山陽新報 昭和十年十一月十七日(日曜日)
十勝十五景に
三景勝地
率ゐて入選
郷土愛の結晶を誇る
それぞれ記念施設計画
郷土愛の熱と力が結晶して輝かな成果を収めた岡山縣下十勝十五景投票成績の發表に依り和氣郡から選び出された鹿久居、天王山、和意谷の三景勝地が仲よく手をつらねて入選の榮冠を戴いた事は餘りにも郷土の人達に感謝せずには措かれない誇りである、而も鹿久居は十勝の王座を占めた得票一千五十餘万票、天王山は第三位を獲得して五百五十餘万票、和意谷は十五景第五位で三百二十餘万票を掴んで何れも悠々ゴールに入つた美事と
鹿久居は縣下の東南端明朗な瀬戸内海に浮ぶ鹿棲む島である、この島を繞ぐる七里のコースには史蹟と傳説が海波の間に間に織り出され宛然一幅の絹繪を繰り展げた美觀を呈してゐる、日生町ではこれを楔機として島の觀光美に努め岡南鐵道敷設と共に一段と實現に拍車をかけることになり島に躍る群鹿が訪づれる人々にデビユーするのも眞近いことである、全町を擧げて祝賀氣分は滿ち溢れ十六日午後から島の觀光巡り夕刻から提灯行列をなし町は全く祝賀一色で塗りつぶされた、第三位の天王山は省線和氣驛から五町、頂上から俯瞰する佳景、北方には銀糸の如く尾を引く金剛川が藤野平野を縫ひ芳嵐園も一眸に入る奇岩怪石を點綴する松相は天を摩し素盞鳴神社の神域、大グラウンドの設備、櫻樹も數千本の植樹が行はれ春も更に秋は亦一入の秀麗さを添へる、山麓には和氣公の御塚所、和氣寺趾、入田には藥師如來安置の堂宇傳説に富む靈泉等がある、天然の明媚と史蹟は探ぐる人々の興味を惹かずに措かぬ、保勝會では既に具體案の遂行に着手してゐる
和意谷は吉永驛から北へ二里餘、山峽を縫ふ溪流の囁き、秋の紅葉は恰かも金■を展げた如くハイクに相應しい景勝の地、舊備前■主池田家累代の墓域もある、起伏する連峰、幽邃閑雅和意谷ならでは觀られない魅惑がある
山陽新報 昭和十年十一月十七日(日曜日)
入選の喜び
十勝三位の天王山和氣驛前松美屋事務所前
山陽新報 昭和十年十一月二十二日(金曜日)
十勝地當選の天王山に施設
和氣公の事蹟も顯揚
本莊村では曩に天王山麓村役場西手衣笠地内より和氣清麿公に由緒ある石標を發掘し更に隣接地より和氣寺趾を發見し愈和氣公に關係深き確證が明瞭となつたので村民一致の勞力奉仕により神域に御塚所を建立祭式を行ひ國民精神の作興と郷土偉人の偉蹟顯揚に努つてゐるが
今回本社主催縣下十勝十五景新選投票には天王山が第三位で十勝に入選一躍眺望に富む秀峰は天下に紹介さるゝに至つたが之に伴ひ諸般の施設を完備し觀客の吸引に努めることゝなり村會の席上で兒島村長より將來計畫の具體案と財源等に就き所信を開陳して諒解を求め村議間では村費負擔と篤志寄附に依り御塚所の神殿建立、天王山頂に通ずる自動車道路の新設、山腹の公園としての施設完璧に邁進する事に意見を一致を見たので各部委員が夫れ夫れ實現に拍車をかける事に決定した
尚過般吉備考古會の水原氏、藤井六高教授等が來村して曩に發掘した古瓦土器古墳等實査の結果何れも千五百年以上を經てゐる事が判明し同氏等は更に附近の地勢等考證に依り今後突進んで研究踏査を行ふ事になつてゐるのでその結果は一般からも非常に期待されてゐる
山陽新報 昭和十年十一月二十六日(火曜日)
十勝の第三位
天王山の祝賀會
あす午後一時旗行列
秀峰山頂で披露の盛宴
本社主催岡山縣十勝十五景二十秀地新選投票に第三位で十勝に入選した天王山では二十六日午後一時より保勝會主催のもとに關係者一同を招待し祝賀會を催す事に決定した、当日は本莊村小學校生徒の本社旗行列に初まり天王山頂で神主の報告祭を行ひ引續き保勝會員の案内で秀峰天王山を視察し午後四時頃から祝賀會場で盛大な入賞披露宴を開催する
山陽新報 昭和十年十一月二十八日(木曜日)
十勝地天王山
入選奉告祝賀式
山頂素盞鳴神社々前で執行
本社傳書鳩放鳩實演
本社主催岡山縣十勝十五景新選投票の結果十勝第三位を獲得入選した和氣郡本莊村天王山保勝會では二十六日午後一時から入選奉告祭並に祝賀會を同山頂素盞鳴神社で執行
本社より高原營業局長、澁江庶務主任、秋久營業、松浦寫眞兩部員ら參列、先づ和氣公御塚所に參拜、本莊校生徒兒童其他多數參拜本社旗を打ち振り乍ら旗行列をなして天王山に登山、本社員並に關係者は神前に跪座して新庄神官の奉告祭式あり、兒島村長、高原營業局長、澁江主任、竹田組合長、小原校長以下順次玉串を献じ高原局長より兒島村長に標識額目録を傳達し午後二時閉式
引續き天王山グラウンドで松浦社員より生徒兒童に對し傳書鳩に就て一場の講演をなし三時十分六羽を本社に向け放鳩、夫れより高原局長から新選投票に關する挨拶があり、更に同四時より和氣駅杉金旅館で祝賀會を開き兒島村長の挨拶、高原局長の祝辭があつて盛宴を張った
當日村内は入選の歡喜と新興本莊を飾る十勝天王山を中心とした名所舊蹟の顯揚に對する郷土愛の熱と力の希望に輝き非常の賑ひを呈した(寫眞は素盞鳴神社の奉告祭)
山陽新報 昭和十一年三月三十一日(火曜日)
天王山明粧
着々進捗す
本莊村天王山保勝會では昨秋本社主催縣下十勝十五景選奬投票に於て十勝第三位に當選以來名實共に更に一段の名聲を顯揚するため着々計畫の具現に努め、和氣公御塚所の淨地擴張植樹、本殿建立等も近く實現を見ることゝなり、天王山頂に通ずる自動車道路の敷設、全山を明粧公園化する大計畫も進捗し擧村一致の待望達成の日も近き將來の事であらうと見られてゐる
山陽新報 昭和十一年四月二十一日(火曜日)
御塚春季大祭
二十一日擧行
本莊村では和氣公の遺徳を顯揚のため衣笠地内に建碑淨地を擴張青年團員の奉仕で淨域に植樹し神殿建立の計畫も進み更に景勝天王山を中心とする施設の完成に向つて拍車をかけてゐるが
和氣公御塚所の春季大祭は二十日から二十一日にかけて盛大に擧行、餘興には本莊商工會等が發起で煙火の打揚げ、櫻踊り、變装行列、寶探し等がある