波藍の「法」は、言語学でいうところの法性(モダリティ)に相当する。

以下で解説するのは、波藍において法助動詞で表現される、対事モダリティである。

対人モダリティは文末詞で表すため、ここには含まない。

直説法 (Ø)

話者が事実を語る場合に使う法で、もっとも頻繁に使われる。

例)ar farasa. 私はファラスだ。

条件法 (jö)

何らかの条件下で成り立つ事柄を述べる。条件節と共起する場合が多い。

例)kifi qeyü ebärän balek ko, ar qowu qen xeljö. もし彼女に会ったら私は彼女に謝らなくてはならない。

希求法 (fo)

主格の希望を表す法。「~したい」。

例)penodo cenal fo. パンを食べたい。

気付き法 (xö)

話者が初めて気付いたことを語るときに使う。

例)belurtus, ba ya xö. ブルータス、お前もか。

思い出し法 (äm)

話者が思い出したことを語るときに使う。

例)tor, aye fuda lort äm! それ、私の祖父が言っていました!

強推量法 (ce)

高い確率の推量を語るときに使う。「~に違いない」、「きっと~だろう」。

例)ya mor köc ce. 君はあれを知っているに違いない。

推量法 (se)

話者の推量を表す。「~だろう」。

例)bäsködä bic se. 日本が勝つと思う。

弱推量法 (ma)

低い確率の推量を述べるのに使う。「~かもしれない」。

例)ar yü deslamran ma. 君のところに泊まるかもしれない。

強意志法 (je)

強い意志を表す。「絶対に~する」、「きっと~する」。

例)ar qowa ornor yesno je. 私はこの計画を絶対に成功させる。

意志法 (ge)

意志を表す。「~しよう」。

例)ar lamran ge. 寝よう。

弱意志法 (lö)

弱い意志を表す。「~しようかな」。

例)ar kesa no namitu jän lö. 今日は学校を休もうかな。

命令法 (lä)

主格に対する命令を表す。「~しろ」。

主格が一人称複数の場合は勧誘を表す。「~しよう」。

例)ya qupto wilän lä. 速く歩け。

禁止法 (ni)

主格に対する禁止命令を表す。これ自体に否定の意味があるので、janなどは伴わない。「~するな」。

主格が一人称複数の場合は勧誘を表す。「~しないでおこう」。

例)ya qowa babu san ni. この橋、渡るべからず。

提言法 (kwa)

主格に対して話者が動作を提案するするときの法。「~してはどうか」、「~したほうがいい」、「~すべきだ」。

例)ya bö kwa jan. 見ないほうがいい。

義務法 (xel)

主格の義務を表す。「~しなければならない」。

例)ya ayu senböwän xel jan. 私の方を振り返ってはいけない。

許可法 (üpö)

主格に許可されたことを表す。「~してもよい」。

例)ya mosan üpö ol. 泣いてもいいんだよ。

能力可能法 (ibä)

主格が能力的に可能なことを語るときに使う。「~できる」、「~する能力がある」。

例)ar palamo lyo ibä. 私は波藍を話すことができる。

状況可能法 (äfä)

状況が許してはじめて主格に可能なことを表す。「~できる」、「~する機会がある」。

例)ar nodo cen äfä. 私はごはんを食べることができる。(ごはんを食べる能力があるということを言いたいのではない。)

推定法 (obo)

状況から推定して分かることを述べるときに使う。「~ようだ」、「見るに~らしい」。

例)mas pövöböt obo. どうやら雨が降ったようだ。

伝聞法 (böt)

他人から聞いたり知ったりことを話すときに使う。人からでなくても、テレビやネットで知ったことにも使える。「~らしい」、「~と聞いた」。

例)mötägä kesa no män böt jan. 今日は先生が来ないらしい。

感受法 (zo)

何となく感じたことを述べるときに使う。「~する気がする」、「~と思われる」、「~と感じる」。

例)egowa mowido xon zo. あそこに人がいる気がする。