2024年7月26日、文部科学省中教審「質の高い教師の確保」特別部会の第14回が開催されました。
答申案及びその他資料は次のURLから取得できます。
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/099/siryo/mext_00022.html
当日傍聴した結果の記事をいくつかリンクします。
https://www.dokyoso.jp/archives/3254(発言内容あり。道教組)
https://www.kyoiku-press.com/post-282456/(日本教育新聞)
https://www.kyobun.co.jp/article/2024072601(教育新聞)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240726/k10014525651000.html(NHK)
報道機関による記事によりますと、
「勤務時間管理は服務監督教委と校長に求められており、答申案では校長の注意義務について、これまでの裁判例にも触れて説明。働き方改革施策で目標を設定するに当たっては在校等時間関連だけでなく、メンタルヘルス関連など多面的な目標を設けることを求めている」
「学校管理職によるマネジメントについて、時間外在校等時間が特に多い教員に対し、校長が改善策を最優先で講じることが必要だと明記」
「服務監督教育委員会には長時間労働が常態化している学校への個別支援を求めるなど、管理職のマネジメント力向上に向けた取り組みを審議まとめよりも強く訴えている」
といったことが記載されています。これができる校長等管理職は、極めて少数だろうと思います。教育委員会も同様です。なぜなら、こうしたことを考えながらも、今現状の学校運営を行っていくためにはやむを得ないだろうという考え方になっていると思われるからです。そもそも、一般的に服務監督者はこれをしていなければならなかったはずですが、わざわざこうしたところに大々的に述べられていることから、その意識を持つことがこれまでいかに希薄だったかが伺えます。ただし、これは学校だけでなく、公務全般に言えることなのかもしれません。
人事考課や労務管理について、学校という職場でどのように行われるのが妥当かということが「校長のリーダーシップ、管理職のマネジメント能力」に集約されているのは、あまりにも気の毒、とも言えます。人事考課や労務管理等に触れることがあまりにも少ない状況で管理職になる方もいるのではないでしょうか。今までイチ社員(なんらかのリーダー経験はあるとしても)だった方が、突然何十人もの部下の労務管理と言われても辛いのでは。もちろん、こうしたことをソツなく実施できる管理職のみなさんがいらっしゃることも付しておきます。
パブリックコメントは行政手続法上で定められていますが、今回の意見公募は適用除外(第3条第2項及び第4条第4項、第39条第4項各号)に該当するものや「命令等」に該当しないものであっても、各行政機関の任意により、意見公募手続が行われる場合があることから実施されたものと考えられます。
内閣官房の資料によれば「命令等制定機関は、提出された意見を十分に考慮しなければならない。また、提出された意見や、それがどう考慮され命令等に反映されたか(されなかったか)、なぜ反映されたか(されなかったか)について、命令等の公布と同時期に公示することとなっている」と記載されています。
おそらく、今回のパブリックコメントをどのように取り扱ったかについては、答申として手交される際に公表されるものと思われます。道教組HPに詳しいように今回、このパブリックコメントについて「誤解」「理解されていない」「意図を感じ取ってくれていない」等の発言があったようですので、「何が誤解されているのか」「どこが理解されていないのか」「意図を感じ取ることができていない意見はどういったことか」といったことの特別部会としての見解を表明する必要があるでしょう。
教職員の健康と福祉を守るために、服務監督者や校長等は多面的な目標を設ける必要があると述べられています。厚生労働省によれば、月の残業時間が45時間を超えたあたりから業務と発症の関連性が徐々に強まってくるとしています。もちろん、月45時間を以内であれば良い、というわけでもありませんが。 個人的には「80時間超えたけど、面談する?」と言われて、「お願いします」と言ったことはありません(何故?と問われれば「やっても意味がない」と思っているため)し、そうした状態の先生方の業務が軽減されるところもほとんど見たことがありません。あるとすれば、病休を取らざるをえなくなった方が、復帰後に配慮されることです。簡単に言えば、「予防的措置」がとれない状況にあると言えます。
本来は行政上、職務上の責任でもって行われるべきですが、教職員同士が最大限協力し合い、助け合ってもなお長時間におよぶ勤務等が解消できない場合は、管理職等と交渉することも必要です。しかし、予想され得る「それでは学校が回らない。じゃあどうすればいいのか?」という答えが全てを物語っており、今回の答申の実効性が著しく疑われる原因でもあるのではないでしょうか。
このあと、答申が文部科学大臣に提出されます。すでに「骨太の方針2024」にこの答申の内容が内包されていること自体が、中央教育審議会の意義を歪めているわけですが、とりあえず、この方針で進められるものと考えられます。
また、これにそって来年度予算編成と概算要求と進行していきます。はたして文部科学省と財務省のやりとりがどのようになるのか。また、公務員の長時間勤務を是正するために、国家・地方を所管する省庁はどのような動きを見せるのか、注目です。