い、長い時間がかかるだろう。物理的な問題(白人のマイノリティー化)は別として①皆が納得することが大事。 ②もう一つは、もともとアメリカは反逆の国なのだ。反逆者の登場が期待される。
杉山;中間層はどこにいったのか? 来年250周年を迎える。若い国でまだ開発の余地はある。人口も増えている。このまま終わるとは思えない。
ハーラン;1993年、日本は米国より賃金が50%高かった、日本は失われた30年と云っているが、アメリカは失われていない。今は逆で40%アメリカが高い。犯罪率も減少している。低所得層も40%、賃金があがっている。しかし、アメリカ国内では、そう思っていない。
我々は不幸だねと言い合う世の中になって、我々は、あいつ等の所為でダメになっているなどの怒りやあおり合う文化になっている。これが復元力を失わせる原因だと思う。
バイデンがコロナ禍から復活したにもかかわらず、全部ダメだというレトリックを使っている。
杉山;共和党の人達も、民主党の人達も、トランプ的なものが長く続くと思った方がイイと云われている。わたしは、こんなものが長く続かないでしょうと云いたいがトランプの後はトランプだという。
最大の問題は2042,2046年か白人が半分を割り、マイノリティーになる。本来はそれでも人権を守るという理念が主張されなければいけないのに、明らかに多様性、公平性(平等性)、包括性(DEI)のやりすぎた。
ハーラン;民主党はDEIを政策の中心においていない、カマラ・ハリスがDEIについて一回、数分間話した。これが共和党に利用された、うまくレッテル・バリに落とし、反撃ができなかった。
イチハタ