視者と内外
・内外
日本語はウチ・ソトの意識が大いに関係する言語であるが、
尋浦にも「内外(ないがい)」というよく似た文法範疇が存在し、その区別がより大きく関係する。
日本語では「こ・そ・あ」の区別や敬語などで部分的にその区別が表れるが、
尋浦においては、全ての名詞について内外を判定する必要がある。
英語の「数」という文法範疇に「単数」「複数」の2つがあるように、
尋浦の「内外」には「内」「外」「入」「出」「境」の5つがある。
読みは「ない」「がい」「にゅう」「しゅつ」「きょう」である。
「内」「外」に関しては、日本語における「ウチ」「ソト」と基本的には同じである。
「入」「出」は主に授与や移動に関係する動作において、
「(外から)内へ」の移動を「入」、
「(内から)外へ」の移動を「出」と呼ぶ。
例えば、「私はあなたからチョコレートを貰う」という文で、
「外(あなた)から内(私)へ」移動するチョコレートは「入」である。
「私はあなたにチョコレートをあげる」という文では逆に、チョコレートは「出」である。
「境」は、他の4つのどれにも属さないものである。
例えば、「今日、私は学校に行く」という文において、
「私」は出、「学校」は外であるが、「今日」は境となる。(「私」は"外へ"移動するので、内ではなく「出」である。)
その他、「誰か」「何か」のような、不定のものも境となる。
・視者
ところで、ここまでは「私(話し手)」視点で内外を説明してきたが、
「あなた」や「彼」の視点から話したり書いたりする場合、
「あなた」や「彼」の視点で内外を決めることになるだろう。
この視点となる人物を、尋浦では「視者」と呼ぶ。
尋浦の文には、必ず視者が要求される。
視者は通常、文の主題を兼ねる。
なお、実際の文では視者自身についても内外を定める必要がある。
このとき、視者から見て内外を決めると、視者はほとんどの場合で内になってしまう。
そのため、視者の内外は、常に話し手の視点で決められる。
ただし、視者が固有名詞で表される場合には、内外を示さない(冠詞を付さない)こともある。