※少し長くなりますが、ご一読ください。
2025年9月8日、秋田県労連、春闘懇談会、全労連は秋田県の最低賃金が1,031円、発効が2026年3月31日になることに対して異議申出を共同提出しました。この際、高教組からも異議申出をしています。また、全労連が提起した「発効日を再考するよう求める団体署名」が全国各地から700を超える数が集まり、同時に提出しました。
それを受けて、9月10日、秋田県社会福祉会館で開かれた秋田地方最低賃金審議会で、この異議申出等について協議されました。結論は、「答申通り」となり異議を却下しました。今回の異議審には、全労連系から750組織の他、全労協系(連合とも全労連とも異なる全国組織です)から28組織が「発効日を2026年3月31日」とするのではなく早めることを求める要請書が提出されていることが報告されました。審議経過は次のとおりです。
使用者側:「ここ数年、最賃が大幅に引きあがり、影響率が拡大し、賃上げ原資も増大している。求人を出しても応募が無い状況で、県内の中小・小規模事業者の経営は厳しい。そういう状況下で80円の引き上げに反対を表明した。しかしながら、公労使3者で十分に審議したうえで、公益見解が導き出されたものであると認識している。よって、答申を変更する必要はないと考える」と表明。
労働側:「全国最低位からの脱出が重要課題であった。審議会での決定は遵守すべきものと考えているが、答申から時間が経過するにつれ、内部からもいくつか発効日に関する意見が出てきたのも事実。発効日を10月下旬で発効させた場合、106万円の壁の問題もあり労働時間調整(労働時間の削減)や雇い止めが起きかねない。国の支援策がまだはっきりしていない中、『前倒し』するのはいかがかと考える。答申通りで問題ないと考える」
公益:会長から、異議申出や要請書の主張内容について一定程度理解はするものの、審議は十分に行われた結果であり、答申通りとするという事を、審議会の結論とする。 ただし、中小・小規模事業者の生産性向上、適正な価格転嫁の推進などに関する支援の拡充について、国に対し要請することを付則して報告に記載すると述べた。
審議会事務局:「業務改善助成金」の制度と支給対象事業所の拡大について解説。
会長から:「これまでは発効日が審議終了から一ヶ月程であり、時間的にも、賃上げの作業としても慌ただしかった。業務改善助成金の申請期間が2026年1月31日が締め切りですので、あと数か月時間があり、労働局としても周知を徹底し、利用を拡大して欲しい。秋田の場合これまで利用は芳しくなかった。3月31日発効という事は、それまでに何もしてはいけない、やる必要はないという事ではない。各企業の事情に合わせ、早期の賃上げ、改善に向け取り組んでいただきたい」
(※異議審には公益4人、労働側4人、使用者側5人が出席、傍聴は高教組、医労連、建交労、県労連事務局から5人。マスコミ取材はテレビが3社、新聞は6社以上)
雑感
今回本審から異議審までの経過を見てきましたが、全国から「何故、3月31日なのか」「他県が年内発効なのに、準備期間をなぜ3月31日までとらなくてはならないのか」といった具体的な議論はされませんでした。
また、業務改善助成金の事業完了期限が2026年1月31日であり、それまでに賃金引き上げが行わなければ助成金が受けられず、来年4月以降になります。最賃発効が3月31日なので、「?」なわけです。会長が最後に「3月31日まで賃上げするなというわけではない」といった趣旨の発言をされていましたが、発効日も含めて大きな矛盾と感じられました。
半年発効が遅れることで実質40円の引上げに留まりますが、来年度の最賃発効が例年通り10月になる保証はありません。2026年の春闘にも大きく関わってきます。
今回の秋田県の決定が、「悪しき前例」とならないこと祈らずにはいられません。