財務省「財政制度等審議会」~我が国の財政運営の進むべき方向~について

2024年5月21日、財務省の「財政制度等審議会」から我が国の財政運営の進むべき方向という建議がとりまとめられました。ここには教職員に関するところもあり、他県の教職員組合からもこの情報が取り上げられています。ここでは、教職員に関わる点について見ていくことにします。

関連するのは「Ⅲ-2.人口減少下での地域の課題への対応(3)人口減少下での教員の処遇の見直し」の項目となります。本文PDFの45/96からが該当します。以下、該当箇所を抜粋し、まとめられるところはまとめます。

(3)人口減少下での教員の処遇の見直し

教員の採用倍率低下⇨大量採用時の教員が大量退職する一方、若年人口が大きく減少する中で大量採用してきた結果

「時間外在校等時間」は、教職調整額が前提としている「残業時間」(8時間)と乖離が大きいという指摘

教職調整額の水準を引き上げるべきとの意見もあるが、検討に当たっては、以下の視点に立った議論が必要


 ①人材確保との関係(教職業務の効率化の徹底) 

人材確保のために給与を引き上げるべきとの意見もあるが、、、

新卒の教員採用試験受験者数は一定数を維持しており、20 年前と比べれば5,000 人超増加している。

採用倍率の低下⇨教員の年齢構成による近年の大量退職・大量採用に伴う構造的な現象

当面は定年延長の間に退職者が減少していくため、採用倍率は改善していく可能性が高い

中長期的に質の高い人材を採用し続けるため、「働き方改革」・「デジタル化」・「外部人材の有効活用」等により、教職業務の効率化を徹底し教員のマンパワーのみに頼らない効率的な教育現場への転換を進めることで、児童生徒や保護者にとって真に望ましい「質」の高い教育を実現する必要がある。


 ②民間や一般行政職とのバランス 

教員勤務実態調査を踏まえ一定の処遇改善を検討する必要があるが、若年人口が減少する中、福祉をはじめ他分野との人材確保の競合となれば、国全体として望ましい人材の配分とはならない。 

・ 教員の給与は、近年の民間の賃上げの影響が反映され大幅に改善しており、今後もその可能性が高い

・ 教員の給与は、時間外勤務手当を含む一般行政職の給与より高いこと

・ 教員の「時間外在校等時間」は減少しているが、一般行政職の時間外勤務は増加していること※1

教職調整額が本給として支給されているため、退職手当についても一般行政職より優遇されている。 また、人材確保法による給与改善後の教員の優遇分の水準(約7%)を確保するために教職調整額を引き上げるべきとの意見があるが、同法が施行された昭和49年(1974年)と現在とでは社会経済情勢も大きく異なっており、適当ではない。

※1 一般行政職の時間外勤務 ⇨ 平成30年度(2018年度):12.6時間/月 → 令和4年度(2022年度):14.7時間/月 


③メリハリある給与体系(既定の給与予算の活用) 

教職調整額を含む教員に特有の手当等を合わせると、平均すれば教員1人当たり残業18時間分の手当(給料の9%相当)が既に支給されている。 また、教員の勤務時間には大きな幅があり、時間外勤務の少ない者もいること、長時間勤務を固定化するおそれもあることから、既定の給与予算を最大限に活用し、一律に給与水準を引き上げるのではなく、例えば負担が大きい主任手当を引き上げるなど、負担の軽重に応じたメリハリある給与体系とするのが、教員の処遇を見直すに当たっての基本的な考え方


 ④安定財源の確保(歳出・歳入の見直し)

 骨太 2023 に明記されているとおり、教員の処遇改善を行うのであれば、そのための安定的な財源の確保が不可欠。

 ・ 児童生徒数の減少等を踏まえ、教育環境を悪化させずに合理化できる歳出はないか(加配定数の合理化等)

 ・ 短期間実施することが想定されていた調査研究事業等で、(名称を変えるなどして)長期間継続している事業はないか

 ・ 効果や公平性等の観点から、継続する必要性が認められない租税特別措置はないか

といった観点から、文部科学省施策全体の歳出・歳入両面の抜本的な見直しにより財源を捻出すべき

以上をざっくりまとめますと、次のようになるかと思います。

①そのうち適切な教職員数になり、不足も無くなってくるので、教員が少なくてもできるような教育現場にしていくべき

②全国津々浦々で人員不足の状況。すでに教員は賃金も優遇されているし、時間外勤務も減ってきているので、教員だけ特別扱いはできない

③全員が全員時間外勤務が多いわけではないので、一律の賃金増はダメで、仕事が大変な人だけ上げる仕組みにすべき

④でも、③をやるための予算を増額しないので、現状の予算内でできるようにすること

⑤文科省が会計上の自助努力をすべき

このような主張と受け取ることができます。