小テスト4 アンケートの結果

投稿日: 2019/12/18 17:58:23

Web 解答式の小テスト4の最後でアンケートを実施した.受験者16名全員から回答が得られた.2018年度の自由記述式の回答はすべて小テストに関するものだった.今回は文字数の目安をしめし,例示する回答を変えた.その結果,より多様な視点からの意見が拾えた.かなり好意的だった2018年度に比べて,やや批判的な回答が増えたかもしれない.一方で,(他に書くことないだけかもしれんが) ゲーム理論が興味深いとわざわざ回答してくれる人は意外と多かった.授業中はなかなか時間を取れないが,この科目では対話を重視したいので,みなさんの回答にもいろいろコメントした (長くなりすぎてすまない; 双方向授業が推奨されているからいいか (笑); 冬休みにでもどうぞ).議論を続けたい学生はオフィスアワーズに来るといい.

個別の質問に入る前に,全受講に伝えておきたいアドバイスを述べる:

    • 履修科目の選択は合理的に.個々の学生が「どういう科目を受講したいか」は個人の選好 (利得) に関する情報であり,講師にはわからない.つまり不完備情報である.講師は学生一般の選好の傾向と自分の選好 (どういう科目を教えたいか) を考慮しつつ科目の内容を決める.いったん決めて提示した科目の内容を変えることはあまりない.講師にできることは科目の情報をできるだけ提供し,あとは学生に受講するかどうかを判断してもらうことだ.だから今後,選択できる科目を受講するかどうかを決めるときは,その科目の情報を十分吟味した方がいい.あらかじめシラバスを読み.扱っているテキストに目を通し,場合によっては履修取り消し期日までの授業に参加した上でないと決められないこともあるだろう.不確実性が伴うので後悔のない科目選びはゼロにはできないが,できるだけ少なくすることはできるはずだ.書籍を買うとき,中身や評判をまったく見ないで買うことはあまりないはずだ.

      • この科目は予想外に面白いと思った人も面白くないと思った人もいたようだが,もう少し情報集めた方がよかったんじゃないかと思うケースが多かった.この科目ではテキストを含むすべての教材もシラバスも学期冒頭に示しているし,試験も補助教材の類題であると告げている.できるだけ不確実性を小さくしているつもりだ.

    • 勉強法について.「これまでにやった数学とは種類がだいぶん違い結構頭を悩ませることが多い」とか「「何をどう学べば求められている能力を得られるのか」がわからない」といった勉強法にかかわる感想があった.

      • 大学で抽象数学をやり始めた途端に,それまで数学が得意だった学生が数学苦手になるのはよくあることだ. たとえば関数の極限とか連続性 [8分弱の動画] といった,単なる定義さえ理解できない人は少なくない (書けないどころか読めなかったりする; 動画に付いたコメントからも,大学の授業では分からなかったという感想が多い).簡単には克服できない問題であり,数学科の学生であればいくつかの授業を取る中で自分なりの勉強法を見つけていくことになる.よってやり方は人それぞれだろうが,できるだけ授業時に理解すること (授業中起きておくこと; 分からない部分はその場で質問すること; 文字というものは数学的アイディアをなかなか伝えられないからライブを重視しよう),時間をかけて復習して理解を完璧にすること (数学書はある程度分かった時点で読まないと時間がかかりすぎる) あたりは重要だと思う.

    • この科目についてはとりあえず重要な演習を解けるようにしておくことでポイントはつかめるように構成してある.テスト直前は「この問題ならこの答え」というふうにすぐ知識を取り出せる状態にしておく,つまり「覚える」作業もやるといい.あくまで上記の「理解する」という段階を経た上でやるべし.シラバスの「授業および学習の方法」も参照のこと.

  • やさしい読み物.「私のような者でも理解できるような日本語で書かれ、かつ専門的な計算式などを省いた(文系に優しい)文献など」を教えてもらいたいというコメントもあった.

    • この科目で点数を稼ぐためには必読文献と演習をやるのが効果的だろう.必読文献が難しすぎるなら,伊藤秀史『ひたすら読むエコノミクス』(図も数式もほとんどない),天谷研一『図解で学ぶゲーム理論入門』(概念の解説はいいが,均衡を求める計算の解説が不十分) あたりで科目のイメージを掴んでおくといい (ただしこの科目の点数には直結しない).(読み始めたら2週間以内で終えるのを推奨する.こういう本は時間が空くと読み終えた部分とのつながりがわからなくなるから.) 好みにより鎌田雄一郎『ゲーム理論入門の入門』も検討に値するだろう.将来政治学をやりたいなら浅古泰史『ゲーム理論で考える政治学』も眺めてみるといい (ゲーム理論でどのような政治現象が分析できるかが分かる).武藤滋夫『ゲーム理論入門』はやや単調で (数式はかなり抑えられているけど) 理系的かもしれんが,点数獲得にはより直接的に役に立つだろう.

アンケート質問1.問題解説1および2では小テストの対策授業をしました.その内容のほとんどは動画でも見れます.以下からあなたの考えに近いものを選んでください.[以下16名の回答を多い順に列挙]

  • それらの問題解説は授業でやった方がいい.動画はなかなか見る時間を取れないから.9名

  • どちらでもいい.5名

  • それらの問題解説は授業でやらない方がいい.必要ならば動画を見ればいいから.1名

  • 分からない.1名

質問1へのコメント.動画があっても授業で問題解説をやった方がいいという意見が半数を超えた.

アンケート質問2.この科目に関して意見や感想を述べてください.文字数は 40-800字を目安に.内容が充実していれば救済点につながる可能性があります.一方,不足で書き直しを求められたばあい,修正しなければ1点減点されることがあります.

受験するたびに同じ回答を繰り返す必要はない.それまでの回答に何か追加したいときだけ書けば十分.例を挙げる.◆経済学に対する印象が受講前と変わったとか,経済理論やゲーム理論のファンになれそう/なれなさそうとか,授業でこういう点を改善した方がいいとか,こういう学生はこの科目を受講してはならないといったこと.◆これまでの小テストは勉強になったかどうかとか,小テストの回数や1回あたりの量を増やせ/もう十分とか,Web テストの仕様が良くないとか,小テストで全問クリアしないと5点獲得し損ねるのはゲーム感覚があって楽しいとか.(ちなみに小テストの仕様については,Moodle の「小テスト 1, 2, 3」に説明がある.) ◆回答は (個人情報を除いた上で) 連絡ページに掲載するつもりである.同意できない場合はそう書いてください.

質問2の回答と三原からのコメントを載せておく.似た内容のものはできるかぎりまとめ,その後にコメントを書いた:

  • 経済学は単純な数字や数式で解明できるものだと考えていましたが、ゲーム理論を通じて数字や数式を伴うが、その中に多様な別の要素を含む「戦略」というものを学べるので、経済学部の自分からしたら興味が尽きない科目だと実感しております。

  • ゲーム理論は最初数学らしいものではないと思っていたが受けていくと数学らしさが出てきて数学が苦手な私は少し苦労した。小テストで全問正解するまで繰り返すことが大変ではあったが、理解するのにとても役に立った。

  • ゲーム理論は響きがなんだかおもしろそうという理由だけで履修登録したため、なかなか痛い目を見た。だが、丁寧に考えて問題の解答が導けるようになるのは素直に楽しいと思える。小テストは面倒だと感じることもあるが、小テストがあるおかげで授業の復習になり、わからない問題が浮き彫りになるので良いと思う。

  • 最初は数式などが出てくる高校の時のような数学の授業かと思っていたが、実際にはあまり数式は出てこず実践的な話がほとんどなので面白いと思った。ゲーム理論は現実の意思決定をする際に状況を整理するための一手段となりそうだと感じた。

    • 三原.肯定的な評価をありがとう.「戦略」という言葉の使い方がややあやしいぞとか「数学」の科目として出してるのだけど,とは思った.

    • 三原.数式としては目立たなくても,ゲームを解くという数学的操作は求めている.

  • 最近、経済学全体に対して興味関心がなくなってきていたのだが、ゲーム理論のさわりを学ぶことを通してゲーム理論が学びごたえのある分野だと面白く感じてきた。自主学習も積極的にこなしていきたい。

  • この科目に関しては興味本位で履修したため、ある程度苦戦することは理解していた。数学は特に得意というわけではなかったが、経済学部に所属しているため、ゲーム理論という科目に惹かれた。今のところ絶望的にわからないというところはない。小テストの回数制限に関しては、かなり時間と集中力を必要とするので、最終的に全問正解というのは流石に厳しいと感じる。

  • ゲーム理論がこういうものだとは知らず受講前と随分印象が変わった。難しいと思うことが多く、経済学とかは得意ではないなと感じた。

  • 面白そうだと思ってとった寡黙だけど正直難しくてすぐに理解することは難しいが、この授業が終わるまでにはしっかりと理解した状態でいたい。

    • 三原.経済学部にいるのに経済学に対して興味関心がなくなると辛いかも.でも経済学部には経営学もあるし,経済学にも理論以外の科目は多いからあまり心配は要らない.ただし理論家としては,「理論抜きで経済学を学べるなんて思わない方がいい」と言っておきたい.

    • 三原.この科目は数学として出してるし,理論をとことんやる科目にしている.「全問正解」と言うと厳しい感じがするが,演習の類題ばかりだし,5回もチャンスがあるし (それ越えても僅かしか減点されない),受験者の大半がクリアーしている実績から見ても妥当じゃないかな.

  • 自分は経済学部でそこで経済数学を現在学んでいるため、少し通づるところがあると思いこの授業を受けています。まだ、あまりそれを実感はできてないけど、これから学年が上がりもっと経済について詳しく学ぶようになっていったら実感できのでしょうか。でも、今は単純にゲーム理論は楽しいのでそれで構わないと思っています。ただ、少し難しいです。

  • これまでにやった数学とは種類がだいぶん違い結構頭を悩ませることが多い。正直に言えばあまり数学的面白さを感じることは少ない。しかしなれたらできそうかなとも思うが、なかなか慣れることも難しい。

      • 三原.経済理論でよく出る数学はいろいろ.経済数学では微分積分と線形代数を扱うことが多い.他にも解析学,確率論,集合や位相などがよく出てくる.この科目では戦略形ゲームの定式化のところで (集合の基礎というか,数学科でやる) 抽象数学の入り口みたいなことはやる.たいした数学は使っていないが,数学科の学生にとっての常識レベルの論理的思考は重視している.

      • 三原.数学的おもしろさを期待するような学生が来てくれたこと自体は歓迎.何を数学的おもしろさと感じるだろうか.知っている数学を使うことか,知らなかった数学を使うことか,図形的思考か,抽象数学か,論理的思考か,証明か? ゲーム理論自体には数学的におもしろい内容は少なくないけど,残念ながらこの科目では,証明など数学科の学生くらいしかおもしろいと思わないようなトピックは極力省いている.連続性やコンパクト性などトポロジーの概念も知らない学生に前提知識を伝えるのは大変すぎるから.やりたかったら文献教えるけど.

      • 三原.講師には個々の学生の好みまでは分からないが,学生は教材に目を通すことでどのような数学が扱われているかくらいは分かるはずだ.もし科目選択を誤ったのなら,今後は気をつけるといいでしょう.上記「履修科目の選択は合理的に」参照.

        • 三原.ちなみに僕の専門の「社会選択理論」では,より限定された数学的知識だけで数学的おもしろさを楽しめるような話題は多い.アローの定理の一発証明とか,大学一年生でも読めるなじゃないか.

      • 三原.難問を解くのがおもしろいということなら,この科目はそうはなっていない.難問を解くのも数学のおもしろさだろうが,標準的な問題を解けるようになるだけでいろんなことができるようになるのも別のおもしろさだ.

  • まず、小テストの問題量については適切であると思う。内容については、一回の講義で学んだことを十分に用いることのできる内容であると思う。最後に、面白い問題や少しひねった問題をボーナス問題として与えられると、より面白くなると思う。

  • ゲーム理論は具体的な例の解説を見るのは楽しいが抽象的になると理解しにくいのが難しい。小テストは回数が多いと思うが、受ければ5点とれて受けなければ5点損ねるというのは小テストをサボりにくいようになっていると思う。

  • 数学が苦手な私にとっては、問題数が多く、解くのにもとても時間がかかってしまうので、小テストの問題数をもう少し減らしてほしいと思う。

  • 正直、授業を聞いてても?となる部分もある(自分の努力不足だが)それを小テストで確認かつ理解してない部分を補っていくわけだが、自分は理系科目が得意ではないので、いつも問題数多いなと思いながら解いている。もう少し減らしてほしいです。

      • 三原.問題量に関する意見を集めてみた.小テストの問題量を減らすとすれば,(i) 小テストの回数を増やす (そのばあい関連する問題が同一回に収まらなくなって関連がわかりにくくなる) か,(ii) 期末試験問題のうち小テストでカバーできる割合を減らすことになる.そのへんのバランスを考えて今の量にしている.テストの冒頭にしめしてある制限時間 (標準回答時間) は24分などとなっていて, 30分は超えないようにしてある.制限時間内に済ませられるくらいの準備をしてからテストを受けて欲しいところだが,初回受験時の点数から判断する限りそうなってはいないのはちょっと残念.

    • 三原.何も勉強しなくてもできる問題やいくら努力しても手がかりさえ掴めないような問題ばかりを出しているなら,受験した時間は無駄かもしれない.実際はそのような問題は少ない.(たとえば支配やナッシュ均衡の定義をすらすら書けるようになっただろうか? 小テスト2, 3 の問題の多くは,元々書ける人には無駄だったかもしれないが,そうでない人の方が多いはずだ.) テスト準備と受験を通じて,始めはできなかった問題の理解が進んだのなら,時間はそれほど無駄になってないと思うぞ.意味ある勉強をしてくれているなら,少なくとも講師サイドから見れば成功である.

      • 三原.医学科生から「もう少しひねった問題を出してくれ」という要望は受けたことはある.演習問題を理解してしまえば容易に解ける問題ばかり出しているから,確かにボーナス問題を出すのもいいかも.ただ,一発で合格する人が少ないことから,現状でも十分歯ごたえあるとは言える.

      • 三原.配点が少ないわりに「小テストをサボりにくいようになっている」というのはその通りで,そのようにデザインしてある.ゲーム理論的思考の実践でもある.お買い物やゲームのポイントなんかも,交換できるまでにはある程度貯めないといけないでしょう?

  • パソコンの問題なのか、小テストを受ける際の名前記入欄にアルファベットしか記入できず、ローマ字表記にしてしまいました。すみません。シラバス、連絡ページ、moodle登録など、最初にやることが多く、少しわかりにくいと感じたので、どこかにまずやらないといけないことを箇条書きにしてもらえるともっと理解しやすいと思った。

      • 三原.わかりにくくてすまない.ただ,現状でもこの Web サイトの扉ページから公開教材もシラバスも取れるし,扉ページの冒頭から1クリックで連絡ページにも Moodle コースページにも行けるようにしてある.

  • 私の怠惰が原因であり、その上でこのようなコメントをさせていただくことは大変恐縮なのではございますが、本テスト(特に第四回)を受けて感じたことを述べさせて頂きたく思います。私は小テストをギリギリになって受講することが多く、そのため最後の授業から結構なブランクが生じてしまいます。なのでテスト内容を殆ど忘れてしまっており、その度に教材を遡ってみることが多いです。

    • 三原.小テストは早くから掲載しているので,早く受けたければ受けられる.いずれにせよ受験前に教材を遡るのは悪いことではないし,素早く答えられるようになるためには必要なステップである.

  • [続き] しかし今回のような概念的なワードが飛び交う単元ではそれも難しく、「何をどう学べば求められている能力を得られるのか」がわからない状況が続いております。教材を読んでもまだ慣れていない文体についていけず、完全に行き詰ってしまっております。

    • 三原.小テスト結果からは行き詰まっているようには見えない.合格点とれてるし.その上で,この記事の最初に書いた「勉強法について」を参照するといい.

  • [続き] なので、私としましては、私のような者でも理解できるような日本語で書かれ、かつ専門的な計算式などを省いた(文系に優しい)文献などをお教えいただければとても有難く存じ上げます。

      • 三原.えらく謙遜しますね.この記事最初の「やさしい読み物」を参照.

  • [続き] また、各テスト問題について、参考となる教材の該当箇所を適宜ご指南していただければ非常に助かります。

      • 三原.そこまでやる必要は本当はないと思うが,参照すべき演習問題は小テストの問題番号のところにしめしてあるぞ.

  • [続き] 何卒ご一考の程、よろしくお願い申し上げます。