No.21 時間外勤務の上限

はじめに

No.6では教職調整額、No.8では在校等時間、No.11では時間外勤務手当や休日勤務手当について書きました。

それを踏まえて、時間外勤務の上限について述べていきます。

基本的に、使用者や任命権者は、従業員や職員の超過勤務時間が「月45時間以内、年360時間以内」となるようにしなければなりません。もちろん各従業員や職員(教員含)が実行できることややるべきこともあると思いますが、「定め」としては管理する側にその責任がある、と考えるのが妥当です。

国家公務員について

人事院規則で定められています。

人事院規則 (超過勤務を命ずる時間及び月数の上限)

第十六条の二の二 各省各庁の長は、職員に超過勤務を命ずる場合には、次の各号に掲げる職員の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める時間及び月数の範囲内で必要最小限の超過勤務を命ずるものとする。

 次号に規定する部署以外の部署に勤務する職員 次に掲げる職員の区分に応じ、それぞれ次に定める時間及び月数(イにあっては、時間)

 ロに掲げる職員以外の職員 次の(1)及び(2)に定める時間

1) 一箇月において超過勤務を命ずる時間について四十五時間

(2) 一年において超過勤務を命ずる時間について三百六十時間

(中略)

 各省各庁の長は、前項の規定により、第一項各号に規定する時間又は月数を超えて職員に超過勤務を命ずる場合には、当該超えた部分の超過勤務を必要最小限のものとし、かつ、当該職員の健康の確保に最大限の配慮をするとともに、当該超過勤務を命じた日が属する当該時間又は月数の算定に係る一年の末日の翌日から起算して六箇月以内に、当該超過勤務に係る要因の整理、分析及び検証を行わなければならない。

(以下略)※例外あり

地方公務員について

国家公務員の取り扱いを踏まえ、各自治体の条例等で定められています。

秋田県人事委員会規則8-6(時間外勤務等を命ずる時間及び月数の上限等)

第五条の六の三 任命権者は条例第八条の二の二第二項の規定により命ぜられて行う勤務(以下「時間外勤務等」という。)を命ずる場合には、職員の健康及び福祉を害しないように考慮し、次の各号に掲げる職員の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める時間及び月数の範囲内で必要最小限の時間外勤務等を命ずるものとする。

一 次号に掲げる職員以外の職員 次の(一)及び(二)に定める時間

(一) 一箇月において時間外勤務等を命ずる時間について四十五時間

(二) 一年において時間外勤務等を命ずる時間について三百六十時間


二 業務量、業務の実施時期その他の業務の遂行に関する事項を考慮し、任命権者が指定する業務に従事する職員 次の(一)から(四)までに定める時間及び月数

(一) 一箇月において時間外勤務等を命ずる時間について百時間未満

(二) 一年において時間外勤務等を命ずる時間について七百二十時間

(三) 一箇月ごとに区分した各期間に当該各期間の直前の一箇月、二箇月、三箇月、四箇月及び五箇月の期間を加えたそれぞれの期間において時間外勤務等を命ずる時間の一箇月当たりの平均時間について八十時間

(四) 一年のうち一箇月において四十五時間を超えて時間外勤務等を命ずる月数について六箇月

(以下略)

一般企業等について

なお、労働基準法において、一般企業等にも時間外勤務の上限が規定されています。

労働基準法第36条

使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この条において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。 

五ー④ 前項の限度時間は、一箇月について四十五時間及び一年について三百六十時間(第三十二条の四第一項第二号の対象期間として三箇月を超える期間を定めて同条の規定により労働させる場合にあつては、一箇月について四十二時間及び一年について三百二十時間)とする。 

いわゆる36協定に関する条項ですが、これに違反した場合罰則があります。公務員については罰則規定がありません。

教員について(秋田県の規定含む)

教員については、公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法第7条第1項に規定する指針である「公立学校の教育職員の業務量の適切な管理その他教育職員の服務を監督する教育委員会が教育職員の健康及び福祉の確保を図るために講ずべき措置に関する指針」によって規定され、秋田県教育委員会規則第三号「秋田県立学校の教育職員の業務量の適切な管理等に関する規則」によって定められています。

第二条 秋田県教育委員会(以下「教育委員会」という。)は、教育職員の在校等時間(当該教育職員が学校教育活動に関する業務を行っている時間として外形的に把握することができる時間をいう。以下同じ。)から所定の勤務時間(法第六条第三項各号に掲げる日(代休日が指定された日を除く。)以外の日における正規の勤務時間をいう。以下同じ。)を除いた時間次の各号に掲げる範囲内の時間となるよう教育職員の業務量の適切な管理を行うものとする。

一 一箇月について四十五時間以内

二 一年について三百六十時間以内


2 教育委員会は、教育職員が児童生徒等に係る通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い、一時的又は突発的に所定の勤務時間外に業務を行わざるを得ない場合には、前項の規定にかかわらず、教育職員の在校等時間から所定の勤務時間を除いた時間が次の各号に掲げる範囲内の時間となるよう教育職員の業務量の適切な管理を行うものとする。ただし、一年のうち一箇月において四十五時間を超えて業務を行う月数については、六箇月以内とするものとする。

一 一箇月について百時間未満

二 一年について七百二十時間以内

三 一箇月ごとに区分した各期間に当該各期間の直前の一箇月、二箇月、三箇月、四箇月及び五箇月の期間を加えたそれぞれの期間において一箇月当たりの平均時間について八十時間以内

実態

人事院の調査では、令和5年度「国家公務員」の平均年間超過勤務時間数は年間220時間(本府庁勤務者は397時間、本府省以外での勤務者は179時間)。総務省の調査では令和4年度「地方公務員」の平均年間超過勤務時間数は年間149.6時間でした。

月換算にすると次のようになります。国家:月約18時間、地方:月約12時間。

文科省の調査をもとに計算すれば、教員の勤務時間外在校等時間は(職員全体の)平均がだいたい月40時間超(1日2~3時間以上超過)となっています。平均でこの数値ですので、上限を大きく超える職員が相当数存在します。そもそも在校等時間という考え方を疑問視する声もあります。なぜなら、給特法によって時間外勤務を命じることができるのはいわゆる超勤4項目に限るとされているものの、これ自体が反故にされている現状があるからです。

部活動についていえば、勤務時間外の活動は教員の自主的・自発的なものであり業務命令をしているわけではないということも、もはや通用しない状態になっています。例えば、平日に18:00まで部活をやってすぐ帰れば1~2時間の超過なので、平日1日、休日1日休んだとしても月20時間~40時間の時間外在校等時間になると考えられます。部活動のあり方については様々な意見がありますので一概にいうことはできませんが、考慮すべきことであることは間違いありません。「教員の仕事なのでやってください。しかし教職調整額に全て含まれます」と言われても、現状、納得させることは困難でしょう。

ただし、国家公務員の本府庁勤務や他の職種も含めて、国が行っている調査が実態通りか疑問が残ります。かなりのサービス残業が存在していると思われますし、時間外勤務手当の支給についても実態がわからないところもあります。公務員の超過勤務が多くなること自体に罰則は無く、時間外勤務手当も予算の範囲内で支給されることになりますので、国の調査でも本当の実態が見えなくなっていると考えられます。

日本の美徳として勤勉さが挙げられることは多く、発展を遂げてきた日本の一部であることは疑いようもありませんが、時代(世代)の移り変わりとともにその生活スタイルや仕事への考え方も変化してきています。

法的または指針として示している以上、これを達成するために国や各都道府県、地方公共団体は責任をもつ必要があります。

人事院や人事委員会は、公務員の労働基準監督機関として調査、指導をお願いしたいところです。

(とはいえ、どうやって解決するの?というところが問題な気もしますが)