各報道機関から高等学校の無償化に関する記事がいくつか掲載されました。見出しだけでは誤解を生じそうなものもありましたので、これまでと現状を振り返りたいと思います。
・維新、高校無償化の4月開始要求 財政改革で6000億円(共同)
・高校無償化、期待と疑問 経済成長への効果見通せず(日経)
・「ハードル高い」維新、4月から高校無償化提案も自民難色(産経)
上記3つと次の3つを比べてみましょう。
与党と維新 高校授業料無償化4月実施には課題(NHK)
高校授業料無償化、維新が今年4月実施を提示(朝日新聞)
高校授業料の無償化、維新が4月からの実施要望(読売新聞)
高校無償化というともう少し広い意味に感じてしまいますが、法律解釈的には「無償=授業料不徴収」という考え方のようです。小中学校はこれに加えて「教科書無償措置法」等があり、教科書も無償になっています。
2010年、民主党政権下で①「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律」が施行されました。これにより、公立高等学校の授業料は不徴収となり、私立高等学校生等については「高等学校等就学支援金」が支給されることになりました。
その後、自民党政権となり、2014年から所得制限が設けられた②「高等学校等就学支援金の支給に関する法律」として改正され、現在まで続いています。
①は授業料不徴収とまぎれもなく記載がありますので「無償化」としてよいですが、②は申請すれば国からその分の授業料が都道府県等に交付されるシステムになっていますので「実質無償化」といわれます。ただし、②は全員が対象ではないことに注意が必要です。
各都道府県においても国の基準を上回った規準、金額を適用している例もあります。そして現在、国の方でも所得制限について議論が行われています。←今ココ
この支援金は、本来保護者が各学校に納める授業料を、国から相当分支給してもらい、都道府県や設置者に対して国が相当分を交付するシステムになっています。ですから、保護者に直接支給されるわけではなく、間接的に支払われている、と考えることができます。ただし私立の場合はケースバイケースのようです。
〇国の基準による就学支援金
まずは文部科学省のサイトを参考にしていきます。
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/mushouka/1342674.htm(文部科学省 高校生等への修学支援)
所得制限の計算式は「市町村民税の課税標準額×6%ー市町村民税の調整控除額」とされています。
公立高等学校の場合、世帯年収約910万円未満を目安として授業料相当(11万8800円)が支給されます。
私立高等学校の場合、世帯年収約910万円未満を目安として39万6000円を上限(上限は590万円未満を目安)に支給されます。世帯年収によって支給額が異なります。
〇自治体による違い
おおむね国の基準にしたがっていますが、金額の増減等は自治体によって異なっている場合があります。私立学校における加算額に差異がありますので、確認してみるとよいでしょう。
※特筆すべきところ・・・
・東京都は就学支援等の対象決定プロセスのうち、世帯の所得制限を廃止しました。東京都公立高校の場合、国の就学支援金の対象外でも「授業料通信教育受講料減免申請」を行うことで、同様の支援を受けることができます。私立高校の場合は、国の就学支援金と合わせて授業料軽減助成金(都内在住要件あり)があり、年額484,000円が支給されます。
・大阪府も東京とほぼ同様ですが、私立高校では経過措置がとられるようで、授業料63万円以下か以上かによって数年間、保護者負担が発生する場合があるようです。
前述した通り、法律解釈的には「無償=授業料不徴収」という考え方です。小中学校は別の法律により教科書も無償となっていますが、高校におけるその他費用が無償となるわけではありませんので、ご注意ください。
ではその他費用を軽減する公的支援の一部を紹介します。
〇高校生等奨学給付金
こちらの制度は教科書費や教材費などの授業料以外の教育費を支援する仕組みです。対象は生活保護世帯、住民税非課税の世帯で、年収約270万円未満相当の所得制限があります。
支給額は世帯状況、学校種によって異なり、年額約3万円~15万円となっています。
5 おわりに
高等学校は義務教育ではありませんから、小中学校に比べると「受益者負担」という観点が生じることは間違いありませんが、授業料以外の教育費が馬鹿にならないという事実もあります。
教育無償化の範囲をいったいどこからどこまでにするのか、ということも課題の一つです。少なくとも、都道府県ごとに著しい格差が生じることは望ましいことではありません。
各自治体の広報などでも支援策については紹介されているでしょうから、こうしたことの周知も必要だと思われます。