冠詞

波藍の冠詞は形容詞などと同様、文法的には付けることが義務的ではない。

また、冠詞は名詞以外の品詞にも付くことができる。一つの語に複数の冠詞を付けることもできる。

名詞に係る場合、形容詞と冠詞との違いはそれが置かれる位置にある。

名詞に係る冠詞は以下のような位置に置かれる。

    • 冠詞+名詞

    • 冠詞+形容詞(句)+名詞 (形容詞(句)の数は問わない)

    • 連体節+冠詞+名詞

    • 連体節+冠詞+形容詞(句)+名詞 (形容詞(句)の数は問わない)

つまり、基本的には名詞部の先頭に置かれるが、連体節がある場合はそれより後ろに置く。

他の品詞に係る場合も、同様の位置に置かれる。

すなわち、他のいかなる修飾要素より左に置くが、その修飾要素が節の場合だけはその右に置く。

現在の波藍には14種類の冠詞がある。

1.敬意冠詞 es

esは主に人名に付き、その人に対する敬意を表す。英語のMr.やMs.に相当する。

苗字にも名前にもフルネームにも付くことができる。

例: es Suzuki 鈴木様

2.総称冠詞 jä

事物や人を抽象的に総称していうときに使う。「夢とは~」や「犬という動物は~」や「男というのは~」というような場合に使う。

例: ar jä elezo sarxroc. 私は本が好きだ。(特定の本ではなく、一般的に本というものが好きという意味なので、jäが付く。)

3.添加冠詞 ba

「~も」「~もまた」というときに使う。

例: ba yi jä elezo sarxoc mek? あなたも本は好きですか?

4.全部冠詞 bö

「全ての~」「あらゆる~」というときに使う。

5.部分冠詞 gi

「一部の~」「いくらかの~」というときに使う。

6.全否定冠詞 ja

文末の否定表現(janなど)と共起して、「全く~ない」「一つも~ない」という意味を表す。

例: ja egowa kor köc jan. 誰もこのことを知らない。

7.部分否定冠詞 ci

文末の否定表現(janなど)と共起して、その否定表現が係っている箇所を明示する。

例: ar ci meyä mötägö sarxröc jan. 私が好きなのはあの先生ではない。

8.定冠詞 qö

「その~」「例の~」というように、共通認識があるものに付ける。英語のtheにも同じ機能がある。

例: qö egowa kor ayu mödöt. その人が私にこのことを教えた。(実際に"その人"と指さして言っているのではない点に注意。)

9.特定冠詞 le

「ある~」「とある~」「某~」というように、実際には一つであるものの、知らなくて言えない場合や敢えてぼかす場合に使う。

例: ar le namido fenröt ki. 私はとある学校に通っていた。

10. 限定冠詞 ul

「~だけ」「~のみ」「~しか…ない」というように、唯一のものを限定していう場合に使う。

例: ul ar kor köc. 私だけがこのことを知っている。

11.近似冠詞 un

「およそ~」「だいたい~」「~のような」というような意味で、おおよそを表すものに付く。数詞に付くと概数、名詞につくと比喩や例示を表す。

12.強調冠詞 cä

「~こそ」「~ぞ」「正に~」のように名詞を強調する。

13.大冠詞 il

「~も」「~までも」「~ですら」のように、予想より量や程度が甚しいことを示したり、極端な例を示すことによってそれ以下の場合も同様であることを暗示する。

14.小冠詞 qa

「たった~」「~しか」「~ごとき」のように、予想より量や程度が小さいことを示したりする。