2025年5月14日、衆議院文部科学委員会において審議が進められていた給特法等関連法案の採決が行われ、れいわ以外の賛成多数で可決されました。このあと、衆議院本会議での採決、参議院での審議と続いていきます。
今回の法案については、いわゆる給特法が争点になっているわけですが、実は関連する法の改正も行われることになっています。
全体の内容の振り返りも含め、今一度ここで見ていくことにしましょう。
文部科学省は「4つ」の法律の改正案を提出しており、概要は次のとおりです。
①教育委員会に対し、教員の業務量の適切な管理と健康・福祉を確保するための措置を実施するための計画の策定・公表、実施状況の公表を義務付け。あわせて、総合教育会議への報告義務付け(給特法第8条関係)
②学校評価に基づき講ずる学校運営の改善を図るための措置が、上記計画に適合するものとなるように義務付け(学校教育法第42条関係)
③学校運営協議会(設置している学校)が承認する「基本的な方針」に、業務量管理・健康確保措置の実施に関する内容を含める(地方教育行政の組織及び運営に関する法律第47条の5関係)
④児童生徒の教育をつかさどるとともに、学校の教育活動に関し教職員間の総合的な調整を行う「主務教諭」を置くことができることとする(学校教育法第27条、第37条関係)
⑤教職調整額の段階的引上げ(給特法第3条関係)
⑥義務教育等教員特別手当の支給割合の変更と学級担任加算(教育公務員特例法第13条関係)
⑦指導改善研修を受けている教員には、教職調整額不支給(給特法第3条、第5条関係)
間違えないでおきたいのは、給特法「等」関連法案の審議が行われており、給特法以外の改正も問題がある、ということです。
なお提出されていた原案はリンクのとおりです。
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g21709009.htm
審議が進む中で野党から修正案が出され、動議として採決されました。修正案は、改正給特法の附則として組み込まれます。概ね次のような内容とされています。
1 令和 11 年度までに、公立の義務教育諸学校等の教育職員について、1箇月時間外在校等時間を平均30時間程度に削減することを目標とし、次の措置を講ずるものとすること。
① 教育職員1人当たりの担当する授業時数を削減すること。
⇒小学校教員を週20時間にすることを想定しているらしい。
② 教育課程の編成の在り方について検討を行うこと。
③ 公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律に規定する教職員定数の標準を改定すること。
⇒おそらく中学校の35人学級と小学校の教科担任制関連ですよ、になるか
④ 教育職員以外の学校の教育活動を支援する人材を増員すること。
⑤ 不当な要求等を行う保護者等への対応について支援を行うこと。
⑥ 部活動の地域における展開等を円滑に進めるための財政的な援助を行うこと。
⑦ ①~⑥のほか、教育職員の業務の量の削減のために必要な措置。
2 公立の中学校の1学級の生徒数標準について、令和8年度から35人に引き下げるよう法制上の措置その他の必要な措置を講ずるものとすること。
3 公立の義務教育諸学校等において、その学校全体の教育職員の仕事と生活の調和を実現する上で、その管理職手当を受ける教育職員が重要な役割を果たすことに鑑み、 公立学校の管理職員及び公立の義務教育諸学校等の教育職員の服務を監督する教育委員会による当該教育職員のそれぞれ担当する業務についての見直しに係る措置その他の当該教育職員の業務の管理の実効性の向上のための措置について検討を行い、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること。
4 公立の義務教育諸学校等(幼稚園を除く)の教育職員の勤務条件の更なる改善のための措置に関する検討条項について、 当該教育職員の勤務の状況について調査を行う旨を規定するものとすること。
⇒調査しないって言っていた気がしますが、それに対する修正、なのでしょうか。
〇勤怠管理の徹底がマイナスに作用し、「無策の早く帰れコール」「校内でできなかった仕事の持ち帰り」などの増加が懸念
〇「主務教諭」の新設は、最終的に各都道府県の判断。そもそもこの職の役割は一体何なのか疑問(教職員間の総合的調整ってなに?)。
〇修正案で追加される附則について、そもそも給特法自体が「超勤4項目以外の時間外勤務を禁じている」のに、30時間目標を入れるのはおかしいのでは。
〇新しい職階を導入することにより教諭(現行2級)の賃金が下がるのでは?という声に文科省は「国庫負担の単価は変えない」と発言。しかし、先行して同様の制度が実施されている自治体では、現行2級の賃金は下がっている。そうなった場合「国は単価を変えていない。自治体の判断」と言われる可能性大。
〇教職調整額の引上げは、長時間に及ぶ時間外勤務を削減する手段にはなり得ない。幼稚園教諭は4%で据え置かれる方針。
〇義務教育等教員特別手当は全体の支給率が1.5%を1.0%に下げた上で、担任に対するこの手当を3,000円分上乗せするらしい。同時に多学年学級担任手当を廃止、特別支援教育の「給料の調整額の縮減」、「特別支援学校学級の担任上乗せなし」などもわかっている。つまり、全体の予算総額は変わらないので、そのなかでやりくりしていこうとすると、「こっちが増えればあっちが減る」ということが容易に想定出来る。
〇附則の内容はどうやら大臣合意や、政府方針をなぞった内容らしい。そもそも実施予定だったものを「修正したよ」的に出されているようにも感じるので、文科省や政府的には痛手は無い。
14日の審議をさらった拝見しましたが、質疑応答の内容で気になったことがいくつかありました。
①臨時講師の「給料表1級」を職務に照らし合わせて2級にという質問があり、文部科学大臣が「各都道府県、任命権者で適切に対応することを求める(まだ文字起こししていないので細部に違いはあります)」と答弁しました。令和2年の総務省の通知では、「臨時的任用職員については、「常時勤務を要する職」に就く職員として位置付けられるため、給与の決定に当たっては、常勤職員に適用される給料表及び初任給基準に基づき、学歴免許等の資格や経験年数を考慮して適切に決定するとともに、諸手当については、常勤職員と同様に支給する必要があるため、適切な措置を講ずること」と通知しており、文面を見れば「2級が妥当」と読み取れます。1級なら「職務、業務の違いは何か」を追及することができます。
②日本維新の会の議員から「人事評価」に関する質疑がありました。その際、「学校現場に労務管理の意識を根付かせるためには、人事評価にライフワークバランスの視点を盛り込むことが重要」と発言がありました。これに関連する文科省の答弁の一部に「校長の人事評価に働き方改革に資する項目をいれる。人事評価の実施にあたり、年度途中の急な欠員対応、保護者対応などさまざまな業務が発生する。これに対応するような頑張っている、急な場合のときに頑張っていただいているなど、教師のさまざまな活動や能力、業績というものが適正に評価されるようにすることが大切」「必ずしも定量的に図れるものでないが、生徒指導や教育相談、学力など子どもたちの変化を捉えて、どのぐらい寄りそってどのくらいの効果になっているかということについては、定量的に図れるものもあると思っている。そうした教師の評価というものが、この人は本当に頑張っていると評価され、昇格・昇給につながっていくということで、モチベーションの向上につながる、学校として大きな意味でのみんなでチームで学校の役を果たしていく・・・人事評価の実装がそれに役立つと考えている」
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