33年net諸兄姉(2022.01.16)
NHK2022.01.01.放送の掲題「欲望の資本主義2022」、2時間の長編ですので、その概要をお送りします。
最終章でダイヤン・コイル(英国の経済学者)は、経済学者や経済学を専攻する学生、政治家は、その答えを出す必要があろうと云う。
★欲望の資本主義 2022.01.01放送の要旨である。
第一章 K字の果ての歪んだい市場
・ルチル・シャルマ(元投資銀行、グローバル・ストラジスト)は云う、景気刺激策は、生産性の低いゾンビ企業を生きながらえさせただけだと。(同感である。日本はカネを使っているが成長しない、なぜか?)
・マシュー・クレイトン(経済ジャーなリスト)は、バイデン大統領の中国に対する不公正な、法順守しないの経済批判に対して間違っているという。中国が労働組合を違法としていることで中国労働者賃金水準低水準のために、中国でもK字型であり、米国でもK字型になったと批判する。中国は富裕層のための社会主義、偽りのケインズ主義だという。(市畑追記;イエレンは2021.1.19日財務長官就任時のspeechでL字型成長には絶対しないと云っている)
(注;「マシュー・C・クレイン(Matthew C. Klein)アメリカの週刊投資金融専門紙「バロンズ」の経済論説担当。「ニューヨーク・タイムズ」「ナショナル・インタレスト」などにも寄稿。イェール大学(歴史学専攻)卒業後、外交問題評議会での勤務をへてジャーナリズムの世界に入り、「フィナンシャル・タ
イムズ」アルファビル・ブログの経済・金融担当などをへて現職」)
第二章 コロナが生んだZ世代の投資家
Z世代とは、すでにインターネットが普及していた時代に生まれた、デジタルネイティブと呼ばれる世代を指す。この世代の投資行動が注目される。
第三章「最後のデーラーの」賭け
・ペリー・メーリング(経済学者・ボストン大学)は云う;コロナで各国に起きている資産バブルの崩壊がいつかは起きる。FBIはそれを心配している。
第四章 反復する半世紀前の記憶
・ペトリ・フリードマン(ベンチャーキャピタルフアンド、ミルトンフリードマンの孫、都市計画)は、スチーブジョブス・モデルーiPhoneモデルを目指す。
チャターシテ―(経済特区の進化系)を,開発に適した法律が必要、税を免除し、世界のどこからでも参加できる。ロンドンをモデルとして、ベンチャーの創造を高める法体系をつくっている。都市をOSそのもの製品として、それはLinuxそのものです。高い生産性の高い経済を実現するためには政府にハンドルを握らせないようにするのです。日本のOSは、WindowsのOS、iPhoneのOSだけで、いまいちです。最初にホンジュラスにZ区タウンとして計画している。
(市畑注;LinuxはWindowsのOS、iPhoneのiOSとは別のOSで、しかも無料、だれでも使える。古いパソコンに搭載しても使える。家電製品、自動車部品などはこのLinuxを使っている。iPhone以外のスマホOS(Android)に使われている。)
1973年オイルショックで景気は低迷、物価上昇の反動で、ローマクラブが登場、米国ではバーニー・サンダースが登場する。
・ケイト・ラワーズ(経済学者、オックスフォード大学環境変動研究所員)は社会システムの更新は右肩上がりからドーナッツ型経済へ転換を、地球の許容範囲で生活をすることに変える。彼女の習ってきた「合理的経済人」は非常に視野の狭い人間像であった。「合理的経済人」を描くとしたら何も頼らず一人で立って手におカネ、心はエゴ、頭の中は電卓のあるのみ、足で草を踏みつけている人間である。
オランダのアムステルダムにある古ジーンズのリサイクル会社がある。そこのバートン・フアン・ソン、マット・ジーンズのCEO/社会事業家は、綿花がリサイクルされれば、綿花をつくる人は失業する。彼は云う;大豆を植えればいいではないか。それが世界のためになる。循環社会でも繁栄はある。
第五章 気候変動は資本主義のわざ?
本章ではマルクス・ガブリエル(Markus Gabriel, 1980年4月6日 - は、ドイツの哲学者。ボン大学教授。専門書だけでなく、哲学に関する一般書も執筆している)の通訳・司会をし、マルクスによる資本主義の改革を目指す斎藤弘平(大阪大学院教授、「人新世の「資本論」は一昨年9月に発売され32万部のベストセラーになった」と資本主義による改革を目指すトーマス・セドラチェク(Tomas Sedlacek)「 1977年生まれ。チェコ共和国の経済学者。同国が運営する最大の商業銀行の一つであるCSOBで、マクロ経済担当のチーフストラテジ、「善と悪の経済学」の著者」と の論争である。このオンラインで英
語で行われた論争は実に面白かった。(議論は第6-7章である)
第六章 公共善のバランス
論争は続く、セドラチェックは、確かに究極の原因は、普通に考えれば資本主義です、が資本主義はその改善ができるものです。中国は公害を減らす覚悟はできていません。斎藤は、市場での無秩序で競争は際限のない資本の増殖の追究では「生態学上の危機」を防ぐことはできません。セドラチェクは最近「資本主義は共産主義ほど環境を破壊しないという論文をかいた。共産主義は圧政と抑圧の空気を護ることができかった。セドラチェクは、1989.11プラハで起きたことを記憶されているでしょう、その2年前に北部の町で政権に対する抗議運動がありました。息が吸えなかったからです。彼らは共産主義体制を批判し始めました。「わたくしたちを守ってく
れない、窒息しそうだ」、その後これがプラハに波及、知識人による反乱となったのです。当時の共産主義体制は批判することが禁じられていたのです。これが資本主義体
制と共産主義体制の違いです。
第七章 競争×福祉=生産性?
諸富徹(経済学、京大大学院教授、著書「新しい資本主義」ほか)は、企業の新陳代謝→労働力の流動性?を指摘する。日本は20世紀型のものづくりで大成功をおさめて、21世紀に来てしまった。逆にそれが問題化して、新しい技術に労働者や資源が向かわない。今回のコロナ助成金でも、個人に支払われるのでなくて、企業に支払われる。本来潰れてよい企業も何とか生きのびる。
スエーデン、ストックホルムでは、30年活動した石炭火力発電所を3年かけてCO2を克服するバイオマスプラントに作り替えた。巨額の費用がかかったが、政府からの助成金はなかった。これで新しい技術が生まれ、新しい技術の労働者が雇用された。資本や労働の移動が生じたのである。
・アンダース・ボルグ(アンダース・エリック・ボルグ(Anders Erik Borg、1968年1月11日 - )は、スウェーデンの経済学者および政治家であり、2006年から2014年までスウェーデン政府の財務相を務めた。大手資産運用のアドバイザー、リーマンショック後の経済成長と雇用の増大を実現した)は、レーン=メドナー・モデル(同一労働・同一賃金)どういつ労働の基本的特徴が残っているでしょう。1950年代から同じ業種の企業は同じ賃金を支払わねばならぬという。それによって生産性の競争が起き、生産性の低い企業は退出していく、労働者は生産性の高い企業に移っていく。
現在同国のソフトウエア開発の会社の人々は1年から1年半で転職している。この国は企業を守ろうというのでなく人々を護ることに専念している。資本主義でもなく社会主義でもありません。市場経済と社会福祉を組み合わせた社会的な市場経済です。
第八章 コモンズ(公共財)の復活か?
斎藤はいう;資本主義はコモンズ(共有財)を減少させている。生活にとって最も必要な土地、水、森林等は誰でも利用できた。教育、医療、交通機関などの無償化を実現できると思う。
(注;社会的共通資本(コモンズ)に関しては、宇沢弘文・茂木愛一郎編「社会的共通資本―コモンズと都市」1994年初版、東京大学出版会、宇沢弘文「経済学の考え方」(1989年岩波新書)、家木成夫「環境と都市の公共性」1997年っと都市文化社選書などによって論じられている)
セドラチェクは云う;幸平、机上で計画された共産主義政策で成功した例はない。共産主義が機能した例はない。キューバが成功例と云えるかも、しかし食料不足です。公平は、分かっています。しかし資本主義はコモンの潤沢さを消失させました。われわれはその逆転させるべきです。この点は賛成されますか?
セドラチェックは、noと答える。古くからの例で、2000年前アリストテレスに由来するがアリストテレスの人間観察に基づいて書いた「コモンズの悲劇」がある。この喩はご存じですね。共有財産だった放牧地に、みんなが放牧をしたら、どんどん増やし、ついには草がなくなった。共産主義者は我々の土地から奪うだけだったのだ。ソ連はすべてを奪い取っていった。共産主義は大失敗です。資本主義を変えていく方がいい。
・シュンペータは、「創造的破壊、資本主義は経済的な失敗により崩壊するするのではない。その成功ゆえに土台である社会構造を揺さぶり、自らを存在不能にする。独占、寡占、官僚化と変化、人々の意識も変化する。物事や人々の心は基本的に、自動的に社会主義に向かっていく。共産主義的用語で云えばペロストロイカです。権力の中枢やその周辺の人々は短期的視点をとらざるを得ない。長期的な目標のために一貫して国益に尽くすことは至難の業となる。ゆえに民主主義の首相は手綱を握るだけで精一杯で行先を決められない騎手のようだ。自分の部隊を命令通り動かすことだけに気をとられ、戦略的には場当たり的将軍とにもたとえられるかもしれない」という。
セドラチェクは共産主義と社会主義の違いを説明する。
共産主義は、個人の収入の95%の使い方を指示し、個人が使えるのはたった5%に過ぎない。それに比べヨーロッパや日本では40:60、40%は政府が配分するが、40%は個人が自由に使い方を決める。わたしは50%以上の課税はよくないとおもう、これが社会主義である。
幸平;わたくしも賛成です。但し私が言いたいのは、共有財産を政府の役人が管理させる必要はない。民間が管理すべきだという。
第九章 市場の民主主義の再生?
・ヤユス・バルファキス(ギリシャ、国会議員、経済学者、元財務大臣、バーニー・サンダース等と共に世界政治運動をやっている)
私達は皆デストピアに生きるプロレタリアート、いわば情報農奴として領主に仕えることになるだろう。2021年彼はfacebookを「メタバース」へ一新する野心的計画を発表した。そこには数百万人もの自分のアバターを置き換えて互いに出会う。
(市畑注;英的名称に於けるメタバース(metaverse)とは、英語の「超(meta)」と「巨大な空間(universe)」を組み合わせた造語で、もともとはSF作家のニール・スティーヴンスンが1992年に発表したサイバーパンク小説『スノウ・クラッシュ』に登場する架空の仮想空間サービスの名称だったが、そ
の後、テクノロジーの進化によって実際にさまざまな仮想空間サービスが登場すると、それらの総称や仮想空間自体の名称として主に英語圏で用いられるようになったという。webよりの引用)
ゲームだけでなく様々の取引をして経済を形成する。人類の大きな一部がデジタル・コモンズが形成される。facebookはすでに参加者が20億人になっている。但し、facebookはザッカーバーグの所有を抑える必要がある。これを参加者皆に一株一票として分割・配分する。所有を分割し民主化する。アダム・スミスはアダム・スミスは市場が持つ自由の力と効率の高さを激賞した。同時にスミスは株式を公開した会社、即ち匿名の株主が会社を所有する事には猛反対した。資本主義の守護聖人と名高い人物が現代の資本主義に真っ向から反対した事実は興味深いだろう。反対した理由は、株式は匿名で取引されるのは流動的な通貨となり、いずれ集中が進んでしまう。いま、NY市場の株は90%が3社で保有されている。ブラックロック、ステート・ストリー。バンガードの3社である。いまや独占資本主義だ。金融市場と労働市場を資本主義から除いたら、アダムスミスの思いの生活のためのマーケット、共同体市場が残る。
(注;ブラックロック(BlackRock Inc.、NYSE: BLK)は、アメリカ合衆国ニューヨーク州ニューヨーク市に本社を置く、世界最大の資産運用会社である。会社の運用資産額 (AUM) は2019年末に7.4兆ドルを超えた)
(注;ステート・ストリート(英語: State Street Corporation)は大手機関投資家向けグローバルカストディ(AUCA約4,400兆円) および資産運用機関 (AUM約400兆円) としては世界最大級の米系金融機関で、現存する銀行としては米国国内で2番目に古い歴史を持つ金融機関。名称は本社のあるボストンの国際金融市場であった中心街に由来する。大手機関投資家および各国政府との取引が主で、グループとして個人向け業務は展開していない。)
(注;ザ・バンガード・グループ・インク(以下:バンガードVanguard)とは、アメリカ合衆国ペンシルベニア州に本社がある世界最大規模の資産運用会社であり、世界初のインデックス型投資信託(インデックスファンド)を個人投資家に提供した会社として知られている。2019年5月末時点の運用総資産額は5.4兆米ドル(約600兆円)だった。ブラックロックに次ぐ、世界2位の投資信託および上場投資信託(ETF)の提供者である。投資信託とETF以外にも証券サービス、ファイナンシャル・アドバイス・サービス、教育資金サービス、など数々のサービスを提供している。)
最終章 成長と分配の狭間で
幸平はいう;を提唱するのは「脱成長」という言葉を聞くと恐れおののくからです。自分たちが貧しくなると思うのです。
セドラチェクは共産主義という言葉も同様です。あなたは最悪の言葉を二つ使いましたね。
幸平;意図的に組み合わせたものです。労働時間のtン祝賀資本家階級によって生み出され、ケインズは2030年までに週15時間になると予測しました
が、2020年になる今もせっせと働いています。労働時間が減らないのは経済成長の為です。どんなに生産性が上がっても我々は仕事の奴隷なのです。
セドラチェク;奴隷になる必要はない。週二日働いてもいいのだ。
資本主義は成長、社会主義は分配、それらを支える民主主義の生産性とは?
セドラチェク;AからBに体制に変革する実験をするのは本当に危険です。我々は辛抱強く徐々に進むよりほかにないのだ。かってチャーチルは云った、民主主義は最悪だが、それ以外の他の制度を除いてはと云った(当時はヒットラーの国家社会主義の、スターリンの共産主義が台頭していた)。
・シュンペータは、資本主義、社会主義に加えて民主主義について考え続けた。資本主義が成長、社会主義が分配、それを支える民主主義の礎とする生産性の理念が心に浸み込んでこそ、人的投資が叫ばれることになるであろうと。
・ヤユス・バルファキス(前出)は云う;多くの分野で脱成長が必要、地球の為でけでなく私たち自身の為にもなる、他方成長が必要である分野は沢山ある。再生可能エネルギーや教育・社会福祉や文化活動などだ。詩や音楽などが今よりもっと盛んになってほしいと私はおもう。成長、反成長という言い方は間違っている。増やす必要のあるものと、減らした方が良いというう言い方が理にかなっている。
・ダイヤン・コイル( Ⅾiaen Coyleエコノミスト。英国・財務省のアドバイザーを経て、現・英国競争委員会の委員。マンチェスター大学客員教授。コンサルティング会社エンライトンメント・エコノミクスの経営者でもある。『インディペンデント』紙の元経済担当編集者。ハーバード大学から経済学の博士号を取得。英国で卓越した金融ジャーナリストに贈られる「ウィンコット賞」を受賞(2000年度)。著書『脱物質化社会 The Weightless World:Strategies for Managing the Digital Economy 』(東洋経済新報社)では、『ビジネス・ウィーク』誌のブック・オブ・ザ・イヤーを受賞。ロンドン在住。)はいう;資本主義で企業や人間の創造力を引き出す、資本主義を活用していいと思うが、しかし具体的にどう運用するのか、民間と政府と、コモンズへのアプローチ、どう組み合わせるかは時代によって変わる。民主主義国家の各国政府が、公開の話合いをすべではないか。同時に、経済学者や経済学を専攻する学生、政治家がその答えを出す必要があろう。(了)
イチハタ追記;習近平は2021.8.17中央財務委員会での演説で;「我々は共同富裕を着実に進めていく歴史的段階に入った」共同富裕は格差を埋めて皆が豊かになるという社会主義のユートピアだ。早くは毛沢東が1953年に唱えたが国力の伴わないのに、崇高な理想は社会混乱を招き、中国の長い停滞の一因となった。そこで鄧小平がその反省として「先に豊かになれるものからなれ」と改革開放に踏み切った。トマ・ピケティなどによれば、中国は上位10%の富裕層が資産の全体の68%を占め、日本や欧州を上回る格差社会になっている(朝日2022.1.13日)。資本主義の個人資産、労働市場を国家権力で管理するという。これは、民主主義、自由をベースにおくという西欧型資本主義にたいする挑戦状とみてもよいであろう。朝日もこの実験の結果は世界を左右すると書いている。日本の行く末もさることながら、この中国の実験をぜひ見たいものだ。
ご参考までに朝日2022.1.13日朝刊一面のみを添付します。
以上
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