主催・山陽新報社
山水の勝を誇るわが岡山縣は、到る處景勝に満ちてゐる。それ等の景勝地は從來各種の方法によって推薦又は指定されてはゐるが、猶他に幾多の顕揚を要すべき新景勝地の存在するものがあり、この機會に於て普くこれを推薦指定して、愈その地歩を確固たらしめ、縣内景勝地群の結成、即ち適確なる観光ルートを作成することは最も必要なこととされる。よつて本社は次の如き諸要項により普く大衆に呼びかけ、岡山縣下十勝十五景の新選投票を實施してゐる。縣内景勝地顕揚の爲め大方諸賢の協力を得、同事業の成功裡に成就されんことを要望してやまない。
規定
一.岡山縣内景勝地中より、十勝、十五景計二十五勝地を一般投票により推薦を決定す、但し後樂園を除き、また單に内海國立公園といふが如きものは採らず
ニ.投票數多きものより順次十勝を選抜し、次でその殘部より更に順次十五景を選抜す
三.投票用紙は本紙(夕刊三面)刷込みのものを用い、又は右と同型用紙若くは官製葉書を使用するも可、但し新選地名、推薦者住所、氏名は必ず自書のこと
四.投票用紙には新選地一ヶ所を記し、一枚に二ヶ所以上の連記を許さず(ペン又は毛筆に限る)
五.同一投票多數を一括して送付する場合、最初の一枚にのみ記入して、他の記載を省略したるものは無効とする
六.投票は十一月三日中に到着のものを以て締切る、宛名は山陽新報社内「岡山縣内十勝十五景新選投票係」とす
七.入選十勝地には本社より推薦状並びに金属製記念額を贈呈す、入選十五景地には推薦状を贈呈す
投票注意
投票は本用紙又は之と同型同意匠のものを用ひること。
記入はペン又は毛筆を用ひ鉛筆書きは無効とす。
後樂園を除き、又單に内海國立公園と云ふが如きは採らず。
※この投票用紙はオリジナルを模したものです。
※新選地の投票数が約1ヶ月間毎日紙面で発表されています。
山陽新報 昭和十年十一月一日(金曜日)
十勝地鑄銅標識デザイン
本社から十勝地へ贈呈すべく鑄銅標識板デザイン(板面文字は桂南大原専次郎氏の揮毫)
※『岡山縣十勝地 昭和十年十一月 山陽新報社選』と記載されたデザイン画が掲載されています。
山陽新報 昭和十年十一月四日(月曜日)
凄壯の氣渦卷く
最後の投票搬入陣
縣下十勝十五景新選投票締切
いよいよ最後の日は來た!日一日熱狂の度を加へて、つひに凄壯の氣を帶び來つた本社主催縣下十勝十五景新選投票は異常の興味を繋いで昨夜十二時をもつて終つたのである
去る 十月一日本紙上第一回の發表よりこゝに三旬を超ゆる郷土顯揚のためのこの戰ひ?思へばその一票々々に籠る尊き郷土愛のまごころ!汗と血とに築き上げるこのすばらしい金字塔、十勝十五景に筆太にその名を印するは何れの地ぞ!三日は明治節に日曜それに誓文拂を織込んで朝來から人の波打つ岡山市内を、これはまたトラツクにサイドカーに或は自轉車で
本社 に續く車のひしめきどつかと降される投票は十万、二十万、百万、二百万と豪勢な數字で呼ばれてゆく、午前十一時先づトラツクで先登を切つたのは後月道祖溪の百五十万と稱する大量票午後になれば福山城址が『新選十勝候補』の旗さし物も物々しく自轉車數十台を連らねての投票搬入、これは正に二百二十万と號される、次いで
市外 牧石村教員生徒約廿名によつて金山の百七十五万餘票が持ち込まれる、王子ヶ嶽の百十五万餘票、津山から一氣に十五景を覘ふ黒澤山の二百三十万票、更に吉備津彦神社の三百万票と次ぎ次ぎに票の數を加へてトラツクが本社に犇めく、和意谷の百三十三万、天磐窟溪の九十餘万、横井小原の九十万、連島寶島寺の百五十万、天王山の三百七万、万成山の七十万、高尾烏帽子岩の六十七万と
大量 投票は夜に入つていよいよ本社内を投票の山に埋め盡さうとする勢ひ、形勢は文字通り混沌、鹿久居島の六百五十万票が持出されたとの情報も傳はり正十二時の締切時刻を控へて凄殺の氣滿ち今はたゞ恐ろしき投票の大氾濫を描き出してゆく――
山陽新報 昭和十年十一月十四日(水曜日)
一兩日中に發表
大量票の整理終はる
榮冠を戴く勝地は果して何處?
未曾有の白熱的大競争のうちに去る三日をもつて受附を締切つた本社主催の岡山縣十勝十五景二十秀新選投票は最終日の三日夜半十二時までに投ぜられた大量票實に數千万票に達し、文字通り本社内に山積の有樣であつたが、本社は整理計算係員の總動員を行ひ、大馬力をもつて取敢ず二日迄に受附のものの整理を完了し、曩に最後の中間得票數を發表したが、引續き全力を傾注して連日深更に至るまで整理計算に從事した結果、昨日に至り漸く大體大口投票の整理を完了するに至り、引續き小口投票への計算並に無効票の審査に着手することゝした、依つて一兩日中には最後の決定總票數發表の運びに立ち至るべく、果して光榮の十勝、十五景が何處々々の頭上に輝くか、興味はこれを■つて深甚なるものがある、なほ多數大量投票中には本社の投票規定に違背し、投票全部又はその一部を活版印刷としたるもの、謄寫版に附したるもの、複寫紙によりたるもの、新選地並に投票者の記入とゴム印を以て代用せるもの、全部鉛筆書きのもの、字體不明瞭なもの及び白票を混入しあるもの等相當大量に上り、是等は一々精細に本社整理委員に於て除外の上計數を行うてゐるから、こゝに各投票者の投票發送數と、實物調査による有効實数との間に相當大量の相違を來すものがあつたことは本社として頗る遺憾とする所で、この點については豫め投票者の諒承を得たい次第である
山陽新報 昭和十年十一月十五日(金曜日)
岡山縣十勝・十五景新選投票
愈よ明日朝刊に發表
有効の投票總数
實に一億二千萬
重ねると富士山の四倍
つなげばニユーヨークまで
これまで行はれた投票形式のうちで恐らくこれ程の大量數字を集積したものはその例があるまいとまでいはれる本社の岡山縣下十勝十五景新選投票が昨日午後をもつて一切の整理を完了し、愈よ明十六日附本紙朝刋で發表することとなつたが、去る九月末この壮擧發表以來約一ケ月間の總投票數實に一億二千二百二十四萬三千百四十九票(但し有効投票のみ)の大量に上り、その實態たるや正に壯絶の限りともいふべきである、一口に一億二千二百二十四萬餘票とはいつても、さてそれが果してどれ位の容積を有するか、本社はこゝに岡山市深柢小學校に依囑して興味ある計算を得ることゝなつた、それによると、今回の新選投票用紙は百枚重ねにすると厚さが一・三センチあるから、全體を重ねると二万五千八百九十メートルとなり、富士山の高さ(三千七百七十八メートル)の四倍強となり、またこれを縱に長く繋ぐと用紙は一枚の長さが十二センチあるから、全體で約一万五千キロメートルとなり、これは我が千島から臺灣まで(約五千キロメートル)の約三倍となり、また東京から直線コースを取るとすれば遙かに太平洋を越え米大陸を横斷し、遠くニユーヨークに達する長さである、次にこの一億二千万餘票を一人で書くとすれば、一枚書くのに三十秒を要するとして二枚で一分、全體で六千萬分、これを時間にして百萬時、年數で百十四年を要するので、天保元年から晝夜兼行で書き續けてゐても今後なほ八ヶ年(昭和十八年まで)を費さなければ完了しないことになる、なんと驚くに絶えたる事ではないか、この超大量票も皆樣方の郷土愛の熱情が迸り迸つて僅々一ヶ月の間に成し遂げさせたのだといふに至つては人間の熱と力の集積といふものゝ大きなことに今更ながら感歎せずにはゐられないではないか
縱に重ねた一萬票
七歳のお嬢ちやんとたけくらべ
山陽新報 昭和十年十一月十六日(土曜日)
輝かしき十勝十五景
新たに二十秀を加へて
きのふ本社で最後の決定
未曾有の熱狂裡に終了した本社主催岡山縣下十勝十五景新選投票の總決算が全縣下期待のうちに十五日午後一時半から本社會議室で、湯淺岡山東署長代理立會の下に出来上つた、總投票數一億二千萬票、大量一千萬票を突破した十勝トップの鹿久居島以下選ばれた十勝各地は何れもその得票のうちに郷土愛の輝きを誇り、十五景はトップの道祖溪以下最後の五分間まで華々しい肉薄戰を物語つてゐる、本社はこれ等の熱烈なる郷土愛の發露に酬いるため、十勝十五景の外に新に『二十秀』を設定し、百七十三万七千票の横井小原以下五十三万七千票の明禪寺城址までを加へ、これを推薦することゝした、なほ十勝地に贈呈すべき金属製標識額は既にデザインを決定し目下製作中であるが、今回更に十五景に對しても略同様の標識額を贈呈することゝなり、是亦引續き制作する筈である、これが贈呈式は本月下旬又は来月上旬となる豫定で、この前後を通じて十勝十五景地をめぐつて本社の各種顯揚事業は行はるべく、その各種目に亘る計畫は近く發表の運びに至る筈である
十勝十五景投票最後の決定(本社にて)
山陽新報 昭和十年十一月二十二日(金曜日)
十勝十五景
▼縣下各地の風光明媚な景勝を天下に紹介すべく、山陽新報社が主催で十勝十五景の投票が募集された。開票の結果は二三の番狂はせが無いでもないやうであるが、大體に於て吾人が豫想した通りであつた。
▼日本三景や日本三公園は何時の代に何人が如何なる手段方法に依つて決定されたものかは知らぬが、天然の三景も、人工の三園も共に天下の絶景、天下の名園である。今回選定されたる十勝十五景も何れ劣らぬ景勝である。此の光榮ある景勝を縣下並に他府縣人に紹介する事は各所在地の名誉であり、誇である。
▼山陽新報社は適當の時機に於て、是等の勝地を巡覽すべく希望者を募集して、團隊にて、觀覽なし得る樣になし、入選の光榮を永遠に保存されたいものだ。(■生)
山陽新報 昭和十年十一月二十三日(土曜日)
新選された岡山縣下の十勝・十五景・二十秀地
新選地へ推薦状
記念額の授與式
十二月八日岡山市で
觀光ブロツク結成座談會
岡山縣下の新選十勝、十五景、二十秀地は本社が曩に未曾有の大衆投票によりて決定したが、右各新選地に對する記念額並びに推薦状授與式は來る十二月八日午前十時より岡山商工會議所に擧行し、引續き各景勝地代表者の會堂を請ひ觀光施設、觀光ブロツク結成等に關する座談會を開く豫定で、この機會に於ける上記各景勝地を合從連衡する觀光ブロツクの結成は觀光網整備の上に頗る期待さるゝものがある、なほこれに先ち本社は一兩日中各勝地紹介のため寫眞を滿載したる記念號を發行して普く天下に勝地の大觀を紹介するが、同時に引續き左記の如き勝地顯揚計畫を実施することゝする
訪問自動車早廻り競爭
明春三・四月頃東西に分れて
明春三四月の交をもつて擧行、東西兩班に分ち、各本社記者を配乘せしめ、豫め決定した十勝、十五景、二十秀地を連ぬるコースを順次訪問して各サインを受け、逸早く歸着したるものをもつて勝利とす、なほ所要時間の一般豫想投票をもなさしめ、適中者には賞品を贈呈する【詳細追つて發表】
勝地撮影寫眞競技大會
十勝十五景二十秀地を題材とする風景寫眞撮影競技大會を擧行し、審査の上入賞者には賞品を贈呈する、なほ入選作品は岡山、津山、倉敷三市をはじめ主要各勝地等に於て展覧會を開き普く展觀に供する【詳細追つて發表】
本社記者を特派
近く入選各景勝地へ
なほ来月下旬より入選各景勝地にそれぞれ本社記者を特派し、詳密なる紹介記事並に寫眞を蒐集して本紙上に連續掲載する外、明春は新選十勝十五景地顯揚シーズンとして、大々的に各種事業の實施に邁進する計畫である
山陽新報 昭和十年十一月二十四日(日曜日)
新選勝地を讚ふ
岡山縣十勝十五景当選記念
十商十五店
※見開きの2ページにわたり、各新選地の写真と広告が掲載されています。
山陽新報 昭和十年十一月二十九日(金曜日)
榮譽に輝く十勝・十五景
岡山縣の観光勝地
衆望負うて登場
一億二千餘萬の大衆投票で
各景勝地の素描
最近の觀光界に一大センセーションを捲き起した、本社主催の岡山縣下十勝十五景新選投票は曩に未曾有の熱狂裡に終了し、衆望を負うて十勝、十五景、二十秀の決定を見た、榮譽に輝いて入選した各新選地は何れも觀光勝地としてそれぞれ特色を有するものばかりで、今更ながら大衆投票の人を欺かざるものあるを見るのである、本社はこれら各景勝地の顯彰方法として、本年末より明春に懸けて、既報社告の如く各種意義ある事業を主催することゝなつたが、取敢へずこゝに各景勝地の簡明なる紹介特輯號を編輯して、各景勝地の面目と眞價とを江湖に問ふことゝする、なほ更に詳細なる名勝地個々に訪問記は本年末それぞれ本社記者を特派して材料の蒐集をなし、明春■初より華々しく連續掲載することとする
山陽新報 昭和十年十ニ月八日(日曜日)
入選勝景選奬式
けふ、岡山商工會議所に
名勝地代表者が參集
曩に本社が主催した岡山縣下十勝十五景新選投票における入選十勝、十五景、二十秀に對する選奬式は今八日午前九時から岡山商工會議所會議室で多久岡山縣知事(代理並川學務部長)以下多數來賓の臨席を得、名勝地より代表者の來場をもとめて擧行、榮ある本社特選金屬製記念額並に選奬状を贈呈し、晝食後引續き各景勝地を網羅する觀光ブロツク結成その他に屬する懇談會を開く筈であるが、興味ある投票苦心談等が噴出して大いに賑ふことであらう
寫眞は=十勝、十五景へ贈呈すべき記念額
山陽新報 昭和十年十ニ月九日(月曜日)
入選の各景勝地へ
選奬額と選奬状
岡山縣十勝・十五景・二十秀
きのふ嚴に選奬式
未曾有の大衆投票によつて選奬決定された岡山縣下十勝、十五景、二十秀地選奬式は
冬晴れ の八日午前九時半から岡山商工會議所大會議室に開會、來賓として
知事代理並川學務部長、岡山市長代理安藤産業課長、岡山商工會議所會頭代理黒田同副會頭、小西岡山市土木課長、則武岡山驛首席助役、大野縣商工水産課主事補(觀光■仕)
式は本社岡本事業部長の開會の辭に始まり、岡本社長の式辭、高見常務取締役の經過報告あり、引續き十勝、十五景、二十秀にそれぞれ本社長より
選奬額 並に選奬状を授與し、次で來賓祝辭に移り
知事(代理並川學務部長)岡山市長(代理安藤産業課長)岡山商工會議所會頭(代理黒田同副會頭)
よりそれぞれ入選各景勝地を讚頌すると同時に將來の觀光設備完備を希望し、また
内田鐵道大臣、田國際觀光局長、藤野香川縣知事、富家高松市長、平松倉敷市長、中島津山市長
から寄せられた祝電を披露し、これに對し十勝首席鹿久居島代表槇本日生町長被選奬者を代表して鄭重なる謝辭を述べて十一時閉式、引續き食堂を開き一同歡談裡に喫飯、午後零時二十分より景勝地顯揚座談會に移り、杉山本社編集局長座長席に着き挨拶を述べ、當日講演の爲め來岡中の須藤神戸高商教授も特に臨席、歐米各國に於ける
觀光客 誘致状況に關する有益なる講演をなす所あり、引續き縣、市、鐵道、商工會議所各代表、並に十勝、十五景、二十秀各代表者約四十人よりそれぞれ各景勝地の風致特徴史實等を語り、各地將來の觀光施設計畫等に就ても胸襟を開いて話合ひ、各地の觀光的希望に對しては縣及び鐵道側より懇切なる答辯等もあつて大盛況裡に午後四時半散會した