2018/3/19press 日本企業のSDGs、まだ「ビジネス機会」より「経営リスク」対応のみ

投稿日: Mar 19, 2018 5:11:4 AM

グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ/東京都港区)と地球環境戦略研究機関(IGES/神奈川県三浦郡)は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」について、日本企業の取り組み実態に関する最新の調査結果をとりまとめた、2017年度版のSDGs日本企業調査レポートを3月14日に発刊した。この「未来につなげるSDGsとビジネス ~日本における企業の取組み現場から~」は、2017年9月~2018年3月にかけて、主にGCNJ会員を対象とするアンケート調査とヒアリング調査を実施し、まとめたもの。2017年に公表された第1回調査レポートの続編となる。レポートでは、企業によるSDGsの取り組みの経年変化を概観した。また、SDGsを戦略や計画に取り入れ、中核的事業として実施する「SDGsの本業化」を実践するためのアプローチを「組織」と「企業活動」という2つの側面から考察した。考察は企業の実例を挙げながら解説しているため、具体的に理解することができる。ビジネスチャンスよりも経営リスクの対応までで終わる傾向

アンケート結果の概要は、次の3点。前回のレポートでは、SDGsに対する経営層の認識と社会的な認知度の低さが課題と指摘されたが、今回は改善が見られた。その一方、中間管理職のSDGsへの認識が9%ときわめて低いままで、SDGs推進の課題となっている。SDG Compass(SDGsに関する企業行動指針で、SDGsに取り組む多くの企業が参照している)のステップは全体的に進捗が見られ、何もしていないGCNJ会員企業はごく少数となった。その一方で、ステップ1「SDGsを理解する」とステップ2「優先課題を決定する」にとどまる企業は合計で70%以上あり、まだ本業でのSDGs実施を模索している企業も多い。

企業にはSDGsをビジネス機会として取り組むことが期待されているが、現状では、企業は企業はSDGsをビジネス機会の獲得・拡大よりも、自社に負のインパクトをもたらすと認識するゴール(経営リスク)への対応として取り組んでいる傾向にある。

中核事業にあわせて市場・社会への活動を

今回の調査結果に対するメッセージは次の通り。企業がSDGsをビジネスの芽として捉えるための方策として、組織・個人を対象とする社会課題解決を促すための仕組み(表彰、報酬、評価制度など)を社内で整備することが有効であり、これは中間管理職のSDGsへの認識向上にも有効。持続可能な社会の構築には、中核的事業とあわて、市場環境を整備するための取り組みや、社会貢献性の強い事業・事業に関わる活動を進めることも重要。SDGs活動が投資と見なされるためには、中長期の経営計画や戦略の中にSDGsの要素が組み込まれていることが必要。企業理念に根ざした企業活動とSDGsが結びついていくと、社会の中での役割が明確になり、社員の仕事への強いコミットメントも生まれてくると考えられる。