すでに同じような内容で過去記事がありますが、改めて現状と実態をまとめてみました。給特法関連法案が2025年4月から審議されていることも踏まえ、ご覧ください。
教員の勤務実態調査が行われ、多数の教員が長時間にわたる時間外勤務を行っていることがわかっています。ここで「教員だけではない。他の公務員も同様」という意見もあると思います。確かに、その通りです。ただ、大きな違いは「時間外勤務に対する対価」が存在するかどうかです。
長時間労働の原因としては、膨大な業務量、部活動、授業準備、保護者対応などがあげられています。もちろん、職場や個々人によって違いはあります。
労働者(公務員含む)の時間外勤務上限は、例外を除いて「1ヶ月45時間、年間360時間」と決められていますが、秋田県の高校においては、時間外在校等時間が年間360時間を超える教職員が全体の80%に及びます。
しかし、文部科学省や厚生労働省の国会答弁によれば、「在校等時間=労働時間ではない」とのことです。
教員の長時間労働と密接にかかわる「教員不足」。自治体や政府はその原因を「①産休・育休取得者数②特別支援学級数③病気休職者数--これらが見込みよりも増えたこと」「それによって講師が配置できないこと」としています。つまりは「講師が足りないのだから、講師になりうる教員採用試験の受験者を増やすのだ」ということです。
「教職の魅力をPR」「働き方改革が進んでいることをPR」「中高生に教職をめざしてもらう取り組み」などが行われていますが、残念ながら功を奏しているとは言いがたい状況です。一部からは「教員自身がマイナスイメージを発信している」ことに原因を求める声もあります。
長時間労働の解消と教員不足の解消は一体的な問題です。
まず「教員不足の実態」から。前述の理由には大きく欠けている視点があります。
○「教職員定数が減少していること」・・・少子化のため
○「教職員定数内で講師が配置されていること」・・・正規採用の教職員で定数いっぱいまで採用していないため
○「おいそれと採用数を増やせないこと」・・・国の定数を上回ると都道府県予算に負担がかかるから
確かに講師が少なくなっているのは確かです。ただ、小学校を除いては教職員定数内における正規教員と非正規教員の割合は「9:1」前後でしょう。つまりこういうことです。
①ある県は、国の基準による教職員定数は2,000人である⇒②そのうち、正規採用されているのは1,800人である⇒③残り200人は常勤講師⇒④場合によっては非常勤講師のケースもある。
また、国は「講師が採用試験で合格することで、講師登録者が減っている」ということを言いますが、厳密にいえば「それもそうだが、大学4年生で不合格になった学生が、講師という働き方を選ばなくなった」と言えます。
そもそも本来の教職員定数よりも正規の教職員の数が少ないので、講師を任用することで「穴埋め」をしてきたことが実態です。それが、講師が少なくなったのでできなくなった、というのが真相です。中高の場合は教科も関わってくるのでなおさら。
少なくとも本来入るべき常勤教員(正規にせよ講師にせよ)が配置されればよいですが、残念ながらそうはうまくいきません。仮に非常勤講師が定数内に配置された場合、校務分掌につけることは原則ありません。なぜなら非常勤講師はもっぱら授業に関わることが職務だからです。そうなるとその分の分掌を正規教員が足りない状態で振り分ける必要があります。この時点ですでに業務の圧迫がはじまっています。
部活動も同様です。複数顧問制を実施しようとしても「複数の部活をかけもち」というケースになってしまいます。また、部活動については以前も記事にしましたが、通常の練習時間だとしても週6~10時間実施しますので、時間外勤務は相応に増えてしまいます。
部活動の顧問(通常の活動をしている部活動の顧問)になるということは、時間外勤務が当たり前の状態で働くことになります。土日も指導や出張になる場合もありますので、出勤する時間は増えます。しかし法律的な体裁により、こうした土日・平日の勤務時間外は職務命令を下されているわけではありません(出張になる大会などは別)。ここに大きな矛盾が生じているということになります。