33年ネット諸兄姉どの(2021.04.18)
コロナのおかげか、HQ2021「新学長からのメッセージ」を読む。
中野聡学長は、社会学部で社会学部研究科長、社会学部長の貴堂義之氏によれば阿部謹也君以来22年ぶりに社会学部出身だそうだ。然し,阿部君は1992.12に就任したのだから28年ぶりと云うべきだろう。このメッセージでは、表紙のHQ2021の2021の下に黄色の書き込みで入れてはあるが使い古された「Captain of Industry」は全く使われていない。僕自身、この上からの目線、自己満足的な、差別的な響きを持つ言葉は好きでなかったから結構なことだと思っている。
★HQ2021「新学長からのメッセージ」は
①『国内においても、文部科学省は2019年6月に公表した「国立大学改革方針」において『文理横断的・異分野融合的な知を備えた人材の育成』という方向性を打ち出しています。また、この方針では、これからのあるべき社会の姿を、「持続可能でインクルーシプな社会」「多様性にあふれる社会」と示しています。少子高齢化で停滞しがちな日本社会を活性化させていくには、“インクルーシブ”や“多様性’は不可欠のキーワードです。そうした社会づくりの担い手として国立大学が位置づけられ、文理横断的・異分野融合的な人材を育成する役割を期待されていることは重く受け止めなければなりません。』
一橋校歌「自由の殿堂」に謳われているように「学問の自由」を旗印に、反官思想は根強くはびこっていた。国家権力に対する批判は敗戦で嫌が上でも高まり、阿部君が就任当時でも強く残っていた。阿部君は、とにかく文部省の高等教育局長が一回も来たことがない国立大学だとよく嘆いていた。何とか母校と文部省の深い溝を埋めようと必死で努力した。にもかかわらず、学内では冷ややかに眺める人々が多かった。文部省側もこれに対応して予算要求でも、お宅は如水会さんがついているではないかという。鈴木永二理事長のときに、如水会理事会で「国費で賄われるべきものは出さない」という異例の決定をしなければならなかった。小平から国立への移転問題についても塩野谷裕一学長の執行部のとき、文部省から出せと言われているのにもかかわらず、小平から国立への移転費用の申請は、塩野谷学長が前向きであったにもかかわらず、なんだ、かんだと賛成しなかった。文部省に回ってきたカネは日米構造協議(1990年、海部内閣)の内需拡大6兆円からだ。反米・反官という立場から受け入れられないという裏の策動があったという。奇妙な動きが出ないことを祈るばかりである。
なお、自由こそが進歩を齎すという思想も大衆社会の進展によってマイナス面が出てきている。自由が進めば限りなく低俗化が進むというという。自由の進展は人間の徳を向上させないという(20世紀の思想;加藤尚武PHP新書1997.11)。コロナ対策を見ると、我が国は、現在、自由の「罠」にはまっている感じがする。
また、一つ気になるのは、学生の社会活動についてである。いまはコロナ禍で自由にできないが、ずいぶん前の話であるが大学構内で行われた日赤献血会では、献血する学生は殆ど外国人ばかりだったというクレームがあり、当時の副学長に献血を含む社会活動も単位に入れたらと言ったら文科省からそんな指示はないとにべもない返事だった。
②『ソーシアルデータ-サイエンス学部・研究科(仮称)の設置に関しては、とりわけEBPM(Evidence-Besed1 Policy Making:証拠に基づく政策立案)研究教育の最先端校でもあることなど、社会科学の幅広い領域で厚みのある研究教育を辰開してきた本学の強みを生かして、本学は、社会科学系データ-サイエンスの最高学府づくりに取り組んでいきます。そして、一橋のスクールカラーにどっぷり漬け込んだデータサイエンスの世界を創出していきたいと思っています。』
当時、Walt DisneyがDisney parkを始める前に、スタンフォード大学に5000万ドル(?)をはらって調査委託をしている。当時マクロエンジニアリング会の会長で親しかった経済学部教授の中川学さんに一橋でもできるかねと言ったらできないねという話だった。こんなこともできるのかな?
➂『最後になりますが、国立大学の経営改革を進めるうえで財源問題も大きな課題です。ビジネススクールの拡充などにより自ら稼ぐ姿勢をより強化するとともに、受託研究や社会からのご協力を賜るべく、本学筆頭セールスパーソンとなって足で稼ぐ所存です。2025年の創立150周年も間近に迫ってきました。各位におかれましては、ご支援・ご鞭捷のほど、何とぞよろしくお願い申し上げます。(2020年9月談)』
「最後になりますが」の下りは、これは大変な決意だ。一橋大学基金を始めたとき、如水会のみに依存するのではなく、教職員も学生も含めたムーブメントを起こすべきだと主張したが全く反応がなかった。なお、現在100%の出資会社ができることになっている。株式会社東京大学TLOは東京大学の100%子会社で、「産業界との連携による、東京大学の知の社会への還元」を理念として1998年8月3日に設立されている。
イチハタ