投稿日: Feb 15, 2015 5:29:41 AM
こんにちは。春の陽気の中、思わず「まるで夏みたいだな」とひとりごちてしまうような日が三日に一回はある今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。ご紹介にあずかりました、レッドこと江崎俊介です。僕はといえば夏に向けて頭も丸め、これから心機一転四回生としての義務を更に果たしていこうと決意を新たにしております。
さて、僕は理学部に所属していることもあり、今学期から研究室に配属させていただくこととなりました。僕の所属する研究室は自然人類学研究室といって、人類はどのように進化してきたのか?というテーマについて、人や類人猿の化石の調査を通じ考えていこうという場所です。これまでの大学の講義とは違い、ある目標に向かって積極的に研究していく雰囲気を目の当たりにしこんな世界もあるのかと驚いています。
今回はそんな研究室の紹介で参加したある講演について書かせていただこうかと思います。
その講演では東京大学人類生態学教室、梅崎先生という方が「パプニューギニアの高地人がサツマイモを食べて筋肉質なのはなぜか?」というテーマでお話をしてくれました。食事にものすごくストイックな制限をかけるアスリートがいる一方で、サツマイモしか食べていないパプアニューギニア人が筋肉質な肉体を手に入れているのは一体なぜなのだろうかと思い、興味を持ちました。先生が調査された部族の人々は食事の大部分をサツマイモに頼っていて、実際一日に摂取するタンパク質の量はほとんどの人が50g以下だったそうです。これは日本人の食事摂取基準から言っても少ないです。そこで先生がされている研究は次のようなものでした。まず、人間という生物は筋肉を合成するためには窒素が必要であり、タンパク質が欠乏している状態では窒素不足のために筋肉が発達しません。ということはパプアニューギニアの高地人たちは、食べ物以外のどこかから窒素を吸収しているにちがいないということです。そこで先生が目を付けたのは「大腸」です。大腸に存在する窒素は、尿素が分解されてできるアンモニアと、ヒトが無意識に呑み込んでしまった空気に含まれる窒素の二種類があります。しかし、通常それらは大腸では吸収されずにそのまま排出されていきます。先生は彼らの大腸には我々と異なる腸内細菌が生息しており、そしてその細菌がアンモニアや窒素をもう一度分解(窒素固定)し、宿主に再吸収させているのではないか、普通の人なら捨てるはずだった窒素を再利用することで窒素吸収効率を高めているのではないだろうかと考えています。そもそも人間の腸内細菌というのは、病原性細菌以外の菌についてあまり研究がなされていません。そのような特殊な細菌を大腸内に保持する人間がいてもおかしくはないのです。先生が彼らの糞便を持ち帰って日本人のものと比較したところ、ある種類の細菌数などで多くの違いが見出されたそうです。ただし、その糞便の中に窒素固定が可能な細菌はまだ見つかっていません。したがってこの仮説が正しいかどうかはまだわかりません。しかし、この低たんぱく状態に適応しているメカニズムがわかれば、現代人がより効率よくタンパク質を吸収できる方法が見つかるかもしれません。例えば、ある座薬を入れれば…というような。
「就職無理学部」とも呼ばれる理学部ですが、このように非常に面白い研究ともリンクしたことを研究する学部でもあります。少しでも多くの方に興味を持っていただけると嬉しいなと思って今回の日記を書きました。読んでいただいてありがとうございました。
次の日記はATとしても、キャプテンとしてもチームを引っ張ってくれている、#5ずし君です。彼の熱い言葉に耳を傾けましょう。