秋田県 教職員が実感できる多忙化防止計画について

(計画と令和3年度検証結果)

 秋田県は「2021教職員が実感できる多忙化防止計画」を策定し、実施しています。私たち高教組はこの計画が実効性のあるものとするよう要求し続けています。

 ここでは、2022年に公表された令和3年度の検証結果を見てみましょう。

2021教職員が実感できる多忙化防止計画 (6).pdf
【R4.8.3修正】多忙化防止計画検証結果(令和3年度) (2).pdf

1.全校種共通として「全教職員の時間外在校等時間を月45時間以内、1年間で360時間以内とする」

月当たり平均時間外在校等時間は次の通りです。

小学校:33.5時間、中学校:48.4時間、高校:39.1時間、特別支援学校:22.6時間

②0~45時間以内の目標達成率(月当たりの時間外在校等時間)は次のようになっています。

小学校:75%、中学校:49%、高校:66%、特別支援学校:93%

③45時間超の割合を合計すると、次のような数字です。

小学校:25%、中学校:51%、高校:34%、特別支援学校:

④ただし、年間で360時間を超えた人数の割合はそれぞれ次の通りです。

小学校:55%、中学校:78%、高校:57%、特別支援学校:18


皆さんから見て、これらの数字は納得のいくものですか?

時間管理・時間意識の徹底と教職員の健康維持

①時間管理・時間意識の徹底について

○県立学校では、令和3年度からICカードによる出退勤管理を導入し、職員に対して時間管理意識の徹底を図った。

もちろん、働く側である教員の意識改革も必要なことはあるでしょう。しかし、これが多忙化防止の策として1番最初に挙がるのは疑問です。

○各学校において最終退勤時刻を設定し、早期退勤の習慣化を図るとともに、閉庁日を設け、連続した長期間の休暇取得を容易にした

業務が多いことによって「早期退勤の習慣化を図る」ということができない状況ですから、困っています。「閉庁日を設け、連続した長期間の休暇取得を容易にした」ことについて、閉庁日を設定したことに一定の評価はできますが、労働者の権利である休暇の取得を強いることは問題です。

○勤務時間外における保護者や外部からの問い合わせ等に対する教職員の心理的負担を軽減するため、各学校の必要性に応じて、留守番電話等の設置を推進した。

▲令和3年度から、全ての県立学校で週1日以上の「ノー残業デー」を設定することとしていたが、設定した県立学校は78%であった。(全65校中、未設定14校)

「ノー残業デーを設定していないのは何故なのか」「実施している学校でもノー残業デーのデメリットはないか」こういったことを調査・研究し改善に繋げていくことが検証ではないでしょうか。


②教職員の健康維持について

○ストレスチェックの受検率は97%、うち高ストレス者率は9%、面接指導申出率は5%であった。

○労働安全衛生法に基づき教職員の適正な勤務と健康を確保するよう、ストレスチェックや健康管理医等による面談等メンタルヘルス対策を実施し、教職員の心と体の健康増進に努めた。

【対応方針】

・県立学校において、ICカードによる出退勤管理や「ノー残業デー」の設定等により時間管理・時間意識を徹底させるとともに、市町村教育委員会に対しても機会を捉えて、その徹底を働きかける。

この対応方針では「時間管理・時間意識を徹底できていないのだから、教職員が徹底するように」指導されるに留まるおそれがあります。また、休暇を取得しやすい環境の整備、休暇制度の周知の他、メンタルヘルスに不調を訴えた教職員に対する支援などの対応方針が示されていないことは、大きな問題です。

業務改善

○コロナ禍であるという状況も要因となり、真に必要な会議、業務等を取捨選択する機会が多くなった。

○ICT機器を活用したオンライン会議の実施等により、会議に要する時間の短縮が進んだ。

【対応方針】

・各県立学校での業務改善計画の作成・計画推進を促す。

・市町村教育委員会に対しては、各学校で作成する業務改善計画等を基に、更なる業務改善を進めるよう働きかける。


この点に関しては大きな、大きな問題があります。そもそも計画では次のようなことが記載されています。

「会議・研修の見直し:各種会議や研修会について、業務の見直しを行い、効率化を図ります。

「全県市町村教育委員会教育長会議等の開催:県内25市町村の教育委員会が教職員の多忙化に関する危機感、防止対策の重要性を共通に理解することが重要です。」

各学校における業務改善の優良事例を、市町村教育委員会、教育事務所、県教育委員会が把握し、校長会等を通じて全県へ発信、情報共有することで、自校の取組に生かしていきます。教職員の業務補助を目的として小学校に配置するサポート・スタッフの勤務状況や配置に伴う教職員の負担軽減状況を調査し、その結果を全県へ情報発信していきます。」

「業務改善には管理職のマネジメント能力の向上が必要不可欠であることから、時間管理、健康管理などの要素を盛り込んだ研修により、管理職のマネジメント力を強化します。管理職を対象に、異業種の業務改善も参考としたマネジメント力強化研修を行い、業務改善の取組に生かします」

もちろん、3年間を掛けて実施されているものであることは確かですが、今回の検証ではこの一部を検証し対応方針をあげているにすぎません。

部活動指導の負担軽減

①部活動指導時間等について

○県教育委員会の「運動部活動運営・指導の手引」に基づき、各学校では部活動休養日を設定している。

▲月当たり時間外在校等時間が45時間を超えた割合は、小学校・特別支援学校と比較して、中学校・高校が高く、部活動指導が長時間勤務の大きな要因となっていると考えられる。

▲県立高校教職員の「多忙化を感じる原因」の第1位は部活動指導であり、教職員からは、強豪校の部活動だと休養を取りにくい、大会が近づくと休養日の設定が困難になり活動時間も長くなる、等の声が聞かれた。

②外部人材の活用について

○全県で37名の部活動指導員を配置した結果、教職員の時間的、心理的負担の軽減につながった。

【対応方針】

・部活動指導員について、令和4年度は、12市1県立中学校に68名の配置を予定しており、更なる負担軽減を図る。

・指導者の確保が困難との課題については、各市町村教育委員会の「指導者リスト」の作成を支援し、リストを近隣の市町村で共有し有効活用できるシステムを構築する。


課題となっていることと、対応方針が連動していない部分もあることが見て取れます。部活動にはある種の教育的効果があることは確かです。しかし、それによって育児等に大きな負担がかかったり、心身に不調をきたしてしまう教職員がいることもまた事実です。本当の対応策とは、そういった課題を抜本的に改善することなのではないでしょうか。全教ではこうした部活動のもつ課題について、シンポジウムなどを通じ、「部活動指導に従事する(できる)教員」と「部活動指導には従事しない教員」が両立できることが必要なのではないか、との考え方から、教職員の増員を求める方針です。ただし、県単位で喫緊の課題となっているこのことについては、今後も引き続き検討が必要です。

事務機能の強化や外部人材等の活用

○県立学校への統合型校務支援システム構築の導入を事業化した(令和4年度に導入、研修、5年度から本格稼働予定)。

県はこのシステムを導入することで、かなりの効果があると見込んでいます。しかし、現状各校ではそのシステムの把握に時間がかかっており、十分な運用ができるまではまだ先になると思われます。また、担当する教員の負担が問題となっています。

○スクールカウンセラーを106校に38名、スクールソーシャルワーカーを県内5か所に10名配置する等、専門性を有する外部人材の活用により、教職員の負担軽減を図った。

SCは月に1度の来校となっており、常駐というわけではありません。専門性を有する外部人材の活用というのであれば、これらの充実のほか、図書司書の継続配置、特別支援等の専門家配置を積極的に行うべきです。

○コロナ禍に対応した学校サポーターを117校に79名配置する等、感染症対策に係る教職員の業務を軽減しつつ、感染・拡大防止に努めた。

【対応方針】

・学校や市町村教育委員会等の要望を踏まえ、関係機関と連携して、引き続き、外部人材の配置を拡充する。

そのための予算措置を小学校、中学校のみならず、高等学校へも十分にすることが必要です。

秋田高教組は県教育長交渉をはじめとする各種交渉において、教職員の長時間過密労働の解消のために具体的な方策をおこなうよう、求め続けています。重要なことは、業務の改善・効率化は、必ずしも業務量の減少・平準化につながるとは言えない、ということです。秋田県がおこなっている教育施策の見直しをしたり、国や文科省が施策を見直すことがなければ、この状況が変わることはないのではないでしょうか。また、各校管理職が適切な配慮やマネジメントをすることも重要です。

こうした要求を続けていくためには、みなさんから現場の実態を教えていただき、声をあげていくことが必要です。

秋田県の教育が「持続可能で充実した」ものとなるよう、高校統合・生徒数減による教員の充足に期待するのではなく、教員の生活を犠牲にすることもない職場環境づくりを求めていきましょう。