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407 ruuj ruuj

四〇七年ルージュの月ルージュの日

¶tu et durne e 5 sel iten lamsae bezat l'at alagel im xelt e ruuj, xel nainan sein mix lexn t'alklax i seelarna t'arbazard le landor melsel, ke atu taxel.

¶メルセルを待ち望むアルバザード、中央アルナ市からの救難信号を受けて警官達がそこへ駆けつけたのは、ルージュの月に舞い降りた、例年よりも早い初雪の日から五日が経った夜のことであった。

¶luus ke atu kont lo tio vei felan tovat xok maldel.

¶学生が騒いで喧嘩でもしたのだろう、彼らはそう思いながらそこへ向かった。

son luus na vem, ku vil em fi ka xe felez.

それゆえ彼らは怯え、その教室で何も言えなくなってしまった。

¶omi e felez es rig vamel.

¶教室の戸が乱暴に破壊されていた。

yan elen sein es lufabad al aks.

そして机がいくつも床に吹っ飛ばされていた。

fok tu aks til eri hanel.

しかも、その床には血が一面に広がっていた。

taik xe felan vortes ka lat e felez kont eri es ekx i jam.

更に悪いことには、ある生徒が教室の入口で胸から血を流して死んでいた。

yan frem tu, xa sol vortmain alt le tan sabes fels.

そしてその近くには、制服を着たもう一つの死体があった。

¶im tu durne, nainan sein alkik 1 felan del falsan ilia.

¶その夜、警官たちは唯一生き延びた一人の生徒を救助した。

tal lu allfis, ku yuu pefel a nainan.

しかしその生徒は植物人間になっており、一言として警官に言葉を返すことはなかった。

taik lu ov vil minj tis.

その上、小指すら動かすことができなかった。

mon lu lfis, tal si kolo mon yun leeves atolas.

生きてこそいるが、まるでこの世を去ってしまっているかのように意識は不明瞭だった。

¶3 felan xa pot felez, xel felan le vortes ka lat, les allfis, fok les vortes frem felan ilia.

¶三人の生徒が教室の中にはいた。入り口で死んでいた生徒、植物人間となった生徒、そしてその唯一の生徒の近くで死んでいた生徒。

¶ala to at sod a luus 3 felan sei....

¶一体何がその三人の生徒に起こったのだろうか……

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ruuj zana cuuks velt

ルージュの月ザナの日の黄昏

¶sae milmor seerel ka deko l'alis lukor mioxel.

¶アリスが上機嫌で歩いてゆくキャンパスを、雪が静かに舞っている。

¶xelt e ruuj, adia t'arxe.

¶ルージュの月、アルシェの使徒週。

sae vaj arbazard im tu salt in.

今年のアルバザードは雪の訪れが早かったようだ。

¶"waa, non et xina mil ar sen xelk im lamsae."

¶「わあ、初雪の中を散歩できるなんてラッキー」

¶lu evand luwaakl a sae sam o gax.

¶ぎっしり積もった新雪に足跡を付けていく。

hasl luut et lant ont aalo yun lem.

彼女の歩調は音楽のように美しく器用だ。

tet el nask sen tu im ser lu et mei e xe naxet.

しかしそれも、彼女がとあるバンドのメンバーだと知っていれば納得が行く。

¶lu mana kaax nos et tio yuuma lutia emo sorit en sor ul hait, sir en fir soa, pidl lette del nia nie, yuu siia e menif o nifzams, noxra veigl kaen alas, tolis 16 del feme mimom o yunfi, fok pels ont els dazen malt.

¶この少女は自分をどこにでもいるようなただの女の子だと認めている。高くも低くもない身長、それほど白いというわけでもない肌、栗色のボブという何とも月並みな髪の、留年も飛び級もしたことのない、西区のちっぽけなマンションに住む、不安定で感傷的で、そして思春期相応の悩みと憂鬱さを持つ十六歳の少女。

¶tal gaato reiyu leim et vana on yulem --aal lets-- xel selotan le vator nosse ar lem ka xion t'anjur xi toon sel.

¶しかしそんな普通の少女も、紫苑祭での演奏発表を数十日後に控えたバンドのキーボーディストとして、音楽――とりわけピアノ――にかけては自信がある。

see soa mesa mioxes lu kont tu lamsae yunen xant e fiine fandes xalte.

精霊からの贈り物のようなこの初雪がムードを盛り上げる中、そんな環境は彼女をますます上機嫌にしていた。

alson lu nap elf mile iten siel firem osn kont lukor fia l'or erfi.

だから彼女は空から降ってくる綿で頭が真っ白になっていくのを気にしようともせずに、銀色に染まってゆく世界を歩いていた。

¶kleevel lunat xi 3 xax e saam.

¶午後の三コマの授業が終わると五時になっていた。

kleevel tis et velt mer im tuo t'alis ka tu kad.

この国では、秋のこの頃にもなれば六時は早くも真っ暗だ。

¶im felxi, alis tolxat selot ka arxetsems e felka.

¶アリスは放課後、学校の軽音部でキーボードの練習をしていた。

mei alt leevat sa lu, tet lu tolxat onkel vesel.

他のメンバーは先に帰ったが、彼女は残って練習を続けていた。

yan venat tur et map rak varfant xed dunex man lu fanas a selot sin.

その結果、キーボードに集中してしまって、夕食も食べないまま既に時刻が七時を回っているということに彼女は気づかなかったのだ。

¶"tee, non viz dunex xan. haizen, haizen"

¶「いけない、晩ご飯に遅れちゃった。罰が当たっちゃう」

¶yan xi tu, lukor deko xed koksems.

¶そうして、仲間もなしに彼女はキャンパスを歩いている。

sae alxa sedo total fo --aal bia palmel dajel.

雪というものはあらゆる音を消してしまう――親切にも雑音を優先して。

klal seer da.

静寂たる空間だ。

yuu felan xa frem lu fin tu et ruuj.

ルージュの月だというのに彼女の近くには一人も学生はいない。

im tur, atu et velt mer.

そこはもうすっかり闇の中だ。

¶im tu, lu xaklik fo lis, xalt tap vein, kler silfi.

¶その時、彼女は小さな音に気付いた、より正確には幽かな音色というべきかもしれない。

¶"tu et... lets eyo?"

¶「これは……ピアノ?」