このページ以外でも触れていますが、NHK(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240928/k10014594391000.html)の報道もあったことですので、改めてどういうことなのかを見ていきます。
端的に言えば、「配置されるべきところに配置されていない」ということになりますが、いくつかのケースに分けられます。
・その学校に配当されている常勤の教職員枠に常勤職員が配置されない
・産育休、病休等の代替講師が配置されない など
細かく見ていくとキリがありませんが、大まかに言えばこんな感じです。
小中学校には「義務教育国庫負担金」といって、いわゆる人件費の3分の1を国が、残り3分の2を都道府県が負担おり、高等学校等は地方自治体(都道府県)が負担しています。とはいえ、地方財政ではそのすべてをまかなうことができませんので、普通交付税や特別交付税によって、国から配分されています。とはいえ、交付税が交付されていないのは東京都だけですので、他の道府県では、教職員定数を規定した法律などに基づいて配分される地方交付税の中から、人件費をまかなう必要があるわけです。
教職員定数については「これって何のコーナー」にありますのでご覧いただきたいのですが、各都道府県は法律に則って基礎定数と加配定数を国に申請します。高等学校の場合は、収容定員数が基本になり、地方交付税はここで算定された定数分が交付されることになります。したがいまして、それ以上の教員を必要とする場合は、道府県予算から捻出しなければなりません。
※非常勤講師は、通常の教職員定数とは別個に管理されているとされています(後述)。
ここでは高等学校について取り上げます。
・少子化によって生徒数が減少⇒収容定員数が減少⇒教職員定数が減少
これ自体に異論は無いと思います。問題はこの教職員定数減が前年度ぎりぎりに現場に知らされることです。通常、次年度の収容定員数が決まるのはおおよそ7月から8月頃です。そして、次年度の教育課程(次年度入学生が3年間で受ける授業、次年度2、3年生のカリキュラム)が、年末にかけて決められます。この時期にようやく次年度教職員定数が減るかどうかがわかり、年が明けて3月にどの教科が減るのかがわかります。
つまり、そのときにはすでに次年度やる授業などは決まっていますので、もし、その教科の非常勤講師が入らなければ、残った人数でやるしかありません。もしくは、3月末日に教育課程を変更し、時間割も変えるといったことも起こり得ます。
これは社会動態としての少子化が関連していますし、国に申請する加配定数がどの程度認められるかわかりません。また、募集定員が減ってもクラス数、授業数も減るとは限りません。都道府県は非常勤講師の配置をするよう努力しているとは思います。
※下図のような形です。非常に簡単な図ですので、必ずしもこのような状況だけとはいえません。ですが、こうなると次年度、予定していた授業はやる必要がありますので、非常勤講師が入らない場合、結果的に足りない状況になります。しかし、いくつかの情報では、教育課程(どの教科・科目の授業をどのくらい実施するかの基本)を変更したケースがあったようです。
前述の教職員定数減少は、少子化と募集定員数減が関係してきますので、法律を改正しない限り変わりません。仮に都道府県で独自に定数を増やそうとすれば、県の予算内で行う必要があります。当然、都道府県には多くの施策がありますから、これを勝ちとる必要があるわけですが、それも困難な自治体がほとんどでしょう。
結果、教職員定数の将来的な減少を見越すと、おいそれと正規職員の割合を増やせない(余剰が発生する)、というのが行政の考え方になります。
ここからも、臨時講師や非常勤講師がある意味では重用されていることがわかるのではないでしょうか。そして非常に大きな問題なのは、その臨時講師や非常勤講師の登録者が減少していることです。
③と④のような例を挙げましたが、根本的には、今現在、講師が潤沢に存在する時代ではない、ということです。行政側は「10年後には生徒数も減って、必要な教職員数も減ってくるだろうから、今採用を増やさずにこのままにしておけば、採用試験の倍率も高くなり、講師登録者も潤沢になってくるだろう」と思っているのかもしれません。
とはいえ、その間に学校教育全体に影響があるようでは困ります。全教が行った記者会見の場で「具体的に生徒の学習(または学校生活)にどのような影響が出ているのか」という質問があったそうです。生徒が問題なく学校生活を送れているのなら問題ない、のではなく、「問題にならないように教員が頑張っている」ということを理解していただきたいところです。