代名詞

代名詞は基本的に名詞と同様に扱われるが、原形が不規則である点で異なる。

一人称・二人称

一人称や二人称は常に有生名詞であるので、原形は基本的に主格として使われる。

主格以外は、語幹kūn-/sipr-を用いて、ふつうの名詞と同様に表す。(例:kūnoy(私の))

複数形の原形(主格)は上表に示した通りであるが、

主格以外を表すには、ふつうの名詞と同様に特徴母音を挟んで語幹を繰り返すことで、複数形語幹kūnukūn-/siprasipr-を作り、これに格語尾を付ける。

ただし、ふつうの名詞とは異なり、複数の人を指している場合には必ず複数形が用いられる点に注意されたい。

ただし、一人称・二人称ともに目上・年上にはふつう使われない

自分のことは一人称の代わりに名前や役職で呼ぶことが多い。

二人称については、相手について何も知らなければ使うこともできるが、名前や役職が分かっているのならばそれらで呼ぶのが一般的である。

近称・遠称

近称は話し手から近い、遠称は話し手から近くない人や物を指すのに用いる。

対象が有生名詞か無生名詞かを問わずに用いることができる。

したがって、原形は有生名詞を指しているときには主格無生名詞を指しているときには対格を意味する。

近称と遠称の原形にはそれぞれ2つの形があるが、これらは原則として同じ意味・用法である。(例外については以下で説明する。)

複数形の語幹はふつうの名詞と同様にして作られ、「yiprayipr-」と「hiqahiq-」である。

ただし、複数の人、あるいはその他の有生名詞を指す場合には必ず複数形が用いられる。

逆に、複数の無生名詞を指す場合には強調・整調する場合を除いて複数形を使わないことが多い。

近称と遠称の代名詞には2つの用法がある。

一つは単独で用いる用法(指示代名詞用法)、もう一つは名詞を伴う用法(指示形容詞用法)である。

まず、前者の用法(指示代名詞用法)は「これ」「あれ」を意味する。

この用法に限り、複数の無生名詞を遠称で指す場合、2つある原形のうちhimuvが使われることが多い。(強調・整調のために複数形を使う場合にはこの限りでない。)

次に、後者の用法(指示形容詞用法)は「この~」「あの~」を意味する。

この用法では、代名詞が名詞の前か後ろに置かれる。

後ろに置かれた場合、名詞に付くべき格語尾は、代わって代名詞に付く。(例:yibun saye = say yipre(この家で, 家:sayeh))

※口語代名詞

話し言葉や砕けた文体では以下のような代名詞も用いられる。

複数専用の語幹があるため、畳音による複数は使われない。