文部科学省は毎年、学校基本調査を行っています。これは学校数、生徒数、教職員数などを年度当初の数値を調査しているものです。県単位でも統計を取っています。今回はこれについて見ていきます。
※ここでは令和6年度時点での調査結果をもとに、公立の高等学校と特別支援学校について見ていきます。
H27年からR6年の10年間の推移を見ると次のとおりになります。なお、本務教員数については言及がありませんが、おそらく常勤で勤務する教員(校長、副校長、教頭、教諭等、講師)のことと思われます。
・高等学校
(全日制)学校数7校減(51⇨44)、生徒数5878人減(23091⇒17213)、本務教員数305人減(1955⇒1650)
(定時制)学校数変化なし(6校)、生徒数38人増(668⇒706)、本務教員数7人増(107⇒114)
(通信制)学校数変化なし(1校)、生徒数64人増(526⇒590)、本務教員数4人減(24⇒20)
・特別支援学校(国立含む)
学校数本校変化なし、分校1増(合計13⇒14)、学級数1減(373⇒372)、幼児児童生徒数19増(1249⇒1268)、本務教員数35人減(892⇒857)
では正規採用の教諭等と講師の割合はどうなっているでしょうか。なお、講師には養護助教諭を含みますが、非常勤講師(会計年度任用職員)は含まれていないものと思われます。
・高等学校(全定通合計)
(管理職含む)全体1784:講師等179
(管理職除く)全体1671:講師等179
いずれもおよそ10%が講師等。
・特別支援学校(1の統計と誤差が生じています)
(管理職含む)全体888:講師等161
(管理職除く)全体850:講師等161
いずれもおよそ18から19%が講師等。
この統計では休職・休業者の数も調査されます。ただし、特別支援学校については調査結果がありません。
・高等学校
専従1、その他5、育児休業6=12人
組合専従を除けば、11人が病休、育休等の休業をしています。
①学校数減、生徒数減、本務教員数減は間違いない
②高校定時制・通信制、特別支援学校の生徒数は増えている
③通信制、特別支援学校の生徒数は増えているが、本務教員数が減っている
④高校常勤講師の割合は全体の10%前後、特別支援学校は全体の18%前後
⑤講師の割合は10年間大きな変化はない
⑥休職・休業者が10人前後ということは、それ以外の講師は基本、定数内臨時講師(場合によっては県単位で講師を増やしていることも考えられますが・・・)と考えられる
①高校で見ていただきたいのは、休職・休業者の数と講師の数です。文部科学省や各都道府県は「大量退職に伴う若年層の増加等により、産休・育休等の代替講師が不足している」としています。ところがその数はそれほど多くはないということがわかります。確かに代替講師が足りないことは事実ですが、なぜ足りなくなるのか、というところになかなか言及されません。要は「生徒数減から教員定数減となることがほぼ確定なため、将来的に余る可能性を考慮すれば採用を増やせないので、減るであろう定数分を講師で埋める必要がある」ということです。
②定時制、通信制の生徒数が増加していることがわかります。定時制は教員数がいくらか増えていますが、通信制は生徒数が増えているにもかかわらず教員数は減少しています。これは大変大きな問題です。非常勤講師が配置になっていることも考えられます。
③特別支援学校の講師率は、他の校種と比べて非常に高くなっています。これはこれまでも同様です。これを県に指摘したところ「少子化も進行しているので、教職員定数も減少していく。教員不足は定数減によって解消されていくものと考えている」と回答しました。概ね、高校でも同様です。
※そもそも教員の10%ないし20%を非正規に頼ってきたやり方がもはや破綻しています。ここでは取り上げませんでしたが、実は実習教員の数は、秋田県が国に申請している数よりも少ない配置数です。逆に事務職員数を増やしています。
近年の未配置は、定年延長や年金受給年齢引上げによって再任用が制度化されたことによって、退職と採用のバランスが崩れたことも一因ではないかと思います。
こうした事実をもとに交渉しても、国や自治体は「いないものは仕方がない。予算が無いから仕方がない。いずれ良くなる」というスタンスに見えます。では今働いている教職員、今学んでいる生徒には我慢してもらうということでしょうか。その割に教育内容はどんどん深化しているような気もしますが・・・。