働き方改革に関わる中教審の提言と大臣メッセージ

「教師を取り巻く環境整備について緊急的に取り組むべき施策(提言)」概要New!

https://drive.google.com/file/d/1gD07sZwv8AaqxmdWyJ967pwK_mOIBp8n/view?usp=sharing

大臣メッセージ「子供たちのための学校の働き方改革 できることを直ちに、一緒に」New!

https://drive.google.com/file/d/12MTNAFU-w_AB5pNvCj2d1Iky4RX6GpfG/view?usp=sharing

2023年8月28日、中央教育審議会質の高い教師の確保特別部会から提言が出されました。また、翌29日には文部科学大臣からそれを受けてのメッセージが出されています。

「教師をとりまく環境整備について緊急的に取り組むべき施策(提言)」では教職員定数の改善がうたわれていますが、ここには小学校高学年の教科担任制実施のための加配定数改善が具体として示されています。どうやらこれは2024年度予算の概算要求に今後2年分の増員分を盛り込むことを言っているのだと考えられます。当初は2022年度から2025年度までの4年間の予定を前倒ししたい格好です。しかし、これをもって正規教員が増えるとは言えませんので、注意が必要です。

支援スタッフの充実も挙げられています。ここでは、全小中学校への配置となっています。これについては、高等学校や特別支援学校も含めて、校種の隔たりなく配置されることが重要ではないでしょうか。ただし、この支援スタッフ増員にも課題がありまして、おそらくは会計年度任用職員や非常勤職員としての任用となるのではないでしょうか。また、カウンセラーやソーシャルワーカーという専門的な知見をもつ方には、それに応じた処遇というものがあるのではないかと感じます。

学校行事の精選・重点化、準備の簡素化・省力化といえば言葉はいいですが、実際にこれを断行することは困難を伴うでしょう。

「保護者等からの過剰な苦情等に対しては、教育委員会等の行政による支援体制を構築」することも、本来であればすでに構築されているものでなければなりません。

「できることを直ちに行うという考え方のもと、緊急的に取り組むべき施策を取りまとめた」提言となっていますが、この提言をもとに「今すぐ」できる主体は、どの程度あるのでしょうか。

文部科学大臣のメッセージを見ていきます。

このメッセージにも、「大幅な教職員定数の改善」といったことが記載されています。おそらく前述した小学校教科担任制の強化の前倒しによる定数増のことと35人学級の年次進行、またそれにともなう概算要求のことだと思われます。基礎的な定数の算定を見直すことを言っているわけではないと思います。

「『やめようと思っても、様々な理由によりやめられない』との声は私にも届いていますが、働き方改革そしてその先のより良い教育につながる取組は、文部科学省として全力で応援しますので、このメッセージを業務改善に向けた旗印としてご活用ください」という言葉は、文部科学省自身が熟考することではないでしょうか。

働き方改革は確かに国だけでできることではありませんが、多くの教育長、多くの学校長はおそらくこう思っているでしょう。「そもそもの基幹業務を行う人員が十分ではないのに」と。もちろん各県、各学校でできることもあります。授業の持ちコマ数が多い場合教育課程を変更することもできますが、「生徒一人ひとりの進路希望達成ときめ細やかな指導」ということを考えたときに、それができる学校が一体どれほどあるのでしょうか。そしてコマ数を減らすと「来年度定数減ですよ」というお達しが来るのです。

正規職員を増やすためには、教職員定数を変える必要があります。現在の定数よりも上限が増えることによって、少なからず任命権者が現在と同じ採用数を維持する必要性は無くなりますし、国庫負担金や地方交付税交付金もそれに伴って増えますので、財源もできます。

非正規教職員(臨時講師、非常勤講師等)に多くを頼っていることを強く反省する時代になったのではないでしょうか。

「できることは直ちに実行を」を、偉い方たちが誤って理解されないよう願います。

それは、在校等時間を減らすために教職員に対して無理な要求をしたり、教職員との合意なく無理やりな業務の平準化をすすめたりすることが予想されるためです。実際に事例も報告されています。

トップダウンかボトムアップか、というのはいつの時代も永遠の課題です。

どちらのいいところも取り入れていきたいものです。