秋田では、国のDXハイスクール(AKITA DXハイスクールラボラトリー)に関連して、メタバース関連システム賃貸借契約に係る企画提案競技の実施が行われます。とはいえ、メタバースとはいったいどういったものなのでしょうか。
メタバースという言葉は近年多く耳にするようになりました。日本国内ではどのようなものと考えられているのでしょうか。一般的にはMMORPGという多人数オンラインゲームがイメージされるそうです。現在、アバターを利用したオンラインゲームは多数サービスを行っており、ジャンルが特定されているわけではありません。例えばオンラインマルチができるゲームであれば、ある意味、メタバース的な要素を持っていると思われます。そういったことからいえば、マインクラフトもその一つと言えるでしょう。ゲームの中に社会を構築する試みも行われており、グランドセフトオートⅤのオンラインサーバー「ストグラ(ストリートグラフィティ ロールプレイ)※」は代表的なサーバーです。
※ストグラはグランドセフトオートVを基に構築された街を舞台にして、ストリーマー(動画配信者)を中心としたプレイヤーが架空の人物としてその街で生活をするロールプレイサーバーです。あくまでもゲーム内でのロールプレイであり、フィクションです。
本来のメタバースは、構築された仮想空間の中で現実世界と同様のことができることを目指していると考えられます。例えば、一つの街の中で買い物、金融、役所等へメタバース内で訪問し、消費行動等をすることができる、というものです。ただ、①の定義にしたがえば、メタバースの範囲は非常に広いものです。
NTTデータのHPによりますと、次のような活用を想定しているようです。
・探究学習教材等との併用による他校との交流学習の活性
・全校集会・学校説明会などイベントシーンでの活用による進学意欲の醸成
・海外や地域産業との交流によるグローカル人材の育成
・企業や異なる学校種との交流によるキャリア教育の機会拡大
・不登校児童生徒の学習面・精神面への支援としての活用
親和性の高そうなサービスも見受けられますが、重要なのはこれらを使うこと自体が目的化しないことです。
メタバースはどうしてもVRのイメージが強いですが、必ずしもVRとは限りません。仮にそうした場合は、機器の購入、設置等に時間と費用がかかると思われます。こうした事業をおこなっているところでも、実際にVR機器を接続することはそこまで多くないのではないでしょうか。そもそも自らのアバターを俯瞰的に見ることができるいわゆるTPS視点※か実際の視点に近いFPS視点※かによっても異なります。また、こうしたシステムの構築は民間に任せるとしても、実際に整えていくのは教職員ですし、現実の教室とネット内の教室を繋ぐためにはそれなりの機材も必要です。※TPS(サードパーソンシューター)、FPS(ファーストパーソンシューター)のこと。
ネット上に教室をつくるということの有用性を今一度考えた方がいい気もします。なぜなら④で示した内容のほとんどは、VR空間ではなく、zoomやgoogle meetなどのweb会議システムで行うことができるからです。3Dアバターを動かし、そのアバターでコミュニケーションをとることが必要な教育上の活動は、どんなものがあるでしょうか。メタバースは会議システムよりもコミュニケーションがしやすく、複数人での活動が活発になるそうですが、それぞれの比較を見てみたいものです。
あまり良くないのは、教室に生徒みんながいて、そのうちの誰かがネット教室(ネットのルーム)で全国の生徒が集まる何かの発表などをしている様子を、クラスみんなが見る、といったような活動だと思います。これならメタバースである必要はありません。こうした空間はかなり限定された場面で使用されるのではないでしょうか。下手をすれば、その空間が放置される恐れもあります。
不登校児童生徒の支援という観点からは、出席、履修が認められるとすれば有効かもしれません。通信制高校でもすでに活用が進んでいますが、ケースによっては有効な手段として利用され得ると考えられます。
ネット上は万能の空間ではありません。推進する側にはその理解をしてほしいと感じます。