11月に初報が出ていましたが、2024年12月17日、公立小中学校で産休や育休を取得した教員の代替要員について、非正規だけでなく正規の教員を充てた場合も給与の一部を国庫負担の対象とする政令改正を閣議決定されたとの報道がありました。
初報が出てからどうしても「?」がぬぐえないことがありましたので、改めてこのことについて整理していきます。
いわゆる講師といわれている職については、公立小中高特支などについては次のとおりです。ただ、自治体によって呼び名も異なりますし、ちょっとした齟齬があるかもしれません。概ねこのような分け方です。
・臨時講師
・非常勤講師
臨時講師にも「教職員定数内で配置」される常勤講師と、「産休育休等代替のため定数を超えて配置」される常勤講師があります。いずれにしても臨時講師といわれる場合は常勤であることが通常です。
非常勤講師は「会計年度任用職員」として採用され、「授業とそれに関連する業務のみをその主業務とする」形態です。時間講師ともいわれます。近年は「教職員定数内に非常勤講師を配置」することで急場をしのぐケースが慢性化しています。
長文でもありませんが、記事に書かれていることを箇条書きして整理します。
・産休や育休の代替教員は臨時講師等が担ってきた
・「休業」に対する代替のため、教職員定数を超える配置になっている
・代替教員は臨時講師等に限られていた。理由は、代替教員が臨時講師等の場合のみ「義務教育国庫負担金」の対象となるため
・これを、代替教員が正規教員の場合も「義務教育国庫負担金」の対象となるよう法令改正
・正規教員も対象にすることで、育休等取得者が出ることを見越して正規教員をあらかじめ多めに採用しておくことができるそうだ
大まかに言って以上になります。
文面を読みますと、「正規教員の採用数を増やすことができる」と捉えることができます。で、素朴な疑問があります。
・「正規教員で代替ってどういうこと?」
・「高校や特別支援学校(高等部)等は対象じゃないの?」
・「義務教育国庫負担金を出すということは、地方交付税もその分上乗せですか?」
の三点です。
正規教員を「代替」として「加配」するイメージと述べておられる方もいらっしゃいますし、大阪市で実施されている「本務教員による欠員補充制度」 のようなものと考えている方もいます。年度途中で教諭を異動させる後者はかなり難易度が高いので、年度当初の異動で代替が必要になったときにこれまでは臨時講師配置をしないと国庫負担にならなかったものが正規教員を「代替」として異動しても国庫負担になる、ということでしょうか。でも代替講師も期限が決まっているし・・・期限が来たらどうするんだろう?などなど、書いててもよくわからないので、どのようなケースを想定しているか示してもらいたいですね。
そもそもこれらの校種は「義務教育国庫負担金」の対象ではなく、「地方交付税交付金」で教職員定数分の予算が各都道府県に交付されています。全ての校種でこれを進めてほしいものですが、現在文科省が進めている「先読み加配(年度当初にここ数ヵ月で産休、育休等に入ることがわかっている教員がいる場合、休業時から代替教員を配置するのではなく、年度当初から配置できる制)も、高校等は対象になっていませんので、同様になる可能性もあります。ただし、自治体によっては高校等も対象にするなど制度を拡充しており、自治体の財政や考え方で職員の労働条件が異なっています。
東京都を除くすべての地方自治体は、自身の歳入では自治体の事業のすべてをまかなうことは不可能なため、不足するであろう分を算定し、国から「地方交付税(交付金)」というかたちで予算が配分されています。義務教育国庫負担金以外の3分の2は地方財政が負担することになっていますので、おそらくは交付税関係も何らかの動きがあろうかと思います。
臨時講師しか対象にならなかったものが、正規教員も対象になるということでいえば前進かな、と思います。ただ、運用がものすごく難しいのではないかと思います。
おそらく小学校が中心の施策であること(他校種も厳しい)
仮にこれを見越して採用数を増やすという判断が都道府県教育委員会にできるかどうかということ(まず間違いなく、いつかどこかで定数の枠にひっかかることを想定すると思います。毎年同じ人数が代替として必要になるかわからないので)
(定数外の配置ではあると思いますが)国庫負担金対象の「代替」にするために人事異動がすげー難しくなる可能性がある
などなど多々考えられます。国にしてみれば公務員の人件費(教職員定数)をこれ以上増やすわけにはいかないと考えている中で、ひねりだした策なんですかねぇ。