脱帽文と着帽文

尋浦の文は、脱帽文・着帽文・名詞文の3つに分けられる。

ここではそのうち、動詞を述語とする文である、脱帽文と着帽文を解説する。

・脱帽文

最も標準的な主文の形式である。

従属節に脱帽文を用いることはできない。

「感心」「敬服」という意味の「脱帽」とは関係ない。

後述する「帽詞」という部分を持たない文なので脱帽文と呼ばれる。

脱帽文は以下のような形式をとる。

[視者] [代名詞] [法辞-時制辞-動詞-視者語尾-相類語尾] [態詞] [その他]

代名詞を含む文の場合、フランス語やイタリア語のように、それらが動詞よりも前に置かれるので注意。

ただし、代名詞以外の名詞を修飾詞している遊格代名詞は[その他]の位置に据え置かれ、動詞の前には置かれない。

視者語尾・相類語尾・態詞については次項以降で説明するので、ここでは法辞と時制辞に限って説明する。

法辞は、法を表す接頭辞である。

以下に尋浦の法4つとその解説を添えて示す。

※上述の通り、従属節では直説法を用いることができないので、代わりに接続法が用いられる。その一方で、叙想法と命令法は、主文でも従属節でも使うことができる点に注意。従属節だからといって、叙想法や命令法を使うべき場面でまで接続法を使ってしまってはいけない。

時制辞は時制を表す接中辞で、下表のとおり。

なお、その脱帽文が直説法現在時制で、かつ文頭にあるならば、法辞と時制辞は省略されるのがふつうである。(着帽文では省略不可。)

例)Des sacotrytir. 私はそれを食べたい。(sacotryr = [叙想法辞-現在時制辞-cotr(食べる)-一人称単数視者語尾-Ⅱ類語尾-無相語尾])

・着帽文

従属節として用いられるほか、主文として使うと婉曲を表す。

ただし、(特に現在時制以外の時制で)文中に代名詞が含まれる場合、主文でもしばしば着帽文が使われる。

着帽文は以下のような形式をとる。

[法辞-時制辞-視者語尾] [視者] [代名詞] [動詞-相類語尾] [態詞] [その他]

この[法辞-時制辞-視者語尾]部分を帽詞という。

これが文頭に置かれることから、着帽文と呼ばれている。

ただし、帽詞は文脈上明らかな場合、省略されることもある。

視者が帽詞の後ろに置かれる点に注意されたい。

例) It des cotrir. 私は今日それを食べました。

・時制について

尋浦の時制は相対時制である。

つまり、主節の時制は発話時を基準にして決められるが、従属節の時制は主節の時制を基準にして決められる。

したがって、厳密に言うならば、時制の名称は「過去」「現在」「未来」ではなく、「前時」「当時/同時」「後時」とするべきである。

同様に、「今日過去」「今日未来」も、厳密には「当日の中での過去」「当日の中での未来」という意味である。

念のため補足しておくと、今日過去/未来の「今日」というのは、午前0時を基準とした厳密な一日ではなく、あくまで話者の認識に依るところの一日である。

・名詞節(動名詞・関係節)の作り方

着帽文の帽詞に冠詞を前置することで、その文全体を名詞節化できる。

なお、脱帽文は名詞節化できない。

着帽文は名詞節化されると、[その他]部分が[動詞-相類語尾]部分よりも前に移動する。(つまり、[動詞-相類語尾]の後ろは[態詞]だけになる。)

なお、名詞節は必ず従属節として使われるので、法は直説法以外でなければならない。

冠詞の内外は、名詞節の内容を主文の視者からみた内外に従う。

ただし、インフォーマルには十把一絡に境としてしまうことも多い。

着帽文に遊格冠詞を付けて先行詞の後ろに置けば、関係節と同じような働きをすることになる。

先行詞を受ける代名詞を関係節中に残しておくのが正式だが、省略することもある。

例) a emaj al it (des) cotrir 私が今日食べたリンゴ