彷徨える豪華客船
僕が現在冬眠している石垣島の沖合に数日前から、七万トンのクルーズ船「ウェステルダム」が2300人の客を乗せたまま、行きどころがなく彷徨っている。予定していた石垣島への入港が日本の総理大臣に拒否された為である。船の当初の日程では石垣の後、沖縄本島、九州、静岡へ立ち寄り、15日に横浜入港予定になっていたが、どこも日本の港だから当分入港出来ず、どこへ行ったらよいものか船長は迷っているのだろう。
同じようなクルーズ船で、たまたまコロナウィルス感染者が乗っていたことが判明した「ダイヤモンド プリンセス」については連日メディアで詳しい状況が放映されているが、「ウェステルダム」に続き、今後大型客船が4隻も香港、台湾、ベトナム等中国近辺からそれぞれ数千人の客を乗せて、日本を目指しているので、近いうちに第2、第3のダイヤモンドプリンセス事件が出てきそうである。
ダイヤモンドプリンセスの乗船者のうち、感染が確認されていない2000人はあと11日 間、船内に閉じ込められることになったようだ。その間の生活費(予定外の宿泊費、食費 )は船会社負担、新型肺炎関連の医療費や検査費用等は全て日本政府(日本国民の血税)の負担と決まったらしいが、
11日間幽閉されている間の(コロナウィルスとは無関係の)普通の医療費はどうなるのだろうか。クルーズ船に乗るのは殆どが高齢者であり、何らかの持病があるし、持病とは関係なく普通の病気にもかかりやすいが、その場合も船の中は外国だから、日本の公の健康保険は効かない。だからクルーズの場合も出発前に海外旅行医療保険をかけていない時は、一旦自費で全額立て替え、帰国後後期高齢者保険でカバーしてもらう面倒な手続きが必要になる。僕は海外旅行保険は金が勿体ないし、健康に余り不安はなかったので、これまで一度もかけたことはなかった。しかし一度大失敗した事を、今回石垣沖に来た「ウェステルダム」を見て、思い出した。これはオランダ籍の安物のクルーズ船だが、5年前にボルネオ島からの帰りにシンガポールに出て、この船で29日間かけて神戸へ帰ってきた時のことである。ある日船内で突然ぶっ倒れ、医務室に担ぎ込まれ、注射一本打ってもらったことがあったがそれだけで千数百ドル取られた。帰国後に後期高齢者保険で申請したが、日本で保険治療を受けた場合の点数に基づき、支払った医療費を戻す、という事で当然のことかも知れないが、船でぶん取られた金額の1割程度しか日本の保険ではカバーされず十数万円損したことを思い出した。客船には必ず医者が乗っているから、航海中の医療は心配ないはずだが、船会社により、船客の弱みに付け込み、べらぼうな金額を請求する悪質商法があるので要注意である。今回のダイヤモンドプリンセスの場合はそんな問題はないだろうけど。
船内に残されたダイヤモンドプリンセス客千数百名が室外に出られず、終日小さな個室に閉じ込められて大変だとの話題も出ているが、今日のニュースでは、窓が無い部屋の客は毎日1時間、室外散歩が許可されることになったようで、これは救いである。客船の場合、通常船の両側に高額な客室が並んでいる他に、内側には窓が全くない安い部屋が同数並んでいる。僕がウェステルダムに乗船した時は、日中はプールで泳いだり、広いデッキでビール飲んだり、カジノに興じたり、劇場でイベントを観たりで過ごし、自分の部屋は夜寝るだけにしか使わなかったから、窓がなくてもあっても関係なく、安い内部の部屋を選んで、失敗ではなかったのだが、今回ダイヤモンド プリンセスで一日中外部から遮断されて12日間を過ごさざるを得なくなった人達には深い同情を禁じ得ない。夫婦二人でならまだいいが、全くの1人だけの個室の場合は心理的プレッシャーで発狂してもおかしくない。
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