秋田県 教職員が実感できる多忙化防止計画について

(令和4年度検証結果)

「2021 教職員が実感できる多忙化防止計画」の令和4年度の検証結果が公表されました。これは、秋田県教育委員会(いわゆる教育委員に秋田県教育庁がやっている事務的なことを審議したり、報告されたりします)に資料として提出され、報告されたものです。昨年度のものも見ながら、検証してみます。

これらを検証し、私たちのとりくみに生かしましょう!

そのために、多くのみなさんの力を集めましょう!

令和3年度の検証結果

【R4.8.3修正】多忙化防止計画検証結果(令和3年度) (2).pdf

令和4年度の検証結果

「2021教職員が実感できる多忙化防止計画」検証結果(令和4年度).pdf

★本計画の目標『全教職員の時間外在校等時間を月45時間以内、1年間で360時間以内とする。※月当たりの時間外在校等時間数が80時間を超える教職員の割合を令和5年度までにゼロにする』

 この目標を達成するためには、全校種でいえば、月当たり時間外在校等時間が45時間超の教職員はおおよそ全体の30%であり、この30%を45時間以内におさめなければなりません。さらに言えば、年間時間外在校等時間が360時間を超えた人数が、教職員全体の約半数(58%)に上ることを考えると、これを全て360時間以内にするということ「月当たりの時間外在校等時間が80時間超の教職員の割合を2023年度までにゼロにする」ことも、事実上不可能でしょう。

 総じてこの結果から思ったことは、

 全ての生徒に対して「個別最適な学び」と「協働的な学び」を含めたあらゆる指導を「きめ細やかに」おこなうために、教職員数を増やしてもらいたいこと。

 全ての教職員が県の目標にある数字を達成するためには、劇薬とはいわないまでも、かなり抜本的な改善策が必要だということ

(以下は対応方針等に対して、個別に思ったことです)

 ①「可能な限り定時で帰校(退勤を意味すると思われる)する意識を職員に持たせるよう、校長会議等を通して学校へ働きかける」という対応方針について。確かに、必ずしも的を得ていないとは言い切れませんが、早稲田大学の油布佐和子教授は以前に比べると教員にはきめ細やかな対応や指導が求められています。このような状況の中で、勤務時間を厳守するような改善策が提唱されれば、仕事を持ち帰るか、あるいは、在校時間内で、活動の過密化を招くしか方法はありません」と述べています。 全く同感です

 ②学校衛生委員会やそれに類するものが十分に機能している必要があります。いわゆる管理的立場にある方が「安全配慮義務」を有することは、判例からも明らかになっています。未だこれだけの長時間労働となっているのは、それが十分に果たされていないことのあらわれです。各校管理職が不断の努力でこれを達成しようとしてもできない状況(もはやその学校では人員に対する業務量が過多で、場合によっては代替人員も補充されない状況)であるならば、所管する県教育委員会が責任を持つべきであり、それでも達成できないのであれば、国全体の問題として県が国に対して強く改善要求すべきです。仮に教職員定数内に教諭や臨時講師を充てることができず、非常勤講師を配置することや現状の教員数で耐えてほしいというのであれば、教育委員会が直接その学校に行って現在の状況を説明するくらいはしてほしいし、講師探しを各学校に求めないでほしい。

ちなみに秋田県で、教職員定数を充足できない、または代替の講師を充てられず、非常勤講師の配置や未配置がある高等学校は10校を超えています)

 ③統合型校務支援システムは確かに一定の業務効率化をもたらします。例えば、異動しても同様のシステムを使用できることはその一つであり、これまでこういったデジタル化されたシステムをほとんど使用してこなかった職場においては、便利さを感じるものともいえます(マンガ・パトレイバーのHOSみたいなものかなー)。そもそもこの校務支援システムを大雑把にいえば、「業務系・学習系サーバーも含め、これまでそれぞれの学校、それぞれの校務分掌で使用してきたソフトウェア(アプリケーション)の規格を統一して、機能を集約したもの」と思います。つまり、多くの学校ではそれまでも同じことを別のソフトでやっていたのではないでしょうか。機能を1つのアプリケーションに集約することは、効率化という観点では、それぞれのソフトウェア(アプリケーション)・フォルダ・ファイル・各種データ等にアクセスする手間が省けるし、ある程度使用する様式が統一されるほか、国や県が様々な調査をおこなうにあたって積極的にこのシステムを活用できれば、それは効率化されたと言って差しつかえないと思います

 しかし、これが「子どもたちと向き合う時間の確保」に繋がるほど、時間的・業務的余裕を生み出すものなのか、実際に運用した上での検証が必要だろうし、教職員の実感と生の声を汲み上げる必要があります。総括において、「一時的に業務量が増える可能性もある」とあるが、可能性ではなくすでに現実に起きており、導入段階のこのときに、各校システム担当者がどれほど難儀をしているのかを把握していないように見えるのは残念です。教職員の操作習熟も進むと思いますが、システム管理やマスタ設定、様式変更などを同僚教員の要望に応じて柔軟にでき、何をどうすればよいか指示することのできる教員を各学校に1人ずつ配置することができるのでしょうか。高校においては課程や学科の違い、各校それぞれの教育課程も異なっているし、学校ごとに出力様式が異なることもあります。それが年単位で変更されたときにカスタマイズできなければなりません。

 ④(※はじめに断っておきますが、中の人は部活動自体は否定していません。自分自身、部活動が高校選択の要素でしたし、それが人生に大きな影響を与えたことはまぎれもない事実だからです。ですが、このままのやり方でよいとも思っていません。何らかの変化が必要だと考えています。

 部活動はすでに大きな話題のひとつです。現時点で中学校部活動の地域移行については、ある程度進行していると思いますが、高校においてはさほど広がっていません。参考値として、令和3年実績の数値が掲載されています。これは新型コロナ禍での数値なので、記載されている通り「参考値」としてみるのが適切でしょう。部活動が教員にとってどのような業務として判断されるかについては、富山県滑川市の裁判について東洋経済education✕ICTの記事をリンクします(部活動などが原因「教師の過労死」の責任は誰に、富山地裁8300万円賠償命令滑川市・中学校教員の裁判から学ぶべきことhttps://toyokeizai.net/articles/-/687825 )。ぜひお読みいただきたい。

 部活動に限ったことではありませんが、「校長会等で周知徹底(働きかけ、連絡等)しています」だけでは、②にあるような責任を果たしているとは言えません。そもそもこういったことが起こる前に、教職員の労働環境を見極めて采配するのが任命権者を含む管理職の役目ではないでしょうか。部活動(というか自分が望むこと、力を発揮できること)をやろうとする「生徒の意思を尊重しながらも、教職員の労働環境に対して安全配慮を怠らない」ことが当たり前であってほしいし、切に願います。

 現在進行中の中学校の部活動地域移行についてはひとつだけ。休日の部活動が地域移行されても、教員が結局は休日出勤して仕事しているのであれば、意味合いが変わります。

 ⑤実は学校事務職員にも欠員が生じています。結果、旅費支給や各種実務が大変な学校もあるのが事実です。教員が担っている仕事を事務職員に「まわす」こともよく議論されるし、実際におこなわれているところもあります。確かに事務職員に担ってもらうべき業務もあると思いますが、安易にこれをやりすぎると、今度は事務職員の労働環境悪化となります学校現業職員(技師さんたちにはほんとにお世話になってます)については、秋田県は民間委託というかたちをとっていないので、一定の評価はできますが、人的不足や夏季の労働環境などの改善を図る必要があります。

 ⑥スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、もっと言えばスクールロイヤーなども、より適切な処遇、待遇ですべての学校に配置することを要求したいです。