山陽新報 昭和十年十一月九日(土曜日)
各觀光地の
撮影競技會
全面的宣傳を目標に
倉敷地方觀光協會の新計畫
倉敷地方觀光協會内にある酒津水門、福山城址、寶貴山(安養寺)、柳井原遊水池、連島寶島寺、本莊村通仙園(兒島)などは本社の新選名勝投票に大活躍をなし、觀光時代の活溌な動きを反映したが、同觀光協會では更に明春の觀光シーズンに備へて全面的に區域内の宣傳紹介に力瘤を入れるべく近々評議員會を開くことになつた、打合事項は多方面に上つてゐるが、その中で注目されるものは撮影競技會で、右は本社倉敷支局が今夏主催した備南風景と産業寫眞競技會に、交通、季節等の都合で撮影洩れとなつた箇所を主として舞臺に入れ、懸賞つきで競技を行はうとするもので詳細は評議員會で確定する筈である
山陽新報 昭和十年十二月二十一日(土曜日)
倉敷地方觀光協會から
新四勝地へ奬勵金
福山城址、酒津、寶島寺、安養寺
“廿秀”の二ケ所推薦
倉敷地方觀光協會では本社が曩に催した岡山縣新選名勝地投票が觀光地宣傳のために最も有意義なものとし、協會加入區域から晴れの十勝地に二ケ所、十五景に二ケ所當選し、他に二十秀地また淺口郡柳井原遊水池、兒島郡本莊村の通仙園の二ケ所が推薦され、豫期以上の成果を収めた、そこで最初發表した奬勵規定に基き左記四名勝地に奬勵金を贈ることに決定したのでそれぞれ受領方を通知した
十勝地 福山城址(山手村) 酒津水門(中洲村)
十五景地 矢上山寶島寺(連島町) 寶貴山安養寺(菅生村)
山陽新報 昭和十一年一月十一日(土曜日)
酒津の櫻に貝殻虫發生
本社の縣下十勝に當選した倉敷市外酒津水門の千本櫻は昭和九年春(梅毛虫)が發生し村農會坪田技手東西用水組合酒津水門保勝會が全力をあげて此が驅除豫防に努めた爲め大した被害もなく撲滅したが更に兩三年前より千本櫻全體に貝殻虫が發生し櫻の生育を阻止するので今回高梁川東西用水組合中洲村農會酒津水門保勝會が共同で千本櫻全部に亘り藥劑を撒布して貝殻虫の撲滅につとめる計畫を樹て目下準備を進めてゐるが本年も既に發芽の時季も近い内で關係者は大狼狽してゐる
山陽新報 昭和十一年一月二十一日(火曜日)
酒津の季節驛
さらに猛運動
伯備線岡山高梁間にガソリンカーを運轉することになり廣鐵局では過般來岡山高梁間を毎日一回試運轉中で來る二月中には同區間に正式運轉を實施するので中洲村では昭和九年四月八日初めて開業した倉敷驛北方二粁半の地點にある酒津假乘降場を季節的停車場に引直し方を陳情を爲すべく目下地元中洲村及び酒津水門保勝會では陳情書草案中であるが既に今後二ケ月半もすれば酒津水門の觀櫻期に入るので夫れ迄には實現せしむべく猛運動を起すことになつた
山陽新報 昭和十一年三月二十日(金曜日)
酒津の千本櫻
貝殻虫大驅除
名物倉敷市外酒津水門の千本櫻に貝殻虫が発生し生育を妨げるので中洲村農會、高梁川東西用水組合、酒津水門保勝會共同で十八日午前十時から一齊に藥劑を撒布し大驅除を行うた
山陽新報 昭和十一年三月二十五日(水曜日)
岡山縣十勝地酒津の櫻
ぼつと紅を染む
遊園地の一帶に餘興設備を
“花の三日”から開舘
本社選奬の岡山縣十勝地―倉敷市外酒津の千本堤は昨今の陽氣で櫻林一帶ぼツと紅を染めて見えだした、今年も地元と鐵道兩方面で大宣傳を行ひ遠近からの觀櫻客をうんと惹きつける計畫であるが、遊園地一帶に餘興設備の無かつたのを淋しがられてゐたところ今春は倉敷地方の有力者が謀つて近代科學に立脚した電氣仕掛けの不思議館を開設することに決し配水池に近い廢川地の廣場を借受け目下準備中で、四月三日から開館する豫定である
館内には體の無い美人が隱現して笑つたり歌つたりする無體人間だとか、魚族と同棲する水中美人だとか、魔の柱、美人の化石など電氣の世界が描く獵奇滿點の種目を揃へ、別に演藝場を設けて會期中小唄、舞踊などで賑はせる、有料ではあるが
酒津の繁榮策として恰好な企てとし地元でも歡迎してゐる
山陽新報 昭和十一年四月三日(金曜日)
酒津假乘降場
發車時間
本社主催縣下十勝に當選した倉敷市外酒津水門の櫻は季節も差迫り廣島鐵道局では例年の通り倉敷驛北方ニキロ半の地點都窪郡中洲村酒津假乘降場を一日から三十日まで一ヶ月間開設するが來る七日までの同乘降場の發車時刻は左の通りである
上り午前 八時十分三十秒、九時二十六分三十秒、十時二十三分十五秒、十一時三十九分三十秒△同午後 一時八分四十五秒、二時三十六分三十秒、三時二十二分十五秒、四時二十五分三十秒、五時四十九分四十五秒、七時二十九分二十五秒
下り午前 七時二十分、八時四十五分三十秒、十時九分三十秒、十一時二十六分三十秒△同午後 零時二十七分三十秒、一時三十四分三十秒、二時五十七分三十秒、四時十二分三十秒、五時十分三十秒、六時五十分三十秒
山陽新報 昭和十一年四月六日(月曜日)
酒津賑ふ
五日の日曜日は陽氣な花日和縣下十勝、倉敷市外酒津の千本堤はまだ花は蕾のまゝだが、夥しい人出で終日賑つた、本年は花見時の掛茶屋も櫻林を避けた片隅の東西用水組合地内に五軒だけ許可し、その他は配水池よりずつと手前の民有地に數軒と、倉敷自動車のバス食堂が開店してゐるのみで、配水池をめぐる一帶の櫻林は何の目障りもなく麗朗で自由な風致を保つことになつたゝめ、今春こそ酒津千本の花盛りが眞の姿で見られるわけだ
省線の酒津假驛は一日から開業、伯備線列車を着けてゐるが、一方民營の倉敷驛酒津間バスも三日から十分間ごとに發車し五臺の大型車で運轉してゐる
山陽新報 昭和十一年四月十一日(土曜日)
春雨に誘はれて
“さくら”微笑む
滿開は十九日ごろ?
縣下各地の花信しきり
さくら、さくら、春のホープ櫻はまだ咲かないか……今年は彼岸を過ぎてから寒波の不意打ちがあつたりして、そのため櫻花の微笑むのは例年より遅れてゐたが暖かい春雨に誘はれて急にスピードがかけられたのであらう薄紅の蕾が嬉しくも割れはじめて『おーい、さくらが咲いたぞ!さくらが……』と人々はいよいよたけなはな春を想ひ起してゐる、さて滿開はいつごろか、岡山縣下のさくら名所にきいてみよう
酒津
水郷酒津、高梁川長堤の千本櫻はきのうけふ枝頭かすかに紅を點じ、優艷な風情を見せかけてゐるが、十二三日ごろには咲き初めるらしく、來る十九日の第三日曜日ごろが滿開となる見込みである
なほ伯備線酒津假乘降場は本月一日から開設され、保勝會の諸施設も既に整うてひたすら開花を待ち設けてゐる
山陽新報 昭和十一年四月十七日(金曜日)
岡山縣十勝地
酒津堤の
千本櫻
日曜日は八分咲き
倉敷市外酒津堤の千本櫻が五分方咲いた、今年は目障りの茶店も櫻林の中には許さず、ずつと片寄せて店を出させたゝめ配水池をめぐる一帶は廣々と開放されて氣持ちがいゝ、呼びものゝ不思議館も十三日から開館してゐる、十六日は一万を超える人出があつたが、この日曜は櫻も八分咲きとならうし、すばらしい花見客が繰込むであらう
山陽新報 昭和十一年四月二十一日(火曜日)
酒津水門の櫻
兩三日が眞盛り
きのふ臨時列車合計十八本
晝夜かけて人出十萬
關西第一を誇る倉敷市外酒津水門の千本櫻はこゝ兩三日が眞盛りである、昨日の日曜日には酒津假驛に詰めかけた觀櫻臨時列車合計十八本で酒津驛と倉敷驛の乗降客を合せて三万一千名、茶屋町線省線バスは平素四十回運轉のものを三倍にして百十六回運轉としこの乘客三千百七十一名、酒津線バスが百二十回運轉して三千名の客を送り込み、その他ハイヤーの殺到物凄い計りであつた上に徒歩の客が夥しく晝夜をかけて裕に十万の觀櫻客を呑吐した、月曜日もまた朝から素晴しい人がくり込んでゐる