学習指導要領の変遷や現行指導要領の内容は、教員採用試験の教職教養でも必須項目で、現在の学校教育のいわば基準となっているものです。これに対しての賛否はありますが、簡単に変遷を振り返るとともに、2024年12月25日文部科学省が中教審に諮問した次期指導要領についても見ていきましょう。
※記載年は小学校指導要領告示年。
1947年 試案
1951年 一部改正(初版の整理)
1958年 告示とされる(教育課程の最低基準)
1968年 改訂(学習内容、量の増加)
1977年 改訂(ゆとり、標準時数削減)
1989年 改訂(新学力観)
1998年 改訂(生きる力、完全週5日制、総合的な学習の時間)
2003年 一部改正(確かな学力、個に応じた指導)
2008年 改訂(生きる力、知識・技能の習得など、言語活動の充実、授業時数30年ぶりに増)
2015年 一部改正(道徳教科化)
2017年 改訂(主体的・対話的で深い学び、3観点)
改訂に当たってはいわゆる有識者等の集まる中教審の各部会で議論がされます。課題としては、「政権与党の方針が色濃く反映されるため場合によっては大きな転換となること」「実務者レベルの委員(現職教員等)がほぼいないため、実態と乖離するケースもあり得ること」などがあげられます。ただ、授業を実施するにあたり、読まないわけにはいかない感じです。
※文部科学大臣の諮問⇒中教審の各部会で議論⇒審議のまとめの公表⇒パブコメ募集⇒中教審の答申を公表⇒指導要領改訂案の公表⇒パブコメ⇒新学習指導要領(文部科学大臣告示)公示
2024年12月25日、文部科学大臣は中教審に対して次期学習指導要領について諮問しました。多くの報道機関が報じていますが、前日の財務省折衝と合わせて、話題になっていると判断したのでしょう。掲載4記事をまとめると次のようなことが報じられています。
授業時間の短縮検討: 小学校の授業時間を現行の45分から40分に、中学校では50分から45分に短縮することを検討。
柔軟な時間活用の導入: 短縮された時間を学校や教育委員会が柔軟に活用できる仕組みを導入し、多様な個性や背景を持つ児童生徒に対応した教育の質の向上や、教員の負担軽減を図る狙い。
学習内容の弾力性強化: 学年ごとの学習内容に弾力性を持たせ、生成AI(人工知能)の発展を見据えた教育内容の充実や、情報モラル・メディアリテラシーの育成強化を検討。
子どもの声の反映: 今回初めての試みとして、学ぶ側の子どもたちの声を審議に反映させるため、小学生から高校生を対象にオンラインなどでの聞き取りを実施予定。
改訂スケジュール: 2026年度中の答申を目指し、改訂に向けた答申などを経て、小学校では2030年度に全面実施されることが想定。
教科書の分量や授業時数の見直し: 教科書の分量や年間の標準総授業時数(コマ数)の見直しも検討項目に含まれている。
これらの改訂は、時代の変化に対応し、子どもたちが主体的に学ぶ力を育成することを目的としています。
※このまとめはchatgptを使用してまとめたものです。
3のまとめからどういったことが盛り込まれるのかを検証し、懸念も合わせて考えてみます。
授業時間の短縮検討と柔軟な時間活用の導入は渋谷区の午後探究のような使い方を想定しているものと考えられます。
学習内容の弾力性強化では、当該年次の学習を別の年次に実施することができるようにすることも考えられているようです。が、それに対応する教員は?となると思います。情報関連の教育内容の充実、情報モラル・メディアリテラシーの育成強化も、担当教員が現状のままだと苦しい学校経営が続くでしょう。
子どもの声の反映をさせるため、小学生から高校生を対象にオンラインなどでの聞き取りを実施予定なのは、大きな一歩だと思います。個人的には、コミュニティスクールに生徒の参加を促すことに賛成です。やりかたは思案しなければなりませんが。
教科書の分量や授業時数の見直しは、現在の総量を増やさない(変えない)方向で進められると思います。
5 課題
現在の学習指導要領は週6日制のときと同等の授業数で、週5日でそれをやろうとしているのですから、無理が来るのは当然です。というか、そのときに何故そう言った話にならなかったのかと疑問になります。というか、なったんです。それが「土曜授業」を行うことなんです。2010年代、文科省は調査をしていまして、「土曜授業が求められているので、やりやすいように支援する」方向性を打ち出していました。そもそも学校週5日制がはじまったその当初から、週5日制の見直しが検討されていました。これは自民党、民主党いずれの政権下でも同様です。明らかに授業時数を増やしたあたりから苦しさが増してきたのは事実だと思います。
次に、今のような学習方法にかわる前、表層的な学力というものは至極わかりやすいものだったと思います。しかし、今はこどもたちの主体的な学び、協働的な学び、思考、表現、学びに向かう力などなど、一見して測りがたい学力が求めれらているように感じます。
また、島根県知事のご意見は至極真っ当だろうと思います。国などからの制約が緩くなり、「学校裁量でできるようになる」というのはとてもいいことのように聞こえるのですが、それを実行する学校はわずか、だと思います。小中でも高校でも特支でも、どの校種でも、校長と教職員が「スタンダード」もしくは「ベーシック」から大きく異なることをやるのはリスキーだからです。「こんなことができるんだよ(笑顔)!」と事例を共有しても、おいそれと手を出せないのではないでしょうか。
採用試験、初任者研修、研究授業など、ことあるごとに指導要領や解説、その他資料を目にすることは多いと思います。よく言われるように、改訂ごとに冊子が厚くなっていく状態です。
新型コロナ禍は色々なものが停滞したのと同時に、色々なものを急速に進行させました。次の改訂における情報教育の進展はこれの延長線上にあります。おそらく多くの大人たちの頭には「?」マークが浮かび、教員にとってもそれを理解して噛みくだくことが大事になってきます。教員にとっていま必要な時間とは、「子どもたちが学ぶ事柄(教科に関してはプロですので、それ以外や付随する事柄)をじっくり噛みくだく時間」なのではないかとも思うのです。
次期指導要領改訂がそういった時間的、人的余裕が持てるものになることを期待したい、かな。