大垣城隍祭史

『大垣城隍祭詩』(おほがきじゃうくゎうさいし)は、斎藤百竹が大垣まつりの様子を、漢文と漢詩に表した書物です。

明治元年に著されたもので、明治8年の序文があります。

実物は岐阜県立図書館に収蔵されていますが、

『大垣八幡神社史』(和田唯男, 1979)に影印版が、

『大垣祭総合調査報告書』(大垣市文化遺産活用推進事業実行委員会, 2014)の資料編に翻刻があります。

しかし、この翻刻にはいくつか、判読不能とされている文字(□)があります。

私が影印版を見る限り、全て判読可能でしたので、以下に示します。

「布袋山車」

恨殺膨□一皮袋。

→恨殺膨脝一皮袋。

※「膨脝(バウカウ)」は、膨れている様をいう語。

「船山車」

□置鞬箙

→艗置鞬箙

※実際には「艗」の異体字「⿰舟益」が書かれている。字義は船の「へさき」。

「蛭子山車」

涅槃経云迦毘羅城有□氏種子、字悉達多。姓瞿曇。

→涅槃経云迦毘羅城有釈氏種子、字悉達多。姓瞿曇。

※この箇所は文字がかすれているが、僅かに「釋(釈)」と読める。

※「涅槃経に云ふ」とある通り、大般涅槃経の巻第二十九には「汝不聞耶。迦毘羅城有釋種子。字悉達多姓瞿曇氏父名白淨。」(本文はSAT大正新脩大藏經テキストデータベースによる)という箇所がある。

「鎧武者」

金甲□□映射人。

→金甲燯燯映射人。

※「燯」の字義は「火光」。「燯燯(レイレイ)」はきらきらと照り輝く様を表すと推測される。

●頭註のない箇所

玉□銀盤人目眩

→玉琖銀盤人目眩

※「琖」は「盞」の異体字とも。酒盃のこと。

蔡夢□曰峡中以舟師為長年拕工為三老

→蔡夢弼曰峡中以舟師為長年、拕工為三老。

※実際には「弼」の異体字「⿲弓弓㐁」が書かれている。蔡夢弼(サイボウヒツ)は、宋代の学者。『九家集注杜詩』(郭知達, 1181)巻二十六の「撥悶」の注に「夢弼曰峽中以蒿師為長年拖工三老」(本文は中國哲學書電子化計劃による)とある。

※『大垣祭総合調査報告書』の翻刻には句読点が無いが、影印版では打たれているように見える。