校務分掌と聞いても、ピンとこない方が多いと思います。すでに学校勤務を経験されている方であれば、正規教員であれ講師であれ理解することは容易いですが、一般の方がこのことを知ると、「えっ?」と驚かれるのではないでしょうか。
wikiには次のように書かれています。
https://ja.wikipedia.org/wiki/校務分掌
校務分掌(こうむぶんしょう)とは、学校内における運営上必要な業務分担である。業務分担のために編制された組織系統を指すこともある。児童・生徒の生活・進路の指導や時間割の作成、保護者団体や同窓会など外部団体との交渉・調整などについて、それぞれを担当する分掌組織が中心となって業務を行う。
先日教育新聞の記事で「学校安全の新たな職と適切な処遇を検討」というものがありました。文科省の来年度概算要求では「中学校の生徒指導担当教員配置」にも言及されています。今現在も学校ではこうした内容の業務について、おそらく○○部(○○主任)が設定されているものと思われます。
総務、教務、生徒指導、特別活動、進路指導、保健、図書視聴覚、情報、研修、事務(これは事務職員の方)などなど、多岐に渡ります。
また、担任や学年部、部活動も校務分掌として取り扱われることがほとんどです(例外はあるそうですが)。
それぞれの部署に、その部署を統括する「主任(部長等)」に相当する方がいます。
校務分掌は各教員に割り振られます。これは臨時講師であろうと変わりません。また(高校では学校設置の学科にもよりますが)、1学年1~4学級規模の学校であれば、校務分掌が1人の教員に対して2~4つ付けられることがあります。
例を挙げれば、1人の方に担任(学年部)、部活動顧問、教務部、特別活動部などのように割り振られる場合もあります。
一般行政職や企業の場合も、複数のプロジェクトにまたがってアサインされることはあると思いますが、「営業部(課)」に所属している人が「庶務部(課)」も兼任することは、(小さな事業所を除けば)ほとんどないと思います。
加えて、教員の場合は授業がメインであると言われますから、当然、○○科教科担任としての業務もあるわけです。
もちろん、各部署の主任となっている先生が他の分掌の部員になることもあります。また、学校教育法施行規則などの法令等によって「この主任、主事を置くこと」とされているものがあります。
「総務、教務、生徒指導、特別活動、進路指導、保健、図書視聴覚、情報、研修、担任(学年部)、部活動」の分掌があるとして考えます。
(高校の場合)仮に学年部や部活動を考慮しない9分掌で考えた場合、一つの分掌に3~5人が配置されます。そのうちの一人が主任クラスになります。それに加えて、担任(学年部)は12クラスあれば12名の担任、3人の学年主任が必須になります。また、部活動顧問となればそれに加わります。複数顧問制とうたっている場合、もれなく顧問になることがほとんどでしょう。
分掌の数やそれぞれの人数などは学校によって大きく異なりますので一概には言えませんが、学校の校務分掌は「複数分掌を兼ねることが通常である」と考えてよいです。
総合職が多い日本の行政職の方が複数年かけて色んな部署をまわり経験(ジョブローテーション)することを、学校では1年の中で複数部署を経験することになる、という見方もできます。
5 記事にある懸念
文科省が言う「生徒指導担当教員」や今回の学校安全を担当する教員を新たな職として任用した場合、記事内でも指摘されていますが、十中八九、「今いる教職員数内で割り振る」ことが考えられます。
とはいえ、この学校安全の中核を担う教職員の新たな職について、「過度な負担にならないよう留意した上で役割を分担し、校内組織体制の整備・充実を図る」とわざわざ記載していますが、それが実行されるかどうかはかなり疑わしいと思います。現実的にこれができる学校があるとすれば、十分な人員が配置されていると思います(学校規模の議論になると、統合云々になりますので苦しいところですが)。
現状は上記のような感じですが、教職員が協力してなんとかまわしているという状態です。とはいえ、それぞれの分掌を一人の教員がやらなければならない、ということではありませんので、そうした協力体制をつくることが重要です。どうしても「できるひと、やってくれるひと」が中心になることは否めませんが、それだけになってしまうと、将来的なことを考えたときに怖い面もあります。教職員は当然、人事異動がありますので、そうした人が抜けたときに「あれどうするんだっけ」が頻発しないようにしなければなりません。これは管理職にもいえることだと思います。