教職員定数に学級数や生徒数、高校では課程や学科数などに応じた「基礎定数」と政策ごとに予算がつけられる「加配定数」があります。学校規模や学科などのはっきりとした基準が見える基礎定数に比べ、加配定数はよくわからない面もあると思います。ここではそれを見ていくことにします。なお、加配定数には、都道府県が文科省に対して申請し配当される加配と都道府県・市町村が独自に行う加配があります。都道府県ごとの加配についてはそれぞれの自治体における予算に概ね記載されています。
※当該事項を規定している主な法律は、
「公立義務教育諸学校の学級編成及び教職員定数の標準に関する法律(義務標準法)」
「公立高等学校の適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律(高校標準法)」
以下略称を用います。
義務標準法によって定められている加配(第7条2項、15条)
①教諭等
・指導方法工夫改善(第7条第2項)少人数指導、習熟度別指導、ティーム・ティーチングなどのきめ細かな指導や小学校における教科専門的な指導。
・児童生徒支援(第15条第2号)いじめ、不登校や問題行動への対応のほか、地域や学校の状況に応じた教育指導上特別な配慮。
・特別支援教育(第15条第3号)通級による指導への対応や、特別支援学校のセンター的機能強化等。
・主幹教諭(第15条第4号)主幹教諭の配置に伴うマネジメント機能強化。
・研修等定数(第15条第6号)資質向上のための教員研修、初任者研修、教育指導の改善研究等。
②養護教諭(第15条第2号)いじめ、保健室登校など心身の健康への対応。
③栄養教諭・学校栄養職員(第15条第2号)肥満・偏食など食の指導への対応。
④事務職員(第15条第5号)学校事務の共同実施を通じた事務機能の強化。
高校標準法で定められている加配
・指導方法改善(第9条第2項)外国語や数学等における少人数指導。
・通級による指導(第22条第3号)障害に応じた特別の指導。
・生徒支援(第22条第3号)中途退学や日本語指導など教育指導上特別な配慮が必要な生徒への対応。
・職業系類型、コース開設(第22条第4号)普通科において職業系の類型・コースを開設し、多様な教育を展開。
・研修等定数(第22条第5号)資質向上のための教員研修、初任者研修、教育指導の改善研究等。
・離島地域(附則第11項)離島地域の高校又は特別支援学校高等部における教育の充実への対応。
令和6年度予算に記載されている加配に関する事項は次の通りです。
①少人数学習推進事業(小・中学校)
小学校、中学校全学年30人程度学級:臨時講師49人、非常勤講師76人
②少人数学習推進事業(高等学校)
・地域の中心高における35人程度学級の導入:一定規模以上の学校3校に臨時講師を配置
・コース等の設置、習熟度別少人数学習の実施等:実施希望校に非常勤講師を配置
国に申請し配当される加配は、申請数がそのまま承認されるわけではありません。また、県独自の加配も必要十分であるとは言えない数字となっています。これはなにより、予算を確保できないこと、国においては次年度予算に組み込まれるか不透明なことが原因です。
そしてこのことは、その年度ごとに申請、算定、配当が行われるため、非常に不安定な定数となっています。これは同時に、不安定な定数であるがゆえに、そこに非正規の講師が配置されるという現象を引き起こしています。
政策的な定数である加配を重視すればするほど、不安定な定数と不安定な任用を生み出すという現実があります。確かに加配があることは重要なのですが、加配が加配として機能していない場合も見受けられます。基礎定数を増やすということは恒常的な支出が増えることが決定するとも言えますので、財務省的には承服できないし、増やせばどうなるかのデータを出して立証しなさい、という論法になるわけです。