Pixelの5G機能とは

GoogleのスマートフォンPixelシリーズでは、2020年10月にPixel 4a(5G)、Pixel 5で5Gに対応しました。この5Gについて説明します。

5Gは第5世代の通信方式

5GとはFifth Generationつまり第5世代という意味で、1980年代に初めて登場した初期の携帯電話が第一世代、1990年代にデジタルになった第2世代、2001年に始まった第3世代(ドコモはFOMAと呼んでいた)。そして、2010年代後半に一般的に使われるようになったLTEは第4世代の通信方式で2010年に始まりました。

第5世代の5Gは先進国を中心に2020年に本格的に始まりました。従来の通信方式の進化と同様に、従来より高速な通信が出来るようになったことに加えて、低レンテンシーという遅延が少なくなることが、5Gの最大の特徴です。

速度は従来の4Gが最大で1Gbps程度(実際は速くても数百Mbps)でしたが、5Gでは現行の規格上は10Gbpsの速度が出るとしています。

低レイテンシーは反応が得られるまでの時間のことで、例えばボタンを押してからその反応が来るまでの時間は短ければ短いほど良く、特にライブ配信、ゲームなどで効果が発揮されます。5Gは規格上1ms(1ミリ秒)未満となっていて、従来のLTEの1/10とされています。

一般的なパソコンで、同じ国にある近いサーバーにアクセスした場合の実際のレイテンシーは20ms程度です。本当に5Gが1msならほとんど遅延がありません。

他にも同時接続数の増大など様々な利点があります。上記のことを踏まえて、5Gは何かを簡単に言えば、今までよりも速くなって、より使いやすくなる通信方式です。

5Gで利用する電波

5Gで利用する電波は従来のLTEの周波数帯に加えて、5G用に新規に割り当てられた周波数帯があります。

新規に割り当てられた6GHzまでの周波数帯の5G NR(New Redio)は、従来使われていた周波数帯のFrequency Range 1(FR1)と、約24GHzから52GHzまでのミリ波(mmWave)のFrequency Range 2(FR2)の2種類があります。

ミリ波は周波数の特性からエリアが限られてしまうので、ミリ波を使える状況にした上で、6GHzまでのSub-6と呼ばれる5G NRを中心に、4Gで使われていた周波数帯も5Gで利用出来るようにする流れのようです。

今まで4GのLTEで使われていた周波数帯は、完全に切り替える事無く4Gと5Gをそのまま使う事も可能で、この技術はDynamic Spectrum Sharing(DSS)と呼ばれています。この技術は後述の5G NSAで使われています。

5G対応のスマートフォンとは

Pixelシリーズを始めとして2020年以降に登場するスマートフォンの多くは5Gに対応しています。

5Gに対応するスマートフォンは、5Gでしか使えないわけではなく、従来の4G LTE、3G、2Gに対応するのが一般的です。

Pixelシリーズも、2GのGSMから、3G、4GのLTEにも対応しています。

例えばPixel 5を持って、海外に行った場合に4Gどころか、2Gにしか対応していない地域がもしあったとしても、2GのGSM機能で接続が出来ます。

もちろん日本などで2020年現在ほとんどの地域で使える4G LTEにもそのまま接続出来ます。

5Gの中でも5G SAや5G NSAがあります。これのSAはStandAloneの略で、NSAはNon StandAloneの事です。
5G開始当初は4Gの技術も使って5Gを実現しており、これを5G NSAと言います。なんちゃって5Gと言われているのが、NSAをつかった5Gです。これを実現しているのが前述したDSSです。

5G SAでは5G世代の技術だけで5Gのサービスを提供し、通信会社の中でより高度な5Gの利用が出来るようになります。端末側でも5G SAで使える機能がありますが、ユーザーにはほとんど関係ありません。

5G機能を使うには5Gの契約が必要

多くのスマートフォンがそうであるように、スマートフォンは通信会社と契約しているSIMカードを挿せば通信サービスが利用出来ます。

5G対応のPixelなどで5G機能を使うには5Gの契約をしたSIMカードが必要です。4G契約のSIMカードを5G対応のPixelに差しても5G機能は使えません。もちろん4G契約の場合は3Gも使えるので、4Gや3Gの通信は問題なく利用出来ます。

5G対応のスマートフォンを利用する場合は、利用している通信会社に相談して5Gの契約に変更することを検討してください。

通信会社によっては4G契約のSIMを5G対応のスマートフォンに差しても通信機能は使えない場合があります。例えば、auの4G対応SIMカードをPixel 5に差しても通信機能は利用出来ないそうです。

Pixelの5G対応状況詳細 https://support.google.com/pixelphone/answer/10082009

とはいえ5Gのエリアが狭すぎる

2020年から本格的に始まった5Gですが、残念ながら利用出来るエリアがかなり限られています。

東京の23区内でしか使えないというレベルではなく、○○駅の前、○○ショッピングセンターのような、スポット単位でのエリア拡充が主で、ほとんどの地域では5Gが利用出来ません。

これには5Gが利用する新しい電波の影響があります。この新しい電波のことを5G NR(5G New Radio)と言います。

5Gでは従来より高い周波数帯を利用しますが、周波数は高くなると建物の隙間等に電波が届きづらくなるなど、新しい周波数の特性など多くの課題が山積しているためエリアの拡充に時間がかかっています。

5G対応スマートフォンを購入し、5G契約をしても5Gのエリアがほとんど無いため、2020年から2021年初め頃までは本来の性能を発揮できないと思われます。

5Gの特徴の超高速通信が本格的に使えるようになるのは当分先

5Gが利用出来るエリアでは従来よりも高速な通信が利用出来ますが、通信会社等が前宣伝していたような超高速通信(10Gbps)などを生かすにはミリ波(mmWave)が欠かせません。

5Gが高速なのは5G NR(New Radio)と呼ばれるより高い周波数の電波を使う事が最も影響しています。5Gは世界的にSub-6(サブ6)という6GHz以下の携帯電話で新しく使われるの周波数帯を中心に展開されていますが、スペック上の最高速度を出すには30GHz程度のミリ波を利用する必要があります。

問題はこのミリ波を使えるスマートフォンが限られているという事です。

5G対応のスマートフォンは数多く発表されていますが、その中でミリ波に対応するのは一部で、機種によっては一部地域で販売するモデルにのみミリ波に対応する場合があります。

Pixel 5、Pixel 4a(5G)のミリ波対応もアメリカ市場で販売されるモデルのみでの対応です。

Pixelでミリ波に対応するのは、Pixel 5の場合はアメリカで販売されるGD1YQ、Pixel 4a(5G)はアメリカのVerizonモデルのG6QU3のみです。(2020年10月現在)

Pixelの技術仕様 https://support.google.com/pixelphone/answer/7158570

他のモデルにはハードウェア的に5G機能が入っていないそうです。

このような対応は2020年現在一般的で、アップルのiPhone 12シリーズもアメリカで販売されるモデルのみミリ波にハードウェアで対応しています。

なぜアメリカのモデルのみがミリ波に対応するか

PixelやiPhoneなど、2020年に発売された5G対応スマートフォンでは、アメリカで販売されるモデルにのみミリ波(mmWave)に対応しています。

これはアメリカのAT&TとVerizonという二大通信会社のうちの特にVerizonがミリ波を強力に推し進めている事が原因と予想されます。ちなみにSprintと統合するT-Mobileは統合しても三位です。

Verizonはミリ波を5G Ultra Wideband、それ以外の5G NR以外も含めた5G対応バンド(LTEと共用するDSS)を5G Nationwideとして展開し、前者で速度を、後者でエリアを獲得する方針のようです。Verizonは2020年前半まで5G Ultra Widebandを強力に推進していました。

このため、2020年に販売したアメリカで販売する主要なモデルではミリ波に対応しました。これ以降、ミリ波の対応の技術開発が進み、2021年頃のモデルからミリ波の対応も広まることが予想されます。

2023年春頃からの5G通信でのバッテリー問題

2023年春頃からPixelシリーズでバッテリー消費が急に激しくなる減少が発生しています。

一部のアプリの問題もあったようですが、5G通信時のバッテリー消費が極端に多くなる現象が発生しているようです。

例えば、5G通信を設定した状態で、フル充電後、12時間程度待ち受け状態で放置しているだけでも、バッテリーが50%程度になる場合は、5G通信での問題と思われます。

5Gによるバッテリー消費量の調べ方
優先ネットワークの種類を5Gに設定した場合と、4Gにした場合を比べます。

この問題はGoogleがアップデートするまで解消されません。

2023年5月現在問題は継続中