2025年の給特法その他関連法の改正により、教員を取り巻く環境、処遇についての変更が見られます。今回はそのうちの「義務教育等教員特別手当」について解説します。
正しくは「学校教育の水準の維持向上のための義務教育諸学校の教育職員の人材確保に関する特別措置法」 です。この第3条には「義務教育諸学校の教育職員の給与については、一般の公務員の給与水準に比較して必要な優遇措置が講じられなければならない」とあります。
この法律の第13条には「第十三条 公立の小学校等の校長及び教員の給与は、これらの者の職務と責任の特殊性に基づき条例で定めるものとする。(中略)2 前項に規定する給与のうち地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百四条第二項の規定により支給することができる義務教育等教員特別手当は、これらの者のうち次に掲げるものを対象とするものとし、その内容は、条例で定める」とあり、支給内容については各都道府県等の条例で定められています。
第23条の3の4には次のとおり記載があります。
教育公務員特例法第十三条第二項各号に規定する校長若しくは教員又は教育公務員特例法施行令第九条第二項に規定する実習助手若しくは寄宿舎指導員である職員には、義務教育等教員特別手当を支給する。
2 義務教育等教員特別手当の月額は、八千円を超えない範囲内で、職務の級及び号給(定年前再任用短時間勤務職員にあつては、職務の級)の別に応じて、人事委員会規則で定める。
3 前二項に規定するもののほか、義務教育等教員特別手当の支給に関し必要な事項は、人事委員会規則で定める。
上記の条例第3項にある「必要な事項」を定めた人事委員会規則になります。ここでは、「支給の対象」「月額その他」「支給方法」「給料表の号給に対応した支給額の表」などが記載されています。
2025年の法律改正により2026年1月1日施行予定の改定内容は次のとおりです。
現行では「本給の1.5%程度」とされていたものを「1.0%」にすることが多くの道府県の条例改正で提案されています。秋田県の場合における削減予想は下表のとおりです。
教育公務員特例法と同時に「教育公務員特例法施行規則」が改正され、校務類型が「学級担任の業務」と「学級担任以外の業務」に分類されました。この校務類型の違いによって支給額を決まるようになりました。国の基準では「1学級1担任3,000円」が加算となります。下表の例でいえば、「学級担任の場合」プラス3,000円されることが想定されます。
担任加算をするためにすべての教員の手当を削減することは妥当でしょうか。そもそも学級担任を担うことはほぼない「養護教諭」「実習教員」のみなさんからすれば、単純に手当が下げられるだけです。
すでに法律の改正がなってしまったわけですが、「校務類型」として「学級担任」「学級担任以外」と業務を分類して手当の額が異なることも大いに疑問です。これでは「業務負担の平準化」「協業体制の推進」はどこかへ行ってしまう危険性もあります。
論理としては、「普通学級の担任にも同様のスキルが必要。給料の調整額は削減の方針だが、それでも他の教員よりも手当てされている」ということだそうです。まったくもって理解に苦しみます。
②に通ずるところもありますが、「教職調整額が段階的に引上げになることから、全体としては処遇改善になっている」という話です。しかも「人事委員会勧告でも引上げになっている」という場合もあります。そもそも教職調整額の支給は給特法、義務教育特別手当は人材確保法に基づいたものです。優秀な人材確保を目的とした法律なのに業務内容によって格差を設け、支給額を下げることに妥当性はあるのでしょうか。
秋田県においては「教頭・副校長が3級」「校長が4級」の給料表です。学級担任以外の上限5,600円は現在の4級8,000円がベースになっています。少なくとも担任をすると考えられる1級、2級の引き下げ幅を抑える努力が必要ではないでしょうか。
そもそも学級担任になることが想定されない実習教員、養護教員については、単純に手当が引下げられるだけ、ということになります。義務特手当の趣旨として、本当にいいのでしょうか。
逆に、臨時講師で担任を持っている場合は加算の対象になります。これまで高教組が「臨時講師も業務は同様なので、2級適用を」と求めていますが、ますます1級である必然性が薄れます。
すでに改正の条例案が2025年12月議会に提案されています。高教組への提示が11月21日、教育委員会報告が11月25日、同日県議会上程というあまりにも拙速すぎる動きです。