動詞

動詞は主語の有生性に合わせて活用する。また、アスペクトとして完了未完了とを区別する。

※有生複数と無生複数の語尾は複数あるが、どれを用いても違いはない。なお、óはō、íはīと同じ発音であり、表記上の区別に過ぎない。

動詞を定述語として用いる場合は、これらの語尾を動詞の語幹に付ける。

動詞の語幹は辞書形から-eを取ることで得られる。

定述語とは、述部のなかで最も後ろに来る要素のことである。

定述語には動詞がなることもあるが、敬卑詞や助動詞が動詞を後置修飾している場合には、それらのうち最も後ろにあるものが定述語となる。

また、主語が複数(注:複数形であるとは限らない)である場合に動詞が複数語尾を取ることは言うまでもないが、

以下のような場合にも、複数語尾が用いられることがある。

  • 反復習慣を表す場合。この場合は必ず未完了複数語尾が用いられる。

  • 曖昧な推測や意思を表す場合。

    • 漠然とした状況や、形のないものが主語の場合。

    • 短くない時間あるいは期間、行為や動作が続いている場合。

  • 主語が省略されていて、かつ目的語が複数である場合。

  • 主語が省略されていて、かつ目的語が形のないものである場合。

  • 主語も目的語も省略されていて、かつ文中の任意の名詞が複数である場合。

  • 婉曲を表す場合。

なお、動作全体をいう場合には、一般に未完了形が用いられる。

動詞が定述語でない場合には上記の語尾は付かず、替わりに以下の4つの形のいずれかを取る。

接続形

接続形は、動詞の語幹に接尾辞-eを付した形。

なお、動詞の辞書形はこの接続形である。

後ろに敬卑詞や助動詞などの動詞修飾要素が置かれる場合にはこの形を取る。

接続形に完了と未完了の区別はないので、本来その動詞が表すはずだったアスペクトは一番最後にある敬卑詞や助動詞(定述語)の語尾によって表される

(助動詞や敬卑詞については別項で解説するが、動詞と同じ活用語尾が付く。)

また、文末で用いると命令・強調を表す。

連体形

未完了相のときには原形と同形になる。動詞の原形は名詞の原形と同様(原則は語幹と同形。必要があれば語尾を丸める。w,yで終わるものに注意。)にして作られる。

完了相のときは接続形と同形で、語幹に-eを付けた形。(ただし、区別のためにこの-eを特にと表記することがある。)

連体形は、名詞を前置修飾するときに使われる。

例えば「本を読む男性」は「wētir hac mewlur」となる。(本:wētireh, 読む:hakre, 男性:mewlur)

当然、被修飾語の名詞は意味に応じて格語尾などを伴うことができる。(例:「本を読む男性の」→「wētir hac mewloy」)

名詞形

未完了相のときは原形・連体形と同形

完了相のときは、「-es」という形をとる。

例えば、「tawqe(食べる)」の完了名詞形は、「tawqes」である。

名詞形は「~すること」「~する物」を示す動名詞として使われる。

動名詞は名詞と同様に扱われ、格語尾や後置詞を付けられる。

なお、末子音で終わる名詞形に格語尾などを付ける場合は、末子音を丸め込まれる前の頭子音に戻す(「末子音を開く」)操作が必要となる。

ただし、完了相名詞形は常に「-er-」という特別な形に開かれるので注意。

例えば、「hapre(会う)」の未完了名詞形「hap」に属格語尾-oyを付けると、「haproy(会うことの)」となる。

完了名詞形については「tawqesoy(食べたことの)」ではなく「tawqeroy」となる。

また、名詞形は名詞を後置修飾するときにも使われる。

名詞を動詞名詞形によって後置修飾するときは、まず被修飾語となる名詞を原形で置き、その直後に動詞名詞形の節を置く

名詞に付くはずであった格語尾や後置詞は、動詞名詞形に付く

例えば、先ほどの「本を読む男性の(wētir hac mewloy)」を後置修飾にすると、「mewl wētir hakroy」となる。(意味は全く同じ。)

※先述のように、末子音で終わる名詞形に格語尾が付く場合は、その末子音を開く必要がある。

名詞形は文末に置かれると、詠嘆形としても用いられる。

例えば、「ここで月を見たなあ」は「prahe xīqur zīmes」となる。(ここ:praheh, 月:xīqur, 見る:zīme)

特徴形

受動文・使役文・打消文に限って使用される。

詳細は当該ページ参照。

動詞の畳語形

動詞の畳語形は、その動作が断続的あるいは反復的に行われることを示す。

作り方は名詞の複数形と同様、特徴母音を挟んで語幹を繰り返す。

例:huyr-(眠る) → huyrihuyr-(うとうとする)

例:zīm-(見る) → zīmazīm-(ちらちら見る)

非畳語形の動詞は反復を表すときに語尾を未完了複数とするが、畳語形はこの限りでない。

主語が単数であれば単数語尾、複数であれば複数語尾を用いる。

アスペクトに関しては、未完了を用いると断続中/反復中(まだ続く状態)であること、完了を用いると動作の断続/反復が終わった(もう続かない)ことを表す。