1.冒頭の「パンデミックの歴史」は非常に興味深い記述である。天然痘・コレラ・ペスト等の感染症は、“人、モノの拡大” に伴って広がってきたとの事実はこれまで一般にあまり認識されていなかったが、感染症が発生する背景には「戦争」や「人心の荒廃」が大きな影響を与えてきたことは、我々が勉強してきた歴史が証明している。英仏の百年戦争、第1次世界大戦に続き、現代のグローバリゼーション、環境破壊による地球温暖化が、SARS(重症急性呼吸器症候群)や今回の新型コロナウイルスをもたらしたことは間違いないと思われる。
2. 病原体が細菌である場合の生育速度に関する記述は面白い。1個が分裂を起こして2個になる時間は15分から30分である。この速度で分裂を繰り返すと、時間の経過とともに2、4、8、16と増えていき、一晩で1個が数億個にもなる。病原体の生育は、対数増殖だから 感染症拡大においては、いかに「1個の病原体を抑え込むか」「一人に抑え込むか」という視点が大切ということが納得できた。
3.日蓮大聖人が「立正安国論」を執筆された時も「天変地夭・飢饉疫癘・遍く天下に満ち」との通り、疫病が蔓延していたとのこと。当時の状況は鎌倉時代の記録『吾妻鏡』などに記載があり、疫病は天然痘や赤痢、三日病などといわれているが、この「三日病」とは現代の “インフルエンザのことらしい。 そうした中で、大聖人が「汝須く一身の安堵を思わば先ず四表の静謐を禱らん者か」と記されたとはPandemicの特色を認識し、蔓延防止対策に力を入れていたわけか。
4.笑みを絶やさず、前向きに生きる。その一つが「笑い」の効能である。
「笑いによる脳への刺激が免疫機能を活性化するホルモンの分泌を促し、殺し屋の異名を持つNK(ナチュラルキラー)細胞が活性化する。NK細胞は、常に体内をパトロールし、がん細胞を見つけると殺す役割を担う」これは分かりやすい説明であり、周囲を笑顔にする励まし、また困難に直面しても“笑みを絶やさず前向きに生きよう”とする生き方にも、免疫力を高める効果があるわけだ。
5. 遺伝子解読に関して、Treasure DNAとされていたのはたったの2%で、残りの98%は、何の働きもしないJunk DNAとされていたが、急速な技術の進歩で未知の領域の解読が進んだ結果、Junkといわれていた中に“病気から身体を守る特殊なDNA”や“人間の個性や体質を決める情報”があることが、明らかになってきたそうだ。ここには、健康長寿を実現したり、誰もが潜在的な能力を発揮したりするヒントもちりばめられているとの説明はencouraging。
6.日蓮大聖人は「法華経題目抄」で、南無妙法蓮華経の「妙」の字に込められた功力を「開の義」「具足・円満の義」「蘇生の義」の三義として説かれているそうだが、これを現代の免疫学の知見を重ね合わせての説明は高度な技術分野にも及んでおり、更には優れて哲学的で僕には難しい。学会の皆さんは理解されたのだろうか。
7.本記事最後の「現代は交通手段などの発達によって、新型コロナウイルスの広がりは、従来の感染症に比べて格段に速くなった。一方でインターネットの普及に伴い、メールやSNSなどを使って、瞬時に励ましを送れるようになり、動画などを見て語り合うこともできる時代になった。どこにいても、距離の壁を越えて希望を送れる時代となった」ことは然りだが、「祈りによって自らの生命を強くする私たちの信仰が、社会の希望の光となるべし」との締めくくり:筆者は些か宗教めいている感あり。 麻布大学には僕はこれまで馴染みがなかったので、ググってみたが有名な私立の麻布学園とは無関係の医療専門大学のようだ。
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