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投稿日: Nov 10, 2016 7:48:29 PM
水銀の場合
国産の乾電池は1990年代初めに水銀使用量がゼロになった。それでも、集まる使用済み乾電池を1トン処理すると10~20グラムの水銀が出てくる。国内で流通する乾電池の2~3割は海外製。水銀が入った製品もある。蛍光灯の管内には気化した微量の水銀が含まれており、こちらは1トンで40グラムの水銀が回収できる。乾電池や蛍光灯の処理で得られる他の金属やガラスなどもリサイクルしている。イトムカで回収する水銀は年間50~70トンほど。国内の需要先は文化財修復用顔料など8~10トン程度とわずかだ。現在は残りを水銀式体温計や血圧計などを作る国へ、用途を確認した上で輸出している。
ところが、水銀の利用を巡る国際規制はさらに厳しくなる。「水銀に関する水俣条約」が13年に採択され、日本は今年2月に条約を締結した。発効すれば、20年までに水銀を使う体温計や蛍光灯、電池などの製造・輸出入は原則として禁止される。イトムカの売り上げの中心は自治体などからの処理費で、水銀の販売収入はわずか。ただ、取り出した水銀の行き先がなくなれば、処理事業もたち行かない。イトムカは現在、政府の資金も得ながら、水銀を毒物ではない固形の硫化水銀にし、樹脂と混ぜて処理する技術を開発している。水に触れたり圧力がかかったりしても安定した状態を保てるか、研究が続いている。過去の悲劇を繰り返さないため、水銀を回収し、安全な姿にして処分する――。水銀を使った製品がまだ社会の中に残り続けるなか、イトムカは新たな役割を担うことになる。
▼水銀に関する水俣条約 水銀の使用や輸出入を規制する国際条約。2013年10月、熊本市で開かれた140カ国・地域が参加した国連の会議で採択した。今月9日時点の締結国は35カ国。50カ国が締結すれば、90日後に発効する。
条約の前文では水俣病の教訓としてヒトの健康や環境への深刻な影響の再発防止を明記した。新たな鉱山開発が禁止されるほか、現在の水銀鉱山からの産出も発効後15年以内に禁止する。使用や取引だけでなく採掘から廃棄までを幅広く規制の対象としていることが特徴だ。