繋辞文
淵薫に繋辞は存在しないが、便宜上「AはBだ」という文を繋辞文と呼ぶ。
繋辞文は形容詞を述語とする形容詞文と、名詞を述語とする名詞文に分けられる。
形容詞文か名詞文かを問わず、繋辞文の主語は分格か原形を取る。
形容詞文
形容詞文の述語は、主語の有生/無生に合わせて連体形を取る。
himuv xīh(i) suyke. あの女性は美しい。(xuhur:女性、suyki:美しい)
yibun hay(i) tīli. この建物は背が高い。 (hayeh:建物、tīla:背が高い)
ただし、代わりに副詞形を用いると強調表現、原形を用いると詠嘆表現となる。
himuv xīh(i) suyki. あの女性は何と美しいか。
himuv xīh(i) suyc. あの女性は美しいなあ。
※無主語形容詞文
漠然と状況について言及する形容詞文では、主語が存在しないことがある(下例②)。
例として「今日は暑い」という文を考える。
① yibāl(i) māki.
② yibāle(w) māki.
③ yibāle(w) kaya{kūni} māki.
yibāl(今日)が①では原形/分格、②③では点格を取っている。
どれも正しい文であるが、
①は今日という日が暑いという性質を持っているという意味であり、客観的・恒常的な暑さに言及している。
②は今日という日の内に暑いという状況が存在しているということを述べており、主観的・一時的な暑さを表している。
③はkaya(私)が主語であり、他人とは対照的に私は今日暑く感じているという、個人的な暑さを表明している。
名詞文
名詞文の述語は原形を取る。
himuv{hiqi} zāmay. 彼は看護士である。(看護士:zāmayur)
prah(i) klīm kūnoy. ここは私の部屋である。(praheh:ここ、部屋:klīmeh)
ただし、代わりに特徴形を用いると強調表現、呼格を用いると詠嘆表現となる。
himuv{hiqi} zāmayi. 彼は看護士なのだ。
himuv{hiqi} zāmayay. 彼は看護士なのだなあ。
否定文・過去時制
繋辞文に助動詞を付ける場合は、述語を形容詞文では副詞形、名詞文では特徴形にして、その後ろに以下の助動詞を置く。
助動詞のアスペクトは原則として未完了をとる。
否定文は助動詞nepleを用いて以下の通り。
himuv{hiqi} zāmayi nepla. 彼は看護士ではない。
yibun hay(i) tīla neplu. この建物は背が高くない。
繋辞文の過去時制には回想助動詞sūreを用い、以下のようになる。
himuv xīh(i) suyki sūra. あの女性は美しかった。
prah(i) klīma kūnoy sūru. ここは私の部屋だった。
形容詞文の副主語
形容詞文は、副主語をとることが出来る。
副主語は、述語となる形容詞の直前に、特徴形で置かれる。
感情を心に抱いた人や、性質・様子を知覚した人が、形容詞文の副主語として表される。
「~にとって」「~から見て」「~は…と思う」のように訳すことが多い。
himuv xuh kūnu suyke. あの女性は私から見れば美しい。
副主語を文頭に出すときには、その直後にkreを伴う。
kūnu kre himuv xuh suyke. 私にとって、あの女性は美しい。
なお、「AにはBがある/いる」という存在構文においては通常、副主語を文頭に出す。
※「ある」や「いる」を表すsakriは形容詞。
kūnu kre mīn sakre. 私には姉がいる。(mīnur:姉)
※淵薫の形容詞は基本的に、その状態/性質を持っている人や物事を主語とし、その状態/性質を知覚/認定する主体(ふつう人)を副主語とする。
※感情形容詞は、その感情を抱いた対象を主語とし、その感情を心に抱いている主体(ふつう人)を副主語とする。