2010/5/18 Class 5

投稿日: 2010/05/17 6:43:02

■やったこと

昨年に比べてちょうど一回分遅れている.

    • アナウンスメント: 試験返却,メールなど.

    • Ch は見ていないメールがある様子.それ以外は2度のメールは受け取った.

    • 中間試験答案は,成績が確定するまでは持っておくべき.

    • 1時限目に授業があるのは Ch, Sa, Se の三人.

    • 渡辺3章92-101頁.1035-1110.

      • 100-101頁の総余剰最大化基準については下に説明あり.

  • 渡辺3章102-119頁.1110-1200.

      • セカンドプライスオークションで参加者は自分の評価額をそのまま入札するのが弱支配戦略になっていることの別説明は,「渡辺 (2004) への訂正・コメントなど」(watanabe04comm.pdf) にもある.

    • やや遅かった.昨年度は 92-119頁に63分かけた.

  • [補講.展開形ゲームの戦略.1200-1210]

      • 全員参加.まだ分かっていない感じ.Moodle に載せた中間試験 2 (makeup exam) の「予告」も参照.

  • [オフィスアワー.Se は1230 まで Sa は 1240 までいて,Se はヤマアラシのジレンマを自分で納得,Sa は質問.]

■アナウンスメント・感想など

特になし.

■授業の内容にかんすること

    • 「渡辺 (2004) への訂正・コメントなど」(watanabe04comm.pdf) の将来版で以下の修正をした.

-100頁.3人がいて売り主が土地を持っている現状から出発すると考えるといい.取引としては以下の3種類を考えることが出来る:

(i) 売り主に土地が留まるばあい.このばあい各人の余剰はゼロで,総余剰もゼロ.

(ii) 土地が W に行くばあい.このばあい総余剰は200万円になる.たとえば土地に 1600万円の価格がついたばあい,売り主の余剰は 100万円,Wの余剰も100万円,Aの余剰は 0 万円.

(iii) 土地が A に行くばあい.このばあい総余剰は500万円になる.たとえば土地に 1800万円の価格がついたばあい,売り主の余剰は 300万円,Wの余剰は 0万円,Aの余剰は200万円.

経済学ではしばしば総余剰を最大化する取引がもっとも望ましいとされる.この基準によれば,(価格は総余剰とは無関係であることから) 土地が Aに行く (iii) の取引がもっとも望ましいことになる.では,すべてのひとにとって (iii) の取引がベストかといえば,そうではない.じっさい W は (ii) の取引の方で高い余剰を得る.したがって (iii) がベストとされる根拠はやや弱くなるが,ひとつだけ言えることがある.それは,(iii) における総余剰が (ii) のそれよりも大きいということは,余剰の再分配を通じてすべてのひとの余剰を (ii) のときよりは大きくできるということだ.じっさい (iii) で得られる家主と A の余剰の150万円ずつを W に再分配すれば,全員の余剰を (ii) のときより増やせる.全員にとってこの再分配後の状態 (iii)' の方が (ii) より望ましいため,そして (iii)' は土地が A に行く (iii) においてのみ可能な再分配であるため,経済学では (iii) を選ぶ余剰最大化基準を通常は採用するのである.梶井・松井 (2000) の 8.2.1節,特に155頁も参照.

[追記] 以上の議論その他の板書を再現したノート babygames_notes.pdf を Moodle に置いた.

    • 「政府が [もと公企業や土地など] を競売するとき,いちばん評価額が高い者が競り落としても,セカンドプライスオークションのように低い値段がついてしまえば国民として獲得できる収入が低くなって良くないのではないか」と Sa が質問.回答は以下の通り:

      • セカンドプライスオークションだからといって最終的な値段が特に低くなるわけではない.ファーストプライスオークションだと,そもそも入札する額が低くなるだろう.より一般的には収入同値定理というのがあって,一定条件下ではどのオークションも期待収入がおなじことが知られている.

      • 値段が低くなってオークションによる政府収入が低くなっても,競り落としたひとの余剰はその分大きくなる.競り落としたひとも国民であれば,国民全体の総余剰を最大化することには矛盾しない.

    • オークションだけでなく競争的市場も総余剰は最大化できる.いずれの配分方法も採用されないとき,総余剰の最大化 (効率性) は通常犠牲にされている.たとえば政府がある電波周波数域を既得権益をもつ放送局に優先的に配分することは,余剰の一部を失っている.破綻した遊園地の所有者が,その売却先としてその地を (牧場や養鶏場や工場などではなく) 遊園地として再建する予定の企業だけに絞るなら,余剰の一部を失っている可能性が高い.ただ,後者のばあい自由な取引であることから (もとの所有者自身が夢の継続と引き換えに低い値段を受け入れている),特に反対する者はいないかもしれない.

■次回までの課題

    • 前回までの「次回までの課題」を終わらせよう.

    • 渡辺4章を読みはじめる.

    • 補助教材演習2.9, 2.10 について考え始める.学期末に説明する予定.

  • 武藤 71-93頁を読む.

      • 展開形ゲームの理論にかんしては,奥野4.4-4.5.3節が論理展開が明快で武藤71-93頁の代替になりうる.武藤の説明がくどいと感じるひとは奥野を読むといい.ただし例が簡単すぎるかもしれない.

■次回の予定

武藤の本を持参のこと.予定より遅れているため,特に反対がなければ1220ころまで時間を延長して以下をカバーする.

    • 渡辺4章 121-127 頁.25分

    • 武藤 71-93頁.55分

    • (渡辺4章 128-133頁.25分)