特徴形・複数形と後置詞

※例外的に、後置詞「kuyu」は原形名詞と用いるか特徴形名詞と用いるかで意味が異なる。前者では「~と一緒に」、後者では「~で一緒に」を表す。例えば、「hī klay kuyu」は「二人と一緒に」、「hī klayi kuyu」は「二人で一緒に」を意味する。前者は話者の他に二人いて、後者は話者を含めて二人であるという点で意味が異なる。(なお、hīは「2」を意味する数詞。)

なお、後置詞句は原則として述語の直前に置かれる。

それ以外の位置に置かれる場合は、後置詞の後ろにkreを置くか、接尾辞-hを付けなければならない。

特徴形

名詞には特徴形がある。(属格の代わりとなる用法以外にも用法もあるが、それらは順次扱う。)

特徴形は、名詞の語幹に特徴母音と呼ばれる母音を接尾することによって作られる。

特徴母音は、語幹の最終音節の母音(語幹母音)によって決定される。その対応は以下の通り。

※特徴母音は方言差が大きく、特に語幹母音oyおよびōyに対する特徴母音は、標準語では上表の通りeだが、大多数の方言ではiである。

※越薫では発音(a/i/e/o/u)に関わらず特徴母音が全て同じ文字で表されるので、これに対応して特徴母音を統一的に「ə」と転写表記する場合もある。

例えば、「雨」を意味する「xūreh」(語幹:xūr-)の語幹母音は「ū」なので特徴母音は「u」と決まり、特徴形は「xūru」となる。

ただし、重母音・長重母音で終わる語幹は、そこからwやyを除いた短母音・長母音を語幹母音とし、それに従って特徴母音を決める必要がある。

例えば「金属」を意味する「krēweh」(語幹: krēw-)の語幹母音は「ēw」ではなく、wを除いた「ē」である。従って、特徴形は「krēwa」となる。

これは、特徴母音が付くと、語幹末のwやyが語幹の最終音節の母音の一部ではなくなり、次の音節(特徴母音の音節)の頭子音となってしまうからである。

※「mayteh(火)」(語幹: mayt-)のような語は、長母音や重母音を含んではいるもののそれらで語幹が終わっているわけではないので、語幹母音は通常通り「ay」であり、特徴形は「mayte」である。

特徴形は、名詞に前置すると属格としても使える。

例)kūnu tuybeh(私の鞄が) = kūnoy tuybeh

また、複合語を作る際、最後の形態素以外は原則として特徴形の形をとる。

しかし、この場合に限り、重母音・長重母音で終わる語幹をもつ語は、しばしば特徴母音が脱落する。

※本来、特徴形は複合語の前部要素が取る形である。したがって、分かち書きをしていても、それが係る語(本来なら複合語の後部要素)との結び付きは非常に強く、原則として、特徴形名詞とそれが係る語の間には、いかなる語も割り込むことができない。これは、特徴母音を用いる変化形(名詞の特徴形、動詞の特徴形、形容詞の副詞形)に共通する性質である。

複数形

英語などとは異なり、複数のものに対して複数形を用いるかは任意である。

複数であることを明確に示したい場合や、複数であることや数量の多いことを強調したい場合、複数形を使うほうがリズムが良い場合などに用いられる。

複数形語幹は、特徴母音を挟んでその名詞の語幹を繰り返すことによって作られる。(特徴形を自身に接頭するといってもよい。)

例えば、「人」を意味する「klay-」(辞書形:klayur)の複数形語幹は、特徴母音「i」を挟んで語幹「klay-」を繰り返し、「klayiklay-」となる。

複数形語幹はふつうの名詞語幹と同様に扱われ、「klayiklayu(人々に)」のように適宜格語尾を付けたりして用いることができる。

このような、畳音による複数は、日本語では一部の名詞に限られるが、淵薫ではあらゆる名詞をこの方法で複数形にできる。

不可算名詞であっても、量を強調する目的で複数形を使うことができる。

後置詞

後置詞は日本語の格助詞に相当する品詞である。

後置詞は、特徴形か原形の名詞の後ろに置かれる。

どちらの形であってもほとんど意味に差はないが、特徴形を取るほうが後置詞との結びつきが強い感じがあり、一般的に特徴形が多く用いられる。

例えば、「石を使って」は「woyle buru」か「woyd buru」と言う。(石:woyleh、~を使って:buru )

なお、一部の後置詞は、名詞形の述語動詞、原形の述語形容詞にも付く。

また、後置詞がなくても意味が通じる場合、後置詞が省略されて、特徴形名詞だけが置かれることもある。

後置詞句を名詞に係けるときには、後置詞の後ろに補助動詞kreを置き、その後ろに名詞を置く。

例えば「hayt(e) buru kre rawt(車を使った運搬)」のように言う。(車:hayteh、運ぶ:rawte)

ただし、母音で終わる後置詞の場合、「hayt(e) buruc rawt」のように、kreを略して-cとすることもある。

なお、このkreは、格語尾の付いた名詞を別の名詞に係けるときにも使える。

例えば、「家への道」は「sayatu kre toc」または「sayatuc toc」のように言う。(sayeh:家、tokeh:道)

以下に代表的な後置詞を挙げる。