山陽新報 昭和十年十一月十六日(土曜日)
首位と第二位
入選祝賀式
鹿久居島は提灯行列
一宮では標識額の献納式
首位をもつて十勝地に入選した鹿久居島の入選記念披露祝賀會を和氣郡日生町長、同町商工會長の主唱で十六日午後二時から開催、先づ一同島めぐりをなし、引續き午後六時から各種團體參加の上祝賀提灯行列を行ふ、また第二位で入選した吉備津彦神社では世話人總代の主催で十六日午後三時から同社前で入選記念標識額献納式を執行する
山陽新報 昭和十年十一月十七日(日曜日)
十勝十五景に
三景勝地
率ゐて入選
郷土愛の結晶を誇る
それぞれ記念施設計画
郷土愛の熱と力が結晶して輝かな成果を収めた岡山縣下十勝十五景投票成績の發表に依り和氣郡から選び出された鹿久居、天王山、和意谷の三景勝地が仲よく手をつらねて入選の榮冠を戴いた事は餘りにも郷土の人達に感謝せずには措かれない誇りである、而も鹿久居は十勝の王座を占めた得票一千五十餘万票、天王山は第三位を獲得して五百五十餘万票、和意谷は十五景第五位で三百二十餘万票を掴んで何れも悠々ゴールに入つた美事と
鹿久居は縣下の東南端明朗な瀬戸内海に浮ぶ鹿棲む島である、この島を繞ぐる七里のコースには史蹟と傳説が海波の間に間に織り出され宛然一幅の絹繪を繰り展げた美觀を呈してゐる、日生町ではこれを楔機として島の觀光美に努め岡南鐵道敷設と共に一段と實現に拍車をかけることになり島に躍る群鹿が訪づれる人々にデビユーするのも眞近いことである、全町を擧げて祝賀氣分は滿ち溢れ十六日午後から島の觀光巡り夕刻から提灯行列をなし町は全く祝賀一色で塗りつぶされた、第三位の天王山は省線和氣驛から五町、頂上から俯瞰する佳景、北方には銀糸の如く尾を引く金剛川が藤野平野を縫ひ芳嵐園も一眸に入る奇岩怪石を點綴する松相は天を摩し素盞鳴神社の神域、大グラウンドの設備、櫻樹も數千本の植樹が行はれ春も更に秋は亦一入の秀麗さを添へる、山麓には和氣公の御塚所、和氣寺趾、入田には藥師如來安置の堂宇傳説に富む靈泉等がある、天然の明媚と史蹟は探ぐる人々の興味を惹かずに措かぬ、保勝會では既に具體案の遂行に着手してゐる
和意谷は吉永驛から北へ二里餘、山峽を縫ふ溪流の囁き、秋の紅葉は恰かも金■を展げた如くハイクに相應しい景勝の地、舊備前■主池田家累代の墓域もある、起伏する連峰、幽邃閑雅和意谷ならでは觀られない魅惑がある
山陽新報 昭和十年十一月十八日(月曜日)
鹿久居島入選に
湧く歡び
地元日生町で提灯行列
本社員も加はりて島めぐり
本社主催十勝十五景新選投票成績發表の結果一千五十万二千五百七十票の得票で十勝の最高位を獲得し十勝の王座に据つた鹿久居島では取敢ず十六日地元和氣郡日生町で入選祝賀を開くことゝなり、本社から岡本事業部長、澁江庶務主任、松浦寫眞班の一行、岡山市役所勤務宮川氏の東道で訪問、橋本町長、須知助役、森谷町議らと共に直ちに島巡りをなし一行には佐倉消防組頭、那須郵便局長、淵崎、田中、星尾、田中、守時、小林氏等始め多數の人々は數艘に分乘、船中那須氏の懇切な説明あり、島の周圍を繞ぐれば二四キロ二一七米、コースを南に採つて現示灣から帆立鼻、小濱大濱、千軒首切、御前濱、鷹の巣を迂回して九艘泊、眞尾内、米子を過ぎ福浦、寒河を右顧し乍ら薄暮日生港に歸つたが島には百餘頭の鹿の群と猪、豆狸が著しく棲息してゐる、植物にはウリハダ、カヘデ、ハマゴー、ハマナツメ等の珍らしいものがあり大多府、頭島、鶴島、遙かに望む家島を距てゝ讚徳海峡の明媚な風光は正に一幅の絹繪そのまゝである、岡山邊りから日歸りのハイクの適地であらう、終つて堀旅館で懇談會を開き和氣々裡にも鹿久居勝景の紹介と施設完成への希望とが溢れ、更に夕刻日生小學校庭に參集した青年團、消防組員、兒童、町民等の群衆は隊伍を整へて校門から繰り出し提灯行列を行ひ灣頭春日地先から西端を繞る灯の海上に映えて美觀を呈し祝賀氣分を高潮した
山陽新報 昭和十年十一月十九日(火曜日)
十勝入選の鹿久居島
(日生町の提灯行列)
山陽新報 昭和十一年二月十五日(土曜日)
鹿久居島十勝
入選スタンプ
在岡日生會では曩に本社の十勝投票で首位に入選した鹿久居島の爲め同會幹事宮川寅之介氏の考案に依る記念スタンプを町役場に寄贈し同町紹介の繪葉書その他に押捺して廣く宣傳することゝなつた(寫眞は同スタンプ)
山陽新報 昭和十一年五月十三日(水曜日)
鹿久居島の明粧
鹿の繁殖保護に努む
岡山營林署長がつぶさに調査
力こぶを入れる保勝會
瀬戸内海に浮かぶ繪の島鹿久居は岡山縣和気郡日生町の持つ名勝地、昨秋本社主催岡山縣十勝十五景投票に斷然十勝第一位を占めてあまねく天下にその名を紹介されたが、同町を中心とする鹿久居島保勝會では更に一段と努力を拂ひ諸般の施設經營の完璧を期し、同島に棲息する群鹿の繁殖保護を圖つて島の明粧化に努め、觀光客を誘致しようと屡當局に陳情請願中のところ船木岡山營林署長は■須■らと共に十日同町に出張、同島の樹木、鹿の繁殖状態などに就き詳細な實査を進め十一日は須知助役、保勝會森谷氏らの説明並に齋藤卯二郎等より鹿久居島の由來、傳説に至るまで熱心に聽取したが船木署長らはこゝ數日間滯在して調査を完了する豫定である、鹿久居島の拂下げと群鹿の保護繁殖、島の明粧は岡南鐵道が實現すれば必ずなさねばならぬ施設として一般から期待されてゐる
山陽新報 昭和十一年五月二十五日(月曜日)
遊園地化
先づ鹿の棲息保護
その他遊覽施設を整備
昨秋本社選奬の縣下新選十勝十五景に見事第一位を贏ち得た日生、福河兩町村に屬する鹿久居島は保勝會中心となり内海の風致に惠まれた島嶼の遊園地化と鹿の棲息状態を調査するため大阪營林局瀧田周三、丸川政彰、岡山營林署舟木署長、嘉■同森林主事を聘し五月十日から二週間に亘り實地 基本調査を行うた結果鹿久居島の樹木の被害程度から想像すると鹿は二百五十頭乃至三百頭近く棲息してゐるので雜木の間伐、鹿の飼料に適應した常緑樹植付等鹿の繁殖保護を圖り海水浴場の設置やキヤンプ生活に相應しい施設を行ひ島の明粧化に努めることに決定、之が實現促進を圖るため町商工會と提携し準備を進めてゐる