冠詞と格

尋浦には10の格がある。

後述する-(a)nを除き、あらゆる格は名詞の前に置かれる冠詞によって表現される。

※未処格・已処格・遊処格を副処格と総称する。

※遊格のØは、冠詞を付けないことを表す。つまり、冠詞のない名詞は遊格と解釈される。

※処格を表すには冠詞danと接尾辞-(a)nの2通りがある。使い分けについては後述。

エリジオン

母音で始まる名詞に、主格・対格・未格・已格・具格の冠詞を付ける場合は、エリジオンが起こる。

エリジオンとは、冠詞の最後の文字がアポストロフィに変わり、名詞と連続して書かれることである。

なお、発音上はエリジオンを無視して発音する。

例)sa + aloi → s'aloi 馬(発音はサロイ)

遊格の用法

遊格は変化に直接関係しないものを表す格だが、実際には以下のような用法がある。

所有用法

所有を表す用法。日本語の「~の」に相当する。

なお、語順は日本語とは逆で、「AのB」と言いたい場合はB→Aの順に名詞を並べる。

例)s'aloi jequt 男の馬が(aloi: 馬, jequt: 男)

修飾用法

尋浦は形容詞や副詞を独立の品詞として持たず、これらは名詞として存在する。

そのような名詞Aを別の名詞Nに係ける場合、Aは遊格を取る。

例)ce sui sumna. 青い空へ(sui: 空, sumna: 青)

状況用法

変化が起こるときの付帯状況を表す用法。しばしば、遊処格を伴う(例2)。

例1)Irusyt ce fistam sui sumna. 青い空の下(青い空という状況で)、学校に行く。(irusyt fistamun: 私は学校に行く)

例2)Irusyt ce fistam mam lan pedyt. 母と一緒に(母が私の隣にいるという状況で)学校に行く。(mam: 母, pedyt: 私の隣)

・呼格用法

呼びかけを表す用法。

例)mam. お母さん。

・処格用法

場所や時を表すことが明らかな名詞の場合、処格の代わりに遊格を用いることがある。

例)taim 今日 = taiman / dan taim

例)fistam 学校で = fistaman / dan fistam

処格

処格を標示には冠詞danによるものと、接尾辞-(a)nによるものがある。

これには以下のような使い分けがある。

固有名詞および代名詞にはdanが用いられる。

例)dan ameriqa アメリカで

例)danyl そこで(danに代名詞-ylが付いている。詳しくは次項参照)

それ以外の語には、danを用いても-(a)nを用いてもよい

-(a)nは、子音で終わる語には-an、母音で終わる語には-nの形で付く。

ただし、特に「今日」「家で」のように、短くて頻度の高い表現では-(a)nが好まれる。

例)taiman (= dan taim) 今日

例)stenan (= dan sten) 家で

反対に、難しい語や語形の長い語の場合、あるいは名詞が修飾語を伴っている場合にはdanが好まれる。

例)dan sten tu (= stenan tu) この家で