受動態
ここでは、対格受動と与格受動の判別について述べる。
結論としては、対格受動か与格受動かの判断は相手の常識やコンテクストの把握に委ねられるということを述べる。
ar tor yü qök. (I give it to you.)――(*)という文を考える。
(*)を対格受動態にすれば、
towa ayo yü qöget.(It is given to you by me.)――①
となり、(*)を与格受動態にすれば、
ya tor ayu qöget. (You are given it by me.)――②
となる。
ここで、①と②をあなたが発言した場合、聞き手がそれぞれどのように受け取るのかを考えてみる。
ここでは便宜上、能動態に戻すことで聞き手がその文を理解できるとする。
①の文を能動態に戻すとする。
まず、聞き手は動詞に付いている-etから文が受動態になっていると分かる。
しかし、対格受動なのか与格受動なのかは不明である。
対格受動だとすると、能動文に戻せば
ar tor yü qök. (I give it to you.)――①'
となる。与格受動だとすると、
ya ayo towu qök. (You give me to it.)――①''
となる。
ここで常識やコンテクストから①'と①''の内どちらの解釈が正しいのかを判断することになる。
次に、②の文を能動態に戻すとする。
①の場合と同様に、聞き手には②が受動態になっているということしか分からない。
そこで、対格受動だとすると、能動文に戻せば
towa yo ayu qök. (It gives you to me.)――②'
与格受動だとすると、
ar tor yü qök. (I give it to you.)――②''
となる。
ここで①と同様の判断を行うことになる。
以上より、①、②は必ずしも(*)として解釈されないということが分かった。