萬野君がわが同期生であることは承知していたが、クラスも違うし在学中に言葉を交わしたことはないと思う。

唯一彼に関する思い出はもう50年以上もむかし、四国の金毘羅山に詣った時に参道のどこかに「萬野汽船奉納の馬小屋」があって生きた馬が飼われていたのを見た思い出である。「ははあ、これが萬野君の会社か。」と感銘を受けたものだ。

さて今回森正之君の肝いりで何やら古い原稿が引っ張り出された。

萬野君の作でどこぞで商業出版の予定がキャンセルになっていたものを生かしたらしい。

題して「遊びをせんとや生まれけむ」、ご丁寧に目次まで付いている。

一覧して私が思ったのは、「いつ頃書いた原稿だろう？」であった。

手書きである訳はないのでワープロ原稿だろう。であればWORDファイルだろうが、WORDの日本語版が発表されたのが１９９１年１２月だから一般に普及したのは１９９３年頃以降である。それ以前のワープロはそれぞれワープロメーカーがそれぞれ勝手に作った文字を使っていたから、現在ファイルが残っていてもすぐに読むことは出来ない。小生が最も華やかにヨットを乗り回していた頃の活動記録は読める状態にない。

しかし萬野君の原稿の目次を見ると、随分若書きのテーマでとても60才過ぎて書いたものとは思えない。

生だの死だの宗教などを扱うのは若者の特権である。

きっと古い原稿を引っ張り出して書き直したものだろう。全然面白くなさそうだ。

「こりゃ売れないな。出版がポシャッたのも当然だな。」と思った。