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投稿日: Nov 27, 2016 11:44:57 AM
古着のアップサイクル 難問への挑戦私たちが1年間に消費し、不要となって捨てられる服はおよそ130万トン。そのうち、古着として売られたり、雑巾などに加工されてリサイクルされるのは19%に過ぎません。それ以外の衣類は異なる素材が混ざっていて、仕分けが難しいため、これまで廃棄処分するしかありませんでした。
ごみとして捨てられてきた古着をなんとか再利用できないか。難しいリサイクルを独自に切り開いたのがこの大手繊維メーカーです。このメーカーが主に扱うポリエステル素材は石油を原料としています。
将来的な資源の枯渇という問題を見据えて、古着を新品の服によみがえらせるアップサイクルに取り組んできました。このメーカーはポリエステル製の古着を分子レベルに戻して再生する最先端の技術を開発しました。その工程では、まず古着を機械で細かく砕き、ペレット状の繊維くずにします。この時点では着色剤やポリエステル以外の繊維が混ざっているため再生できません。そこから着色剤を取り除き、化学反応によって分子レベルにまで分解するのが特徴です。
そして、ほかの素材をろ過して取り除き、最終的にポリエステルの原料を抽出するのです。
こうして出来た再生ポリエステルの糸は、石油から製造するものと比べ品質が落ちることなく、何度も繰り返し再生できる画期的な素材です。
しかし、この新技術は開発当初、すぐにビジネスに結び付くことはありませんでした。
実は再生ポリエステルはその過程でコストがかかり、石油から製造するものに比べて2割から3割、割高になるため、この糸で服を製造しようというアパレルメーカーはなかなか現れませんでした。
繊維メーカーとしてはアパレルメーカーを募って、再生した糸を使った商品を販売しそれを回収して永久に循環させるビジネスを目指していました。
しかしアパレルメーカーにとっては、材料費が割高になる上、さらに新たな費用をかけて古着を回収するのは大きな負担でした。
志には賛同するものの簡単には踏み切れなかったのです。
そんな中、重要な賛同者が海外から現れました。
衣類のリサイクルに関心を持っていた、アメリカの大手アウトドアメーカーとの提携が決まったのです。割高な再生ポリエステルを使って、どのようなアップサイクル商品を生み出すのか。日米共同のプロジェクトが動きだしました。
開発チームはハンデを逆手に取り、少々値段が高くても買いたくなるような高品質の商品作りを目標に掲げました。
商品の開発では生地の強さや乾きの速さ、抗菌防臭の機能など20以上の項目で品質テストを行いました。
開発に2年を費やし、200点を超える試作を繰り返した末に再生ポリエステルを使った最初の商品が完成しました。
商品開発と並行してアウトドアメーカーは、古着を回収する専用のボックスを店頭に設置しました。
国内のみならず海外も合わせた70以上の直営店で回収し、それを再生工場に運搬するという画期的なものです。
こうして、ついに今までごみとなっていた古着を何度も繰り返し循環再生できるシステムにたどりついたのです。
新商品は従来のものに比べて価格は上がりましたが、売り上げ枚数は2割増加。今では商品の半分近くがアップサイクルしたものとなりました。
回収量もこれまで36トンと順調に伸びています。この成功によって新たに賛同する企業が次々と現れました。
この国際的なファッションブランドもその1つです。再生ポリエステルだけを使った服で、今年デザイン界のオスカーといわれるデザイン・オブ・ザ・イヤーを受賞しました。
1つの繊維メーカーが技術の力で立ち上げたアップサイクルビジネス。今では参加企業は世界155社に拡大しました。
今後はさらに再生工場をアジアにも建設。ビジネスの拠点を広げていこうとしています。